夏の暑さが嘘のように涼しくなり、夜に虫の声が聞こえると、秋を感じますよね。
秋の夜長に窓を少し開けて、家族みんなで虫の声に耳を澄ましてみてはいかがでしょうか?
この記事では、虫が鳴く理由や仕組み・鳴く虫の種類についてまとめました。
日本人と虫の声の関係についても紹介しているので、ぜひチェックしてみてくださいね!
※虫の写真がありますので、苦手な方はご注意ください!
夏の暑さが嘘のように涼しくなり、夜に虫の声が聞こえると、秋を感じますよね。
秋の夜長に窓を少し開けて、家族みんなで虫の声に耳を澄ましてみてはいかがでしょうか?
この記事では、虫が鳴く理由や仕組み・鳴く虫の種類についてまとめました。
日本人と虫の声の関係についても紹介しているので、ぜひチェックしてみてくださいね!
※虫の写真がありますので、苦手な方はご注意ください!
「虫の声」とはいいますが、実際に虫が口から声を発しているわけではありません。
虫がどのように鳴いているのか・なぜ鳴くのかについてご紹介します。
※この先もあえて「声」と表現しています。
スズムシやコオロギの仲間などは、前羽(まえばね)をこすり合わせて声を出しています。
例えばコオロギの羽は、片方にヤスリ状のギザギザが、もう片方の羽にツメのような出っ張りがあるのが特徴です。
これらをこすり合わせると、リーンというおなじみの声が響きます。
なおコオロギが鳴くときは腹部と前羽の間に空間ができ、スピーカーの役割を果たすのだそう。
鳴き声は最大限に増幅されて、遠くまで響きます。
参考:京都市青少年科学センター | Kyoto Municipal Science Center For Youth
実際に鳴いている様子は↓でご確認ください。
コオロギやキリギリスの仲間の場合、鳴くのはオスに限定されます。
その理由は、主に以下の3つです。
虫にも縄張りというものがあって、オスは自分の縄張りに他のオスが入ってくるのを嫌います。
縄張り内で他のオスと鉢合わせした場合、大音量で攻撃的な声を出して縄張りを主張します。
また虫が優しく鳴いているときは、メスにアプローチしているのかもしれません。
オスはメスに求愛するときも、羽をこすり合わせて声を出します。
虫が声でコミュニケーションを取っているということは、声を聞くための「耳」もあるということ。
しかし虫の顔を見ても、耳がどこにあるのか分かりませんよね。
虫の耳は、私たちがイメージする耳とは全く異なり、さらに虫の種類によって耳のある場所も異なります。
顔の横とは限らないのです。
例えばコオロギやキリギリスの場合は、前足の関節部分(人間でいうと肘や膝のようなところ)にある穴が耳の役割を果たしているそうです。
穴の中には鼓膜もあって、仲間が発する音をきちんと聞いているんですよ!
秋に鳴く虫は、「コオロギの仲間」「キリギリスの仲間」に大別できます。
ここからは、秋に鳴く虫と鳴き声についてご紹介します。
■体長:約25~30mm
■鳴き声:コロコロ・リリリ
私たちが「コオロギ」と聞いてイメージする黒くて大きいコオロギは、バッタ目コオロギ科のエンマコオロギです。
体長は約25~30mmあり、日本全国どこででも見られます。
鳴き声は、「コロコロ」「リリリ」などと表現されることが多いようです。
■体長:約15~25mm
■鳴き声:リーンリーン
スズムシは、バッタ目コオロギ科に属するコオロギの仲間です。
鳴き声が聞こえるのは、8月中旬頃から10月上旬頃まで。
10月に入ると、ほとんどのスズムシは鳴くのを止めてしまうようです。
スズムシの声は、その名のとおり鈴の音のような澄んだ響きをしています。
「鳴く虫の王様」と呼ばれるほど人気が高く、好んで飼育する人も少なくありません。
■体長:約20~30mm
■鳴き声:チリリリ
マツムシも、バッタ目コオロギ科に属するコオロギの仲間。
体の色は、枯れ葉や枯れ草の色に似た、淡い茶褐色です。
本州、四国、九州の、乾燥した日当たりのよい場所などに生息しています。
童謡での鳴き声は「チンチロリン」ですが、実際はもう少し鋭く「チリリッ」「ピリリッ」といった感じの鳴き声です。
■体長:約25~40mm
■鳴き声:ギッチョン・ギー
キリギリスは、バッタ目キリギリス科に属する昆虫です。
コオロギと同様にさまざまな種類があり、一般には、西日本に生息する「ニシキリギリス」と東日本に生息する「ヒガシキリギリス」が「キリギリス」として認知されています。
鳴き声は風流というにはほど遠く、「ギー」という感じ。
どちらかというとうるさいと感じる人が多いかもしれません。
成虫の活動時期は6~9月頃までです。
■体長:約50~70mm
■鳴き声:ガチャガチャ
クツワムシは、バッタ目キリギリス科に属する昆虫です。
キリギリスよりも大きく、茶褐色の個体と緑色の個体がいます。
キリギリスが肉食であるのに対し、クツワムシは草食。
クズの葉などを好んで食べます。
本州、四国、九州に生息しており、背の高い草の間などに潜んでいることが多いようです。
9月から10月頃に、「ガチャガチャ」という感じの大きな声で鳴きます。
「虫の声を楽しむ」という風習は非常に珍しく、日本と中国以外の国ではあまり見られません。
日本人と虫の声の関係について見ていきましょう。
俳句では、「虫」といえば秋の季語です。
古来虫の声は、日本人にとって秋の訪れを実感する大切な要素でした。
虫に関する歌は、7世紀から8世紀頃にかけて編さんされた万葉集にも見られます。
また平安時代の貴族たちの間では、秋の野外で鳴く虫を取ってきて鳴き声などを競わせる「虫撰(むしえらび)」という遊びが流行していたそうです。
かの源氏物語の中にも、光源氏がスズムシの音色を楽しむ描写が見られます。
秋の虫の鳴き声は、自然を好む日本人の感性にマッチしていたのかもしれません。
鳴く虫の声を楽しむ習慣が庶民に広まったのは、江戸時代に入ってからといわれています。
人々は秋に夕暮れになると郊外に出て、スズムシやマツムシの鳴き声を楽しみました。
「虫聴きの名所」と呼ばれるところが複数あり、現在の開成中学・高校がある付近は特に有名だったようです。
また晩夏から秋にかけては、江戸市中に「虫売り」が現れて鳴く虫を売り歩いたといわれています。
虫ブームによって虫かごもたくさん作られ、大名家では蒔絵(まきえ)を施した豪華なものが使われました。
日本における虫売りの風習は戦後まで続きましたが、高度経済成長期に入って以降衰退したといわれています。
スズムシは「リーンリーン」、コオロギは「コロコロ」……、このように虫の声を聞くのは、世界中でもほぼ日本人だけだといわれています。
虫の声と日本語の関係についてご紹介します。
日本人が虫の声を聞くときは、言語などを司る「左脳」を使っているそうです。
これに対し西欧の人々は、音楽や機械音・雑音を処理する「右脳」で虫の声を処理しています。
日本人が風流だと感じる虫の声も、西欧の人々にとっては「雑音」に過ぎません。
この事実を解明したのは、東京医科歯科大学名誉教授・角田忠信博士でした。
角田教授によると、虫の声を左脳で聞くのは、世界でも日本人とポリネシア人だけなのだとか。
中国や韓国も西洋系といわれており、虫を声ととらえる人種は世界的にも珍しいといわれています。
虫の声が左脳で処理されるのは、「日本語は擬声語、擬音語(オノマトペ)が高度に発達した言語だから」とする説が有力です。
虫の声に限らず、日本人は犬やネコの鳴き声も「ワンワン」「ニャーニャー」などと表現しますよね。
雨は「ザーザー」、風は「ビュウビュウ」など、擬声語、擬音語は数えきれません。
特に子どもの絵本などでは、たくさんのオノマトペがちりばめられる傾向です。
小さな頃からさまざまな音を擬声語、擬音語で学んできた日本人にとっては、虫の声も言語の一部として処理することが自然な流れなのでしょう。