七五三には何を着ればいいの? 意味や由来を知れば納得! 年齢で異なる着物の特徴と選び方

公開日:2023/11/13

七五三には何を着ればいいの? 意味や由来を知れば納得! 年齢で異なる着物の特徴と選び方

子どもの健やかな成長を祝い祈願する七五三は、その名の通り3歳、5歳、7歳で行われます。我が家も今年、5歳と7歳の七五三を予定しており、和装を予定しているのですが、着物にまつわるたくさんのアイテムがあることに驚きました。そこで、七五三がいつから行われていたのか、それぞれの儀式にどのような意味を込めて行われていたのか、また、着物にまつわるアレコレを詳しくまとめてみました。

七五三っていつから始まったの? その意味は?

3歳、5歳、7歳とお祝いする七五三。始まりは平安時代の頃、現代に比べて医療の発達が未熟で衛生面もよくなかったため、子どもの死亡率がとても高く、“7歳までは神のうち(神の子)”として扱われ、7歳になってやっと一人前であると認められていました。節目ごとに祝うことで、健やかな成長を願ったのがはじまりといわれています。

 

それぞれ由来があり、3歳は「髪置きの儀」(髪を伸ばし始める)、5歳は「袴着(はかまぎ)の儀」(男の子が初めて袴をつける)、7歳は「帯解(おびとき)の儀」(女の子が初めて大人と同じ帶を結ぶ)という行事が行われていました。もともとは公家中心の行事でしたが、江戸時代には武家や商人の間で広まり、明治時代には庶民にも浸透して、現代の形になったそうです。

3歳の「髪置きの儀」

平安時代は男女ともに生後7日目に頭髪を剃り、3歳頃までは丸坊主で育てるという風習がありました。これは頭を清潔に保つことで病気の予防になり、のちに健康な髪が生えてくると信じられていたためです。3歳の春を迎える頃に「髪置きの儀」(別名「櫛置き」、「髪立て」)を行い、長寿を祈願するために、白髪を模した白糸や綿白髪を頭上に置いて祝ったとも伝えられています。

5歳の「袴着の儀」

平安時代には5〜7歳の頃に、当時の正装である袴を初めて身に付ける「袴着(はかまぎ)の儀」を執り行いました。この儀式を経て男の子は少年の仲間入りをし、羽織袴を身に付けたとされています。当初は男女ともに行っていた儀式でしたが、江戸時代に男の子のみの儀式に変わりました。

 

儀式はまず天下取りの意味を持つ碁盤の上に立って吉方に向き、縁起がいいとされる左足から袴を履きます。また冠をかぶって四方の神を拝んだとも言われており、四方の敵に勝つという願いが込められています。

 

現代の皇室でも、男児の儀式として数え5歳の時に「着袴(ちゃっこ)の儀」、その後に碁盤の上から飛び降りる「深曽木(ふかそぎ)の儀」が続けられています。この「深曽木の儀」にならい、碁盤の上から飛び降りる「碁盤の儀」を七五三詣の時期に開催している神社も全国各地にあります。

7歳の「帯解の儀」

鎌倉時代、着物を着る際に使っていた付け紐をとり、帯を初めて締める成長の儀式が執り行われていました。これが室町時代に「帯解(おびとき)の儀」として制定され、当初は男女ともに9歳で行われていたとされています。江戸時代になり「帯解の儀」は男児は5歳で「袴着の儀」を、女児は7歳で「帯解の儀」を行う形に変わったそうです。

七五三の着物の名前とそれぞれの特徴

七五三で和装をする場合、年齢ごとに種類の違う着物を着用します。それぞれ上で挙げた儀式が由来になっていて、なじみのない装飾品も数多くあります。ひとつひとつ、詳しく見てみましょう。

七五三の着物 ~ 3歳の女の子の場合

3歳の女の子は「三つ身」と呼ばれるサイズの着物に、被布(ひふ)という上着を羽織ります。お宮参りの際に着た、「一つ身」の祝い着を仕立て直して着ることもできます。3歳の子に大人のような着物を着せて帯を結ぶのは難しく、着物の付け紐や兵児帯(へこおび)を結ぶことから、それを隠すために上から被布を着せたといわれています。

三つ身の着物

三つ身は2歳~4歳の子ども用の着物のことで、並幅の反物(たんもの)の半反(着物1着分の半分)を使って仕立てられています。七五三も7歳になると、大人と同じようなバッグを持ちますが、3歳の女の子は巾着を持ちます。

被布(ひふ)

着物の上に重ねて着る羽織り。ベストのように袖はありませんが、襟がついています。

兵児帯(へこおび)

ちりめん(=生地の表面に凸凹がある織物)などの、柔らかい生地で作られた幅の広い帯。浴衣の際に小さな子どもが巻く帯と言ったらわかりやすいでしょうか。3歳の七五三の場合、被布を上から重ねて着るため、兵児帯はコーディネートの一部というより、あくまで着付け用の帯と考えられています。

七五三の着物 ~ 5歳の男の子の場合

5歳の七五三は、男の子が初めて袴を着ける「袴着」の儀式が由来で、着物に羽織袴、白い扇子と守り刀を身に着けます。刀を持つのは、社会の一員になるということを象徴しています。

着物

男の子が七五三で着用する着物は、晴れの日に着る礼服の一種。これからますます成長することを願って、あらかじめ大きめに作ってあるため、子どものサイズに合わせて肩上げや腰上げを行い、調整してから着用します。お宮参りに着用した「一つ身」の着物を、仕立て直して利用することもできます。

羽織

羽織は着物の上に重ねて着る礼服です。着物と同様に、大きめに作られていて、子どものサイズに合わせて肩上げを施しておきます。元気にたくましく育っていって欲しいという願いを込めた、龍や鷹、兜や軍配などの勇ましい柄や、小槌や熨斗などの縁起のよい柄が描かれているのが特徴です。

羽織紐

羽織の前がはだけないように留める、房のついたひもです。実際にひもを解いたり結んだりして使うことはなく、ひもの先端につけられた金属のフックを、羽織の前身頃の左右に掛けて着脱します。色は白が一般的です。

袴も七五三で男の子が着る礼服のひとつです。昔は無地や縞の袴が主流でしたが、近年はバリエーションが増え、さまざまな柄を織り込んだものやグラデーションカラーのものなどもあります。

 

なお、袴に横向きのシワが入っている場合がありますが、それは袴が正しく丁寧に畳んで保管されていたことを示す折り跡です。アイロンなどない時代は、気にせずそのまま着用されていたものですので、とくに直す必要のないシワだとされています。

角帯(かくおび)

礼装の袴の下に用いる男物の帯で、角帯自体は目立ちませんが、着物や長襦袢を固定する役割があります。

懐剣(かいけん)

もともとは護身用として懐に入れて持ち歩いた短剣でしたが、現在は装飾品として、短剣を模したものを布袋に入れてあります。着付けた袴の帯部分に差し込んで使います。

お守り

魔除けや招福の目的で身に着ける縁起物。七五三の場合は装飾品のひとつとして、袴のひもや懐剣に結びつけて身に着けます。

白扇(はくせん)

字の通り白地の扇のことで、「末広」とも呼ばれ、未来が末広がりに発展するようにとの願いが込められた縁起物。七五三では装飾品として袴を着付けた帯に差すか、手に持って使います。

七五三の着物 ~ 7歳の女の子の場合

7歳の女の子の七五三は、初めて大人と同じ帯を結ぶ「帯解」の儀式が由来で、「四つ身」という子ども用のサイズで仕立てられた着物に、大人と同じ華やかな色や柄の「袋帯」を締めます。仕上げに装飾用の「志古貴」を結び、「筥迫」を胸に差し込み、「末広」を帯と帯締めの間に差します。

 

7歳は「神のうち(神の子)」から人間として現世に完全に誕生する大きな祝いの歳とされていたため、七五三のなかでも重視される儀式で、ハンドバッグや髪飾りなども合わせて、装飾品も多く豪華絢爛です。

四つ身の着物

四つ身とは4歳〜12歳の子ども用の着物のことで、身長の4倍の長さの布を裁断して作ることから、四つ身と呼ばれています。

帯揚げ

着物と帯のつなぎ役を果たす布で、帯の形を整える帯枕のひもを隠すための実用的な役割と、コーディネートにアクセントを添える装飾的な役割の両方があります。帯まわりをより華やかに見せたり、コーディネート全体を調和させたり、着こなしを左右するアイテムのひとつです。

帯締め

結んだ帯の上に締めるひもで、帯がゆるまないよう固定する役割と合わせて、装飾の役割も果たします。帯や帯揚げの色に合わせてコーディネートを楽しむ小物です。

志古貴(しごき)

帯の下側に巻く柔らかい布で、左後ろで結んで端を垂らします。もともとは、長い裾が邪魔にならないよう、たくし上げて固定するためのものでしたが、今は帯まわりを華やかに見せるための装飾として使われます。七五三の女の子と花嫁さんの着付けにだけ使用される小物です。

袋帯

華やかな柄が織られた格調の高い袋帯を締めます。最近は帯結びが簡単にできるようにと、「作り帯(祝い帯)」を利用するのが主流です。

筥迫(はこせこ)

着物の衿元に差し込む装飾品。筥迫(はこせこ)とはもともと外出用の小物入れの事で、身だしなみに必要な懐紙や鏡、紅、お香や櫛などが入れられていましたが、現在は胸元を彩る装飾品として利用されています。

末広(すえひろ)

帯締めに差す縁起物の扇子のこと。扇の形が末広がりのため、子どもの未来も末広がりに発展するようにとの願いを込めて使用します。あくまで装飾品のため、あおぐことに使用するのはマナー違反となります。


まとめ

七五三の始まりは、なんと平安〜鎌倉時代! 現代でも子どもの健やかな成長をお祝いするおめでたい行事として根強く残っているなんて、なんだか素敵ですよね。

晴れ着に付随するひとつひとつの装飾品に込められた意味を知り、日本の長い歴史に思いを馳せながら、子どもたちの輝く未来を願ってお祝いしましょう。

文/Ai Kano

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