パネットーネ、クグロフって知ってる? シュトーレンだけじゃない、ヨーロッパで親しまれているクリスマスの伝統菓子

公開日:2023/12/18

パネットーネ、クグロフって知ってる? シュトーレンだけじゃない、ヨーロッパで親しまれているクリスマスの伝統菓子

クリスマスに食べるスイーツといえば、まず、真っ赤なイチゴがのったショートケーキを思い浮かべる人も多いと思いますが、クリスマスの本場であるヨーロッパではまったく異なります。国や地域ごとにクリスマスに食べる伝統のお菓子があり、それがなければクリスマスが始まらないほどだそう。最近では日本でもクリスマスシーズンになると目にする機会が増える「シュトーレン」もそんなお菓子のひとつですが、そのほかにも文化を感じさせるお菓子がたくさんあります。そこで今回は、ヨーロッパで親しまれているクリスマスの伝統菓子をいくつかご紹介します。

シュトーレンだけじゃない、クリスマスシーズンに味わう伝統的なお菓子って?

クリスマスシーズンにアドベント(Advent)という言葉を耳にしませんか? アドベントとは、簡単に言うとクリスマスまでの準備期間のこと。ラテン語で「到来」、「来臨」を意味する「Adventus(アドベントゥス)」という単語が語源とされていて、キリスト教の中でも西方教会(ローマ・カトリック教会)で、「キリストが生まれた(この世に現れた)クリスマスという日を待ち望む」という意味があります。

 

アドベントには、クリスマスツリーやリースを飾りキャンドルを灯し、クリスマスカードを送り合い、クリスマスの伝統菓子を味わいます。ヨーロッパの各地では日持ちするスイーツを用意して、子どもも大人も楽しみながらクリスマスシーズンを過ごすのです。

ドイツ

シュトーレン

ドイツやオランダでクリスマスに欠かせない伝統菓子といえば、なんといっても「シュトーレン」。生地にドライフルーツやナッツなどが練りこまれていて、クリスマスを迎える準備期間(アドベント)に、薄くスライスして、毎日少しずつ食べるのが現地の習慣です。日本では小さめサイズのバリエーションが豊富ですが、本場ドイツでは500グラムから1キロ程度のビッグサイズが主流! シュトーレンの魅力は、日が経つにつれて熟成が進み、どんどん味わい深くなっていくところ。少しずつ変わっていく味の違いを感じながら、クリスマスを待つというのは、素敵な習慣ですよね。

 

最近は日本でもクリスマスシーズンには、パン屋さんなどで見かけることも多くなりました。お店によってかなり味付けが違い、私もいろいろトライしましたが、ここ数年は浮気せずにロブションのシュトーレン一択。和三盆を使った上品な味を毎年楽しみにしています。

 

そのほかに、北ドイツ発祥のお菓子の家「ヘクセンハウス(ヘキセンハウス)」も有名です。ジンジャーブレッドやクッキーなどで作られたおうちのパーツを組み立てていく過程も楽しめるクリスマスの伝統菓子です。

イタリア

パネットーネ、パンドーロ

ミラノが発祥とも言われている「パネットーネ」や、ヴェローナの伝統菓子「パンドーロ」は、生地の中にラム酒や洋酒に漬け込んだドライフルーツを練りこんで、ドーム型に焼き上げるスイーツ。パネトーネ種という天然酵母を使うことが特徴で、生地はブリオッシュのようなふわっと柔らかい食感です。パンドーロは富の象徴ともされる「黄金色のパン」という意味を持ち、星の形をしたものが多く見られます。表面にはバニラ風味の粉砂糖をたっぷりまぶしてあるのが特徴のひとつです。

 

こちらも、クリスマス当日に食べるものではなく、クリスマスを待っている期間にケーキのようにカットして、ごはんやおやつとして食べるのだそう。シュトーレンと同じように少しずつ熟成が進むので、味の変化も楽しめます。イタリアではクリスマスの約1か月前から親戚や友達に配る習慣もあるようです。ちなみにパネトーネ種は1グラムにつき、1億個以上の乳酸菌が生息しているとされていて、この乳酸菌のおかげで独特の風味と口当たりに。日本の酵母では出せない風味ともいわれていて、生クリームやアイス、果物など、好きなものを添えてアレンジしても美味しくいただけます。

フランス

クグロフ

フランス東部アルザス地方、オーストリアやスイス、ドイツなどで、クリスマスに欠かすことのできない「クグロフ」は、その王冠のような形が特徴。アーモンドや干しぶどうなどを入れて焼き上げた菓子パンで、甘さが控えめで素朴な味わいのため、ハムやチーズを挟んだり生クリームやジャムを添えたりして楽しむ人も多いお菓子です。あのマリー・アントワネットの大好物としても知られ、オーストリアからフランスへお嫁に行くときに持ち込んだのだとか。

ベラベッカ

こちらもフランス東部アルザス地方の伝統菓子で、冬が近づくとパン屋さんに並び始めるクリスマスの風物詩「ベラベッカ」。ベラベッカとは“洋なしのパン”を意味するパン菓子で、洋酒に漬け込んだドライフルーツやナッツ類、香辛料を、発酵させたパン生地に加えて焼き上げたものです。シュトーレンよりもフルーツの比率が高く、ワインなどのお酒との相性も抜群! こちらも少しずつスライスして、その芳醇な果実の香りや旨味を楽しみます。

パン・デピス

フランスのアルザス地方のものがとくに有名な「パン・デピス」も、クリスマスによく食べられる伝統菓子のひとつ。フルーツコンフィやナッツ、香辛料をふんだんに使っていて、スパイスをきかせたパンのようなお菓子です。クッキータイプやケーキタイプ、形やトッピング、食感やフレーバーもお店によってさまざまなのがパン・デピスの特徴です。

イギリス

クリスマスプディング

たくさんのドライフルーツにナッツやパン粉や小麦粉、スパイスにラム酒、卵を混ぜた生地を一晩寝かせて、型に入れて蒸しあげます。その後、冷蔵庫で味をなじませ熟成させて、クリスマス当日に温め直して食べるそう。日本で馴染みのあるプリンとはまったく別物で、真っ黒な見た目の濃厚な味わいが特徴です。イギリスの文化が色濃く伝わっているオーストラリアでも、クリスマスプディングを食べる習慣があるそうです。

 

ちなみにクリスマス当日の5週間前から仕込むのが習わしで、アドべント期間の1週間前の日曜日は「ステア・アップ・サンデー(かき混ぜる日曜日)」と呼ばれ、この日にクリスマス・プディングを作ります。

ミンスパイ

イギリスといえば、ハリー・ポッターの話にも登場する「ミンスパイ」が有名ですね。こちらは12月25日のクリスマス当日から1月6日の「公現祭(Epiphany)」までの12日間の夜に1つずつ食べることで、新年に幸福がやってくるといわれています。レーズンや柑橘類などのドライフルーツにスパイスやブランデー、リキュールなどを加えて煮込み、数日寝かせた“ミンスミート”と呼ばれる餡を入れて焼き上げたパイ。保存技術もない昔はその名の通り、ミンス=ひき肉も入っていたようで、パイ生地やビスケット生地で包んでゆりかごをかたどり、キリストをモチーフにした小さな像を入れて焼き上げていたそうです。

フィンランド

ヨウルトルットゥ、ピパルカック

サンタクロースの故郷とも呼ばれるフィンランドでは、「ヨウルトルットゥ」というクリスマスツリーの星に見立てた可愛らしい形のパイがあります。パイ生地の中にプルーンのジャムを入れるのが伝統的な作り方ですが、家庭によってはアプリコットジャムに変わったりもします。「ピパルカック」というシナモンやグローブをきかせたジンジャークッキーもフィンランドのクリスマスに欠かせないお菓子です。

「クリスマスにショートケーキ」は、日本のオリジナル!?

日本で初めてクリスマスケーキが販売されたのは大正時代のこと。洋菓子メーカー不二家の創業者・藤井林右衛門がアメリカ渡航中に出会った、生クリームといちごをスコーンで挟んだ「ストロベリー・ショートケイク」を、ふわふわのスポンジケーキにアレンジして販売したのがきっかけだそうです。今のように定着したのは一般家庭に冷蔵庫が普及した1950年代頃とされています。

 

なぜ、生クリームにイチゴのショートケーキなのか、というのには諸説ありますが、雪とサンタクロースの衣装や日本古来の紅白のめでたいイメージによって、独自のクリスマスケーキが受け入れられていったようです。マジパンでできたサンタクロースやツリーを添えて、キャンドルで飾った華やかなスタイルのクリスマスケーキは、日本独自の文化なんですね。

まとめ

ヨーロッパの伝統的なクリスマス・スイーツは、アドベントといわれるクリスマスまでの準備期間に食べるものが多く、クリスマスを待ち侘びながら少しずつ味わうことで、ワクワクな気分も盛り上がりますよね。日持ちするので、今年お世話になった人へのプチギフトにもぴったりです。

もともと長期保存できるように、バターやラム酒、砂糖などをたっぷり使って作られているもの。時間の経過とともに、風味が変化していくのも楽しみのうち。普通の菓子パン感覚で食べ過ぎるとかなりハイカロリーなので(笑)、ぜひ薄くスライスして食べることをおすすめします(実証済み)。

文/Ai Kano

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