空気が乾燥しているこの季節は、火事のニュースをよく聞きます。総務省消防庁の『消防白書』によると、2021年に全国で発生した建物火災の件数は1万9549件、月別で見ると、もっとも多いのが1月、次いで12月、2月と、冬から春にかけて多く発生しています。今回は、乾燥する季節に火災が多くなる理由や火災の原因、発火場所ごとの対策などを解説します。
冬から春にかけて火事が起こりやすい理由
冬から春にかけて火災が発生しやすい理由は、大きく2つあります。1つは“空気が乾燥しているから”、もう1つは“暖房機器などの火を使用する機会が増えるから”です。
空気が乾燥すると、建物や家具などに含まれる水分量も少なくなり、引火しやすくなります。とくに風の強い日は、大きな火事につながり被害を広げてしまうおそれがあります。湿度と風速など、気象条件がある一定の基準に達した時点で、各市町村から発表される“火災警報”がありますが、そのほかに、気象庁が発表する“乾燥注意報”というのも、火災の危険に対して注意を促すものです。「お肌のケアをしっかりしなきゃ!」と思うとともに、火の元にも十分な注意が必要ですね。
また、気温の低い日はストーブなどの暖房器具や、あったかい鍋料理などでコンロを使用する場面も増えます。火を扱うことが増えれば火災のリスクも高まります。
主な出火原因は?
総務省消防庁『令和4年度版 消防白書』によると、2021年に発生した建物火災について、出火原因でもっとも多かったのが“たばこ”です。火災件数は3042件で、このうち1921件が不適当な場所への放置とされ、いわゆる“たばこの不始末”が出火原因ですね。2位は“たき火”で2764件、3位は“コンロ”で2678件。最近は、電気機器や配線関連の火災も増えています。2021年のデータでは、“電気機器”が1816件、“電灯電話等の配線”が1473件、“配線器具”が1354件となっており、電化製品の誤った使い方や老朽化が出火原因と言われます。
冬から春にかけての火事対策
前出のように、住宅を始めとする建物火災でもっとも多い原因はタバコの不始末やコンロの消し忘れなのですが、ここでは乾燥する冬場こそ、気をつけたい対策をご紹介します。
暖房器具の取り扱いに注意
ストーブ
石油にしろ電気にしろ、出火原因として多い“ストーブ”による火災は、近くに燃えやすいものがあることが主な出火原因です。また、就寝時にストーブを付けたまま寝てしまい、布団に燃え移るというケースもみられます。以下の3点は徹底して気をつけてください。
- ストーブのそばに燃えやすいものを置かない
- 外出時や就寝時は必ず消す
- 洗濯物を乾かすために使用しない
こたつ
安全装置が備わっている“こたつ”は、ほかの暖房器具と比べて安全なイメージが強く、火事の出火原因となることは少ないとされていますが、使い方を誤ると火災につながる恐れがあります。こたつで火事になる原因は次のような状況が考えられます。
- 洗濯物や座布団などがヒーターに接している
- コードが断線し、発火する
- ペットがコードを噛んでしまった
冬の洗濯物は乾きにくいため、早く乾く場所を探してこたつのなかに洗濯物を入れてしまうことがありますよね。しかし、洗濯物がこたつのヒーターに接し、そこから発火する場合があるため、これは大変危険な行為です。こたつ布団や座布団、座椅子などがヒーターに触れて発火してしまうケースにも注意が必要です。
また、電源コードを踏んだ状態で長時間使用すると、コードに負荷がかかり断線することがあります。 断線したコードに電気を通すと発火の恐れがあり危険です。 こたつを使用する際は、コードが傷んでいないかチェックしましょう。ペットを飼っている場合は、ペットがコードを噛んでしまうなどのいたずらにも注意が必要です。
オイルヒーター
“オイルヒーター”は本体内の燃えにくいオイルを電気によって温め、そのふく射熱で部屋全体をあたためる暖房器具。暖かく感じられるまで時間がかかりますが、ストーブやファンヒーターと違い火を使わず、エアコンのように風も発生しないので、安全かつ肌が乾燥しにくくいため筆者も愛用しています。しかし調べてみると、オイルヒーターでも火事を起こしたという事例もあったため、使用時の注意点を挙げます。
- コンセントは単独で使用し、延長コードやテーブルタップなどは使用しない
- 洗濯物など布製品を直接乗せない
- カーテンや壁から20cm以上離して設置する
- 毛足が長いじゅうたんや凹凸のある場所は避け、平らな床面に設置する
製品によって違いはありますが、オイルヒーターは最高設定にすると1500wと消費電力が大きいです。ちなみに、一般家庭のコンセントは15A(1500W)まで使用可能。そのため、2口以上あるコンセントでも、差し込むプラグはオイルヒーター1つのみにしてください。延長コードやテーブルタップなどでたこ足配線すると、容量オーバーとなる可能性があります。また、ケーブルを束ねたままの使用や、プラグにほこりが溜まっていないかも確認しましょう。
洗濯物など、布製品を本体へ直接かぶせてしまうことも厳禁。オイルヒーター本体の上部は1メートル以上あけ、本体へ熱がこもらないようにしましょう。上部をふさいでしまうと、空気が流れずに火事や故障の原因になります。カーテンなどからも充分に離して使用しましょう。オイルヒーターは倒れた際、自動で電源オフになる製品がほとんどですが、オイルヒーター自体の重量がたいてい10キロ以上と重いです。転倒しにくい場所へ置くことも重要です。
暖房器具やコンロは点検してから使用
石油ストーブ、ファンヒーターといった暖房器具の活躍とともに、お鍋が美味しい季節でもあるため、普段使っていないカセットコンロを使うシーンなどもあると思います。しかし、よく点検せずに使用すると不完全燃焼や火災の原因となることがあります。久しぶりに使用する際は、よく点検してから使いましょう。コンセントとプラグの間にホコリがある場合は取り除き拭き、たこ足配線にならないよう工夫することも大事です。とくに以下のポイントは、徹底して気をつけてください。
- 石油ストーブを使う際は、給油後にしっかり燃料タンクのフタが閉まっているか確認する
- 給油は必ず消火してから行う。火をつけたままでの給油は絶対にNG!
- カセットコンロやカセットガス式のストーブを使う際は、カセットガスを熱源の近くに置かない
冬場に多く発生する、火元がないのに起きる“収れん火災”とは?
“収れん”とは聞きなれない言葉ですが、太陽光が「物体」によって反射、もしくは屈折し1点に集中することを言います。ペットボトルや花びんなど、凹面状・レンズ状のものは、太陽光を反射または屈折させ、光が集中した場所にある可燃物を発火させる危険があります。
収れんの役割を担う可能性がある物体の例
- 水の入ったペットボトル
- 鏡(凹面鏡)
- ガラス玉
- メガネ、虫メガネ
- 調理用のステンレスボウルやステンレスのフタ
こうしてみると、自宅にありそうなものばかりですよね? 太陽の高度が低い冬は、太陽光が部屋の内部に入りやすくなるため、注意が必要です。日光が当たる窓際に収れんの役割を担うような物体は置かず、外出時にはカーテンを閉めましょう。
まとめ
筆者も実家暮らしの頃に、生乾きの洗濯物をこたつで乾かした記憶がありますが、かなり危険な行為だったと思います……。「ついうっかり」がないように、冬から春にかけての時期はとくに、火の元の扱いには気を配りたいですね。
文/Ai Kano