富士山は、標高3,776mを誇る日本で一番高い山です。
その雄大な姿は古来日本人の心をとらえ、数々の歌や物語・絵画に残されてきました。
2月23日の「富士山の日」を迎えるにあたり、富士山の歴史や不思議、さらには噴火の可能性について見ていきましょう。
富士山は、標高3,776mを誇る日本で一番高い山です。
その雄大な姿は古来日本人の心をとらえ、数々の歌や物語・絵画に残されてきました。
2月23日の「富士山の日」を迎えるにあたり、富士山の歴史や不思議、さらには噴火の可能性について見ていきましょう。
江戸時代を代表する浮世絵作家・葛飾北斎や安藤広重は、富士山を題材とした浮世絵を描いたことで有名です。
彼らの作品は海外にもわたり、ゴッホやモネ、セザンヌといった印象派の画家たちにも大きな影響を与えました。
2013年に世界文化遺産にも登録された「富士山」とは、どのような山なのでしょうか?
富士山は、静岡県と山梨県にまたがる山です。
日本で最も高いとされる「剣ヶ峰(けんがみね)」は約3,776mあり、山頂の1月の平均気温は-18.5度にまで下がるといわれています。
富士山の特徴は、裾に向かってなだらかに広がっていく円錐形をしていること。
これほど美しい山形の山は非常にまれであり、古来多くの絵画や歌・物語の題材とされてきました。
富士山がこのように美しい円錐形になったのは、愛鷹山・小御岳火山、古富士火山、新富士火という3つの火山帯が重なり合って形成されているためです。
富士山が噴火を繰り返すたびに、噴火口からは噴出物がたくさん放出されました。
それらは裾野に広く堆積していき、美しくなだらかな円錐形の山形を作り上げたといわれています。
静岡県富士宮市には、富士山を拝み祀ったとされる、縄文時代の祭祀場の遺跡が残っています。
多くの噴火を繰り返す富士山は、古代の人々にとっては「美しく恐ろしい山」でした。
神様が宿る山として人々は富士山を拝み、手を合わせていたのです。
平安時代になると富士山は「浅間大神(あさまのおおかみ)」とよばれるようになり、山麓で祀られるようになりました。
これが現在富士山にある、富士山本宮浅間大社の起源だといわれています。
現在の富士山本宮浅間大社は、全国に約1,300ある浅間大社の総本宮です。
富士頂上には浅間大社の奥宮があり、富士山の8合目以上は全て富士山本宮浅間大社の境内地とされています。
また富士山は、修験道や富士講とよばれる民間信仰の信者にとっては大切な修行場です。
現在でも多くの修験者や富士講信者が、「修行」として富士登山を行っています。
富士山は標高が高いため、植生も極めて豊かです。
富士の裾野にはブナ・栗・カシなどの落葉樹林が広がり、中腹には針葉樹林、山頂付近には高山植物帯があります。
特に高山植物は他の地域では見られないものが多くあり、「フジザクラ」「フジマツ」などと名前に「フジ」が付くのが特徴です。
また富士山は、水の宝庫としても知られています。
富士山には溶岩や火山灰でできた巨大な空洞があり、全体が「巨大な水がめ」ともいえるのだとか。
周辺には豊かな水をたたえる「富士五湖」や富士山の伏流水でできた「忍野八海」、富士川、狩野川、相模川などがあり、富士山周辺に暮らす人々の水源として活用されています。
物語や歌の舞台とされてきた富士山には、さまざまな不思議があります。
ここからは、「雲の様子を見れば天気が分かる」「本栖湖にはモッシーがいる」……という不思議について詳しく見ていきましょう。
その昔の人々は富士山にかかる雲で天気を予測し、農耕や日常生活の目安としていたそうです。
富士山の周辺には他に高い山がなく、湿気を含んだ風は直接富士山にあたります。
山肌と風とがぶつかる位置が高いほど、多種多様な形状の雲が現れるというわけです。
富士山の雲としては、「笠雲」「つるし雲」がよく知られています。
どちらの雲も、風の強いところに表れるとされる「レンズ雲」の一種です。
レンズ雲は他の地域でも見られますが、富士山の雲は変化の種類が多いのが特徴!
つるし雲は約12種類、笠雲は約20種類ものバリエーションがあるそうです。
笠雲やつるし雲は、富士山周辺に「雨」を知らせる雲です。
これらの雲が富士山に表れたときは、70%以上の確率で雨となります。
また笠雲とつるし雲が同時に表れたときは、約80~85%の確率で雨となるのだそうです。
このほか笠雲には、晴れを知らせる「はなれ笠」「つみ笠」といったものもあります。
富士五湖の1つ「本栖湖」には、ネッシーによく似た「モッシー」が生息しているといわれています。
モッシーは体長約30mで背中にこぶがあり、ワニやヘビのような見た目をしているそうです。
モッシーがいるという情報は1970年代からささやかれ、体の一部の撮影に成功したアマチュアカメラマンも存在します。
目撃者が次々と寄せられたことから、モッシーはいわゆる「UMA(未確認生物)なのでは?」と話題になりました。
モッシーについて、現状では詳しいことは分かりません。
ただしUMAというよりは、「ブラックバスやナマズなどの外来種が巨大化した」「本栖湖に放流されていたチョウザメが巨大化した」などの説が有力です。
とはいえ本栖湖は、龍神伝説が残る神秘的な湖。
「モッシーがいる!」といわれれば、「そうかも」と信じたくなる雰囲気があります。
本栖湖の底で、不思議なUMAがひっそりと生きている可能性もゼロではありません。
モッシーを見たい人は、ぜひ本栖湖に足を運びましょう。
本物に出会える可能性は低いかもしれませんが、お土産屋さんではモッシーのステッカーを購入できます。
美しい富士山は、頻繁に噴火を繰り返したことから「荒ぶる山」として恐れられてきました。
地震が多い日本において気になるのは「富士山は噴火するのか?」ということです。
富士山の噴火の可能性や、噴火の際の被害について見ていきましょう。
富士山の地下にあるマグマは現在も活動しており、「今後噴火しない」という可能性は極めて低いとされます。
活火山である限り、「富士山はいつか必ず噴火する」と考えておいた方が無難です。
富士山が最後に噴火したのは、江戸時代にあたる1707年12月16日のこと(宝永噴火)。
現在の宝永山で噴火が起こって黒煙が上がり、火山活動は月末まで続いたそうです。
周辺の家屋・農地は灰に埋まった上、火山灰は江戸にも降り注ぎました。
西暦1100年くらいまで、富士山は頻繁に噴火していたそうです。
3,200年で100回の噴火といわれていますので、平均30年に1回の噴火です。
しかしそれ以降「噴火」といえるものは宝永噴火を含めて3回しかありません。
なぜ富士山の活動が休止しているのかは、専門家にも分からないそうです。
また、平均の10倍近く噴火していないこともあり、次に噴火するときは大規模噴火となる可能性もあるとのことです。
専門家によると、火山の噴火には「水蒸気噴火タイプ」「マグマそのものが動いて噴火するタイプ」の2種類があるのだそう。
噴火が水蒸気噴火だった場合、予兆はほとんどありません。
しかし富士山はマグマそのものが動いているため、予兆が起こる可能性は高いとされます。
噴火の予兆としてよくあるのが、地震です。
例えば宝永噴火では、約49日前に宝永大地震が起こり、噴火の数日前にも小規模な地震があったといわれています。
また伊豆大島や三宅島の噴火では、地震から約2時間後に噴火が発生しました。
とはいえ、地震=噴火の予兆と考えるのは早計です。
平安時代以降、日本では大規模な地震が複数回発生しています。
しかしそのたびに富士山が噴火していたわけではありません。
地震を警戒することは重要ですが、過度に心配し過ぎなくても大丈夫です。
静岡・山梨・神奈川の3県と国、有識者は「富士山火山防災協議会及び富士山ハザードマップ検討委員会」を立ち上げ、富士山の噴火に備えた「富士山ハザードマップ」を公表しています。
富士山の噴火によって想定されるのは、「火口」「火砕流・火砕サージ」「大きな噴石」「融雪型火山泥流」「溶岩流」などです。
このうち溶岩流は速度が遅く、徒歩でも十分に逃げ切れるといわれています。
一方で火砕流は時速100kmを超えるといわれており、逃げることはほぼ不可能です。
ハザードマップでは避難対象エリアを6つに分け、それぞれの移動手段や避難の開始時期を提示しています。
対象は静岡・山梨・神奈川の3県27市町村のおよそ80万人におよび、富士山噴火によって影響を受ける全ての人が安全に逃げられるよう計画されています。
参考:富士山ハザードマップ(令和3年3月改定)|静岡県公式ホームページ
参考:富士山噴火 被害想定とハザードマップ、避難計画は – NHK
富士山で大規模な噴火が起こると、風向きや風速次第では首都圏にも火山灰が降り注ぐと予想されています。
例えば宝永噴火レベルの噴火が発生した場合、首都圏にも2cm以上の火山灰が降り積もるのだそうです。
「2cmなら大したことはない」と考える人もいるかもしれませんが、これは間違い。
火山灰が1mm程度降り積もっただけで、自動車が出せる速度は30km以下になります。
10cm積もると自動車の走行はほぼ不可能になるとされ、都市機能が麻痺する可能性は非常に高いのが実情です。
避難計画では、富士山の噴火が発生した場合は「鉄筋コンクリート造などの頑丈な建物に避難すること」「物流の停止に備えて1週間分程度の水・食料を確保しておくこと」を推奨しています。