ひまわりとともに夏の花として親しまれているアサガオ。小学生の夏休みの宿題として、アサガオの観察は定番ですよね。子どもでもお世話が簡単で育てやすいアサガオですが、知ってるようで知らないネタがいっぱい。今回はそんなアサガオの豆知識とともに、夏の自由研究にも使えるアサガオの花を使った色水実験を紹介します。
アサガオの基本情報
学名:Ipomoea nil
和名:朝顔(アサガオ)
英名: morning glory
科・属名:ヒルガオ科・サツマイモ属
原産地:熱帯から亜熱帯地域
開花時期:7月~10月
育ち方のサイクル:発芽して花を咲かせ、新たな種をつけて枯れていく一年草。枯れたあとに花を咲かせることはありませんが、残された種からまた命を繋いでいきます。
アサガオは朝が来たことがなぜわかる?
和名は、朝の顔と書いて「朝顔」。その名の通り、夏に毎朝、花を咲かせることに由来しています。英語圏では「morning glory」と呼ばれ、直訳すると「朝の輝き」。日本と同じように、やはり朝に咲いていることが名前の由来になっています。
アサガオは朝に咲いて、夕方はしぼんでいますよね。なぜアサガオは朝が来たことが分かるのでしょうか? 朝日で目を覚ますように咲いているアサガオですが、実はアサガオが咲くためには光のない時間が関係しています。アサガオには、光が当たらない時間が約10時間に達すると花を咲かせるという性質があります。なので、前の日の日没(太陽が沈む時間)に、花を咲かせる時間を決めているのです。
7月だと朝5時ごろ、8月だと朝4時30分ごろでしょうか。4時頃に起きると、アサガオの花が開く様子を観察できるはず。普段はちょっと難しいですが、夏休みを利用して早起きをして、子どもと一緒に観察してみるのも楽しいと思います。
アサガオの歴史〜江戸時代のアサガオブームの火付け役は火事!?〜
浴衣の柄になるほど、昔から日本人にはなじみのあるアサガオ。原産国は中国だと言われています。中国ではもともとアサガオを観賞用ではなく、そのタネを下剤として使っていたそうです。当時の中国ではアサガオはとても貴重なもので、牛と交換するほどの価値として取引されていたそうです。
日本にアサガオが渡来したのは、奈良時代とされています。中国から日本に伝えられた当時のアサガオは、青色で小さな花だったそうです。中国と同様に日本でも薬として活用されていましたが、次第に観賞用としても人気が高まっていき、江戸時代にはアサガオブームがおこりました。江戸時代は比較的平和な時代だったこともあり、釣りやお茶、園芸など様々な趣味が発達していったとされています。アサガオの苗は当時、安価に手に入れることができ、品種改良が盛んに行われていました。
入谷の植木屋、成田屋留次郎発行
『三都一朝』(嘉永7年)(国立国会図書館デジタルコレクション)より転載
https://dl.ndl.go.jp/pid/2609169
ブームのきっかけは、当時江戸を襲った大火であったといいます。1806年にあった「文化の大火」で更地になった場所にアサガオを植えてみたところ、おもしろい形のアサガオがたくさん咲いたというのです。珍しいものが大好きで、驚いたり驚かせたりするのも大好きな江戸っ子たちが、これに心を奪われ大ブームになったそうです。
江戸や大坂の各地では、アサガオの優劣を競う品評会が頻繁に行われ、ランク付けには相撲の番付を真似た「花合わせ番付」が作られたそうです。人気は明治時代になっても衰えることなく、現在につながります。毎夏開かれる「入谷朝顔市」は、この江戸時代のアサガオブームに端を発しているんですね。
アサガオのタネには毒があるってホント!?
とっても身近なアサガオですが、かつては下剤の生薬として中国から渡来したものと先ほど紹介しました。現在も漢方薬で牽牛子(ケンゴシ)と呼ばれ、便秘薬などとして使われているのだとか。そのため、タネには毒性があるファルビチンやコンボルブリンなどが含まれています。中毒症状としては、下痢、嘔吐、腹痛、血圧低下、反射低下、瞳孔拡散、幻覚など。 とくに注意すべきは小さな子どもや、拾い食いのクセのあるワンちゃん! 誤ってお庭やお散歩コースなどに落ちている種を飲み込まないように注意しましょう。アサガオは育てるのも簡単ですが、タネの収穫も簡単にできるので、その分保管には十分に気をつけなくてはいけませんね。
アサガオには何色がある?
青、赤、ムラサキ、桃色、茶色、白などがあり、野生のアサガオ(原種)は、青い花を咲かせます。アサガオの色素は、ブルーベリーやナスなどと同じ赤や紫色のアントシアニンで、花びらの細胞の「液胞」という部分に含まれています。色の変化にはpH(水素イオン指数)が大きく関わっていて、pH が酸性なら赤色、アルカリ性なら青色、中性なら紫色の花が咲きます。水や土の性質が変わることで、花の色が変化するようです。
『あさかほ叢』(文化14年)(国立国会図書館デジタルコレクション)より転載
https://dl.ndl.go.jp/pid/2537280/1/31
ちなみにバラに青色がないように、アサガオには黄色がありません。アサガオの栽培が盛んだった江戸時代の図譜には、菜の花のように黄色いアサガオが記録されていますが、現在では失われてしまっているため、「幻のアサガオ」と呼ばれています。近年、遺伝子導入技術を使うことで「黄色いアサガオ」を咲かせることに成功したという、研究グループの発表があります。
基礎生物学研究所の星野敦助教らが、キンギョソウ由来の遺伝子をアサガオで機能させることにより、「黄色いアサガオ」を咲かせることに成功!
プレスリリース – 「幻のアサガオ」といわれる黄色いアサガオを再現
参考:
自由研究にも◎ 子どもとアサガオの色水実験をしてみよう!
アサガオの花色はポリフェノールの一種であるアントシアニンという色素が元になっています。その色素は、pHによって変化することは先ほど紹介しましたが、酸性とアルカリ性に反応して色が変わります。雨が降った後に、朝顔の花びらの色がぽつぽつと水玉模様のようになっているのを見たことがありませんか? あれは、酸性雨が当たったからなんですね。
【用意するもの】
- アサガオの花(青やムラサキの花色がおすすめ)
- お茶パック
- 水
- 透明なグラスなどの容器をいくつか
- 酸性の食材(レモン果汁やお酢など)
- アルカリ性の食材(重曹や卵の白身など)
まずは色水作り
アサガオの花がらをお茶パックに詰めます。花をそのまま水につけても色水はできますが、花のカスが浮き出てしまうため、お茶パックを利用しました。
水を入れたコップの中で、アサガオの花がらを入れたお茶パックを揉んで色を出していきます。アントシアニンは水溶性のため、すぐにムラサキ色の色水ができあがりました。
実験①レモン汁、ベーキングパウダーを投入
酸性のレモン汁を数滴……
かき混ぜるとピンク色に!
もうひとつは、ベーキングパウダーを投入。アルカリ性の重曹がなかったため、原材料に炭酸水素ナトリウム(重曹)が入っているベーキングパウダーで代用しました。
ベーキングパウダーは少し青みがかかってる? 微妙ですが、レモン汁は鮮やかなピンクになりました。
実験②レモン汁と卵の白身を投入
まずはレモン汁を投入!
続いて、もうひとつのグラスに卵の白身をを投入!
アルカリ性の卵の白身はブルー、陽性のレモン汁はピンクと、色がはっきりと変化しました。
そのほか、酸性といわれる卵の黄身や、アルカリ性といわれる牛乳などで実験してみましたが、ミルキーになってしまい、色の違いはわかりにくかったです。
とはいえ、レモン汁と卵の白身を入れたときは、パッと手品のように色が変わったので、子たちのテンションは爆上がり。その後も「チーズはどうかな?」、「梅干しは?」など、目を輝かせて実験していました。
まとめ
朝に咲いて、夕方はしぼんでしまうアサガオ。摘み取った花がらを使った色水遊びは、家にあるもので簡単に実験ができるのでおすすめ。思いの外、盛り上がりますよ。
文/Ai Kano