「お金の教育」といっても、お金もうけの方法を教えるのではなく、子どもが自立するために必要な価値観のベースを育てることを意味します。とはいえ、親自身が金融知識にうとくて教える自信がない……といった方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、「お金の教育」の実践法やタイミングなど、日常生活のなかで教えていける情報を集めました。この夏、20年ぶりに新札が発行されたのを機に、子どもと一緒にお金について、考えてみませんか。
「お金の教育」とは?
「金融教育」、「マネーリテラシー教育」とも呼ばれて、“お金とは何か?”から始まり、使い方・貯め方・稼ぎ方・増やし方(資産運用)など広くお金にまつわることの教育を指します。「子どもの前では、あまりお金の話をしたくないな……」、「計算もまだできないのに、難しそう……」、そんなふうに思われる方もいるかと思います。
親世代はなかなかなじみがなかったお金の教育ですが、まずは「家族がどうして暮らしていけるのか」、「その中でお金はどのような役割があるのか」を教えることが、お金の教育の第一歩。それと同時に、さまざまなモノ・コトの価値をお金だけで推し量るのではなく、お金はあくまで生活を支える「道具」であるという感覚を身につけさせることも大事です。
日本は遅れている? お金の義務教育の現状
日本で金融教育の重要性が認識されはじめたのは、実は最近のこと。2022年度から高校の家庭科の授業で、新たに投資や資産形成なども盛り込んだ「金融教育」が始まりました。
その背景にあったのが、2022年4月からの“成人年齢の引き下げ”です。クレジットカードを作るなどの金融に関する契約を18歳から行えるようになり、若者が金融トラブルに巻き込まれることが懸念されたのです。また、少子超高齢化や長寿化が進み、今までの社会保障制度が揺らいでいるのも一因といえるでしょう。子どもたちの世代では、老後資金を自分で貯めておくという意識やスキルがますます必要になってきます。
子どもが将来自立して生きていくためには、社会とお金のつながりを理解し、お金の使い方、増やし方、貯め方などの幅広い知識を身につけていくことが必要です。
諸外国では、小学校から金融教育が必修化されているなど、お金の教育が根付いています。金融広報中央委員会「金融リテラシー調査 2022年」によると、学校などで金融教育を受けた人の割合は、日本が7%に対して、米国は20%と日本の約3倍。ちなみに、米国調査では金融知識に自信がある人の割合は、米国が71%と多いですが日本は12%のみで海外との金融知識の格差が大きいことがうかがえます。
子どもに「お金の教育」をするメリットって?
ものの価値を判断して取捨選択する力を身につけられる
「お父さん・お母さんが一生懸命働いてくれるからお金が手に入ること」に気がつき、「お金は限りあるもの」という価値観が育ちます。お金が無限に湧き出てくるものではないことがわかれば、今あるものを大切にしようと考え、「欲しい!」と思ったものに対して本当に必要なのか吟味するようになるでしょう。子ども自身の価値判断基準をつくり上げることができ、その結果、自身の価値基準をもとに取捨選択できるようになります。
「数や計算の概念」を身につける機会になる
幼児にとってのお金の教育は「金融」という側面だけでなく、「数や計算」の概念を身につける機会にもなります。例えば、硬貨を使うことで、1円玉が5個集まると5円玉と同じ価値になる、10個集まると10円玉と同じ価値になる、10円玉が5個集まれば50円玉と同じ価値になる、というように、数の概念に気づき、四則計算の基本になる5や10のまとまりを意識できるようになります。
ドリルなどではまだ理解できない足し算や引き算でも、お買い物ごっこの支払いとおつりを通して計算すると答えがわかるケースがあります。電子マネーが普及した現代では、子どもがお金のやりとりを目にする機会が減っています。意識して現金での買い物のやりとりを見せたりする工夫で、体感的に簡単な足し算・引き算を学べるのも大きなメリットです。
お金の仕組みを通して社会の仕組みや役割を知ることができる
いきなり税金や社会保障について考えることは難しすぎるかもしれませんが、お金の仕組みを学ぶことで、社会の仕組みや役割を知ることができます。子どものうちからお金の仕組みを理解しておけば、将来のライフプランを考えて行動し、将来必要になるお金を計画的に準備できるようになるでしょう。また、税金や社会保障制度について理解できていれば、安心して生活できるようになるでしょう。
お金の教育をはじめるベストタイミングは?
おすすめなのは、就学前の幼児~小学生低学年です。この年頃の子どもは、親と一緒に買い物に行った際など、レジでお金を払うことに興味を持つ場合が多く、日々の生活や遊びを通して自然に学ぶことができるからです。
欲しいものをねだられたときや、お金について質問されたときはチャンス! お金は欲しいときにどこからともなくやって来るものではなく、労働の対価として得られるのが基本です。親が働いてお金を得たからこそ、欲しいものを買えることや、使えるお金には限りがあることなどを説明するのに良い機会です。
ただし、一方的に教えてしまうと興味を持たなくなる可能性もあるため、子ども自身に考えさせるように話してあげることが重要です。未就学児の場合は、お店やさんごっこを通じてお金の使い方を学ぶのもありですね。
幼少期に家庭でできる「お金の教育」6つ
お小遣いを使って教える
お小遣いの渡し方は「定額制」、「必要に応じて」、「お手伝いの報酬」といくつかのパターンがあると思いますが、計画的なやりくりを学ばせたいのであれば「定額制」がおすすめです。合わせて「貯金箱や専用の財布」と「お小遣い帳」なども用意するといいでしょう。
子どもが管理しやすいように、最初のうちは1週間に一度、少額から始めてみるのも手です。お小遣い帳には出入金の記録だけでなく、買ってよかったもの・買わなくてもよかったものなど、主観を合わせて記録してみたり、工夫してみると◎。
子どもがお小遣いの範囲内でやりくりしていることに関して、大人の価値観を押し付けないことも大切です。最初のうちは多少の失敗はつきものですが、あたたかく見守りつつ、以下のポイントを意識して話してみてください。
限られたお金のなかでやりくりをする
次のお小遣い日まで計画的に使うことの重要性を伝え、お小遣い帳をつけさせながら、お金の管理の仕方を教えます。
欲しいものを買えるだけのお金が貯まるまで我慢する
欲しいものが1か月のお小遣いだけで足りない場合、少しずつ貯めていくことを提案してみましょう。
将来のために貯金をする
いくら貯まったかも大事ですが、何に使うかを考えさせることが重要。子どもが自ら管理することでより「自分ごと」として捉えられるようになります。
買い物で金銭感覚を養う
最近はネットショッピングも増えましたが、まずは「お金は何のためにあるのか」、「欲しい物を手に入れるためには何が必要なのか」など、お金の役割がわかるように積極的に親子で買い物に行きましょう。なかでも100円ショップや駄菓子屋さんなどは、値段の計算がしやすい商品が多いのでおすすめです。
例えば駄菓子屋さんは、100円を渡して欲しいものを買いに行かせるといった、実際の買い物体験の場として利用しやすいですね。また、すこし大きくなったら、スーパーなどで予算を与えて子どもに商品を選ばせるのも有効です。例えば、「◯◯◯円でカレーの材料を買おう」などと伝え、一緒に計算しながら材料を選ばせます。量の違いや消費期限の違いで値段が異なるといった気づきを得られたり、金銭感覚を養ったりすることが期待できるでしょう。
お手伝いをしたときに報酬を渡す
お小遣いをあげるタイミングとして、定額制とは別に、お手伝いの報酬として不定期に渡す方法も一案。お金の稼ぎ方や大変さがわかるだけでなく、家事の手間や家庭の中での自分の役割などに気がつくメリットもあるので、ぜひ取り入れてみましょう。
その際に注意したいのが、子どもが「お金のためだけにしかお手伝いをしなくなる」ということがないように、報酬をあげるタイミングをはかることです。家族の一員として報酬なしで行う日々の小さなお手伝いと、報酬を貰うための手間や時間がかかるお手伝いはしっかり区別するといいでしょう。
(例)
日々のお手伝い:洗濯物をたたむ・食事の準備の協力など
報酬をもらえるお手伝い:洗車を手伝う・庭の雑草を抜くなど
仕事から経済や金融について考える
子どもになりたい職業を聞いて、それを切り口に、働く意義や経済との関わりを一緒に考えてみましょう。具体的に、その職業と経済・社会がどう関わっているか説明します。親が働いている会社や業界、どういう会社と取引しているかなど、身の回りの仕事から具体的に話してみるのもおすすめです。
お金を扱う絵本やゲームを取り入れる
子どもにもわかりやすいお金の絵本や、お金を扱ったゲームを活用するのもありです。楽しみながら学べる、おすすめの本とゲームをご紹介します。
絵本『100円たんけん』
お母さんと子どもが商店街のさまざまなお店をまわって「100円で買えるもの」を探すストーリー。100円が高いか・安いかではなく、例えば野菜なら取れた場所や季節によって値段が違うなど、いろいろなパターンで物の価値と照らし合わせていくところがおもしろいです。子どもにとってわかりやすい「100円」を通して、お金の価値と物の価値を考えられる機会となります。ひらがな・カタカナのみなので幼児から楽しめますが、小学生の興味も引く内容で読み応え十分です!
ゲーム『どこでもドラえもん 日本旅行ゲーム』
ドラえもんたちと日本・世界旅行、宇宙旅行までできる、すごろくゲーム。ドラえもんたちと旅をしながら、日本や世界の地理・宇宙のこと・お金のやりとりなどが学べます。
お釣りの計算がスムーズにできるようになったり、乗り物代の計算でたし算やかけ算の練習もできます。「最短ルートでゴールするにはどうすればいいか」、「お金がなくなってきたから、今のうちにお小遣いを稼いでおかないと乗り物に乗れない!」など、戦略や攻略法など考える力が鍛えられます。
金融庁が行っている取り組みを活用する
「うんこお金ドリル(生活編)」(うんこドリル×金融庁)
金融庁×うんこドリル うんこ おかねドリル 全年齢対応 | うんこドリル公式
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にちぎん・キッズ(日本銀行)
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参考:
まとめ
文/Ai Kano