2025年4月23日から5月12日は「こどもの読書週間」です。今年は、アンパンマンの生みの親・やなせたかしさんの本を手に取ってみるのはいかがでしょうか。ドラマでも話題のやなせさん。子どもだけでなく大人の心にも残る、おすすめの本をピックアップしてご紹介します。

「こどもの読書週間」とは?

画像出典:公益社団法人 読書推進運動協議会
「こどもの読書週間」とは、「子どもたちにもっと本を、子どもたちにもっと本を読む場所を」との願いから制定された、読書推進のための取り組みです。
1959年(昭和34年)に日本書籍出版協会児童書部会が中心となって開催したのが始まりで、翌1960年(昭和35年)からは公益社団法人 読書推進運動協議会が主催しています。
こどもの読書週間には、図書館・書店・学校を中心に、子どもたちに本を楽しんでもらうためのさまざまなイベントが開催されています。子どもたちに読書の楽しさを伝えると同時に、大人が子どもにとっての読書の価値について考えるきっかけにもなっています。
アンパンマンの作者・やなせたかしさんってどんな人?
やなせたかしさんは、乳幼児に絶大な人気と知名度を誇る「アンパンマン」の作者として知られる漫画家・絵本作家です。とても多彩な方で、デザイナーや詩人としても活躍しており、童謡「手のひらを太陽に」の作詞家としても知られています。
やなせさんの人生はとても波瀾万丈。幼い頃に父親を亡くし、母親とも離れることになり、伯父の家で育ちます。戦時中は徴兵され、戦地へ赴いた経験もあります。こうした人生経験はやなせさんの作品に大きく影響しており、「正義とは何か」「本当のやさしさとは」といったテーマが作品の根幹となっています。やなせさんの作品は、子ども向けに描かれた絵本であっても、そこには大人にこそ読んでほしい深いメッセージが込められており、幅広い世代から愛され続けています。
2025年3月からスタートした、NHK連続テレビ小説『あんぱん』は、やなせさんと、妻の暢さんをモデルにしたドラマです。夢を忘れなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、アンパンマンの誕生にたどり着くまでを描いています。
子どもと読みたい! やなせたかしさんの本おすすめ5選
ここからは、こどもの読書週間にぜひ読んでほしい、やなせたかしさんの本を紹介します。今回紹介する本を、筆者の5歳(年長)の娘と一緒に読んでみました。子ども目線の感想も交えてお伝えします。
キラキラ
キラキラ
やなせたかし/作・絵
勇敢な兄弟の弟は、キラキラという化けものを退治しにひとりで向かいます。帰ってこない弟を追い山に入った兄が見たのは……。

化けもの・キラキラと、勇敢な兄弟・キルとキリが登場する「キラキラ」。人と人が理解し合うためにはどうすれば良いのか、子どもだけでなく大人にとっても非常に考えさせられる、とても切ない物語です。令和7年度版中学道徳教科書(教育出版)にも全文が掲載されています。
娘はこれまでハッピーエンドの絵本しか読んだことがなかったので、クライマックスは「なんで?」と悲しそうな顔をしていましたが、ストーリーは気に入ったようです。「キラキラ読んで」と何度も本を持ってくるようになりました。
「キラキラ」を読んでみた年長児の感想
「キラキラは本当はやさしいのに、見た目がこわいから勘違いされてしまってかわいそう」
やさしい ライオン
やさしい ライオン
やなせたかし/作・絵
みなしごライオンのブルブルと、お母さんがわりの、犬のムクムクの物語。絵本作家活動の原点となった、読み継がれる代表作です。

親子の強い絆と深い愛が描かれている「やさしい ライオン」は、やなせさんが絵本作家としてデビューした作品で、映画化もされた名作です。
娘は動物が好きなので、かわいらしいイラストに惹かれたようです。最初は赤ちゃんライオンのブルブルとお母さんがわりの犬・ムクムクがとてもかわいらしく、微笑ましい内容でしたが、ブルブルが大きくなってからクライマックスにかけてはとても切ない気持ちになりました。
「やさしい ライオン」を読んでみた年長児の感想
「赤ちゃんのブルブルがとってもかわいかった。ブルブルはライオンだから、いきなり檻を飛び出したらみんなびっくりしちゃうかもしれないけれど、撃たれるのはかわいそう。でも、ブルブルとムクムクが会えてよかったな」
それいけ! アンパンマン
それいけ! アンパンマン
やなせたかし/作・絵
みんなを助けるため、どこへでも駆けつけるアンパンマン。こざるに顔を分け与え、かいじゅうに襲われても、何度でも蘇ります。

アンパンマンが初めて絵本に登場したのは1973年の月刊絵本「キンダーおはなしえほん」10月号で、2023年に50周年を迎えました。50周年を記念して刊行された「やなせたかしのあんぱんまん 1973」シリーズの中の1冊が、「それいけ! アンパンマン」です。同シリーズには、アンパンマンの原点ともいえる6つの作品があり、新装版として、これからも長く読み続けられるようにとの想いが込められています。
現代のアンパンマンとは見た目が少々異なるため、娘は「これ本当にアンパンマンなの?」と不思議そうに見ていましたが、内容を見てハマった様子。ちょっとシュールな場面もあり、娘も楽しそうでした。
「それいけ! アンパンマン 」を読んでみた年長児の感想
「こざるにいっぱい食べられてアンパンマンの顔が半分くらいになっちゃったのがおもしろかった。かいじゅうの中から出てきたとき、顔がなくなっていてちょっと怖かったけど、ジャムおじさんに直してもらえてよかったね」
アンパンマンと ピエロのトンネル
アンパンマンと ピエロのトンネル
やなせたかし/作・絵
アンパンマンが消えてしまったバタコさんたちを探していると、森の中のトンネルに吸い込まれ……その先には、怪しいピエロの国が!

「アンパンマンと ピエロのトンネル」は、アンパンマンがばいきんまんのイタズラからみんなを守る、現代でもお馴染みのストーリーです。そのため、娘は今回読み聞かせをした本の中でも最も反応がよく、イラストを見ながら「これは絶対にばいきんまんだよね!」「早くアンパンマン来てくれないかなぁ」とつぶやいていました。親子で楽しく読める1冊です!
「アンパンマンと ピエロのトンネル」を読んでみた年長児の感想
「最初に出てきたピエロがばいきんまんとドキンちゃんだなってすぐにわかったから、バタコさんとチーズに『ついていっちゃダメだよ』って教えてあげたかった。捕まっちゃったけど、アンパンマンたちが助けに来てくれてよかった。ばいきん大サーカスのページがとってもおもしろかった」
勇気の花がひらくとき やなせたかしとアンパンマンの物語
勇気の花がひらくとき やなせたかしとアンパンマンの物語
梯 久美子/文
「ぼくが生きる意味はなんだろう?」そう自分に問いかけ続けた、アンパンマンの生みの親、やなせたかし先生の伝記

こちらは絵本ではなく、やなせさんの生涯が綴られた伝記の読み物です。令和6年度版の小学5年生国語教科書(光村図書)にも掲載されています。
幼児には難しい内容なので、筆者が1人で読んでみました。やなせさんの幼少期に抱えた劣等感や、自由な校風の大学での生活、戦争での経験、妻との出会いなどが子どもにもわかりやすい文章で書かれています。やなせさんの詩や写真も挿入されているため、とても読みやすいですよ。
アンパンマンに込められたやなせさんの想いを知ることができるため、小さい頃アンパンマンが好きだった子どもはもちろん、大人にもぜひ読んでほしい1冊です。
©やなせたかし
まとめ
文/Megumi