【教えて!マメ先生①】子どもが育つ「遊び」とは?親はどうすればいい?

公開日:2020/09/28

【教えて!マメ先生①】子どもが育つ「遊び」とは?親はどうすればいい?

様々な情報があふれる現代。子育てについても、どうしたらいいか悩んだり、情報に振り回され、あれもこれもしなくちゃいけないとがんじがらめになったりしていませんか?

 

この記事では、株式会社コズレさんにご登録されている会員の皆さんに回答いただいたアンケートをもとに、NHK「すくすく子育て」でもお馴染みの”マメ先生”こと、玉川大学教授の大豆生田啓友先生(専門:乳幼児教育学)に、「子どもをどう捉えればよいのか」「大人はどうかかわればよいのか」について「遊び」を切り口に目からウロコの考え方をご紹介いただきます。

 

記事を読んで少しでも、気持ちが楽になった、気づきが生まれたと思っていただけたらうれしいです♪

 

※アンケート:延べ1,000人以上の方にお答えいただきました。

子どもと遊んであげなきゃいけないの? どうかかわればよいの?

「子どもが小さいためどのような遊びが適正か分からない」(0歳7ヶ月・母)

「この遊びがいいのか、月齢にあってるのか」(0歳8ヶ月・母)

「まだそこまで反応がないので少し虚しい気持ちがある」(0歳2ヶ月・母)

「まだしゃべれない子なので、時々どうしたいのかが分からない」(1歳4ヶ月・母)

「何が楽しいのかわからない」(0歳3ヶ月・母)

 

0~1歳の子がいる保護者のリアルな声です。皆さん、お子さんとのかかわり方に悩みを抱えていらっしゃるのが分かります。

また、お子さんと遊ぶ時のかかわりについてのアンケートからは、0歳児の約半数の保護者が、「子どもが小さいため、まだ一緒に遊べない」と考えていることがわかりました。それでは、子どもとのかかわりについて、マメ先生に聞いてみましょう。

「こんなことをしたら喜ぶかな」と思うことを返してあげて

【マメ先生】
簡単に言うと、「特別なことをする必要はない」と思った方がよいと思います。

 

基本的には、子どもが喜ぶように返してあげればいいのです。例えば、ぐずっている時に、高くちょっと持ち上げて喜んだら、それでいい。「うー」と子どもが発した言葉に言葉を返して、ケタケタ笑ったらそれでいい。かわいいなあと思ったら、優しく触れてあげて、にこにこ笑ったらそれでいい。

 

そんな風に子どもが何か発してきたことに、「こんなことをしてあげたら楽しいかな」と思って返してあげたり、愛情を込めて子どもの身体に触れたり、子どもが一生懸命何か言葉を発しようとしていることに言葉をかけてあげたりするということが大事なのです。

 

「こんなことだけでいいの?」「それなら、いつもやっていることと同じだよ」と思われるでしょう?

 

そうなんです。皆さんがいつもやっていることなのです。子育てを真剣に考えている人ほど、「正しさ」を求めてしまいがちです。でも、「正しさ」は外にあるものではありません。我が子のために頑張っているあなたの中にすでにあるものなのです。

 

そう考えてみると、0歳児の子どもにあなたは何もしていないでしょうか?そんなことないでしょう。

 

普段普通にされている共感的なかかわりが基本だと思います。そして、そういったかかわりの中で、自然と”遊び”が生まれています。

そういえば遊びってどんなこと? よい遊びってあるの?

子どもが夢中になって取り組んでいること、それが遊び

【マメ先生】

大人は、何か特別な遊びをすることや、特別なおもちゃで遊ぶことが子どもにとって良い経験になっていると思いがちですが、実はそうではありません。上で述べたようなやりとりもすでに遊びであり、大切なことです。また、大人が何かしてあげなくても子どもは自分で遊ぶことができ、そこから様々なことを学んでいます。

 

例えば、ティッシュを次々とることも、「とっていくとどうなるんだろう?」という興味関心、つまりそれは探索行動になっていて、それが色々なことに対する意欲の育ちにつながっていたりするのです。手でつまんだり離したり、口に運んできたりするということを通して手指の動きを鍛えることになっていたりします。

 

大事なことは、その子がわくわくしているかどうかということ。だから、みんながみんなこうすればよい遊びなんてないと思います。

 

世の中には「知育玩具」と名前のついているものがありますが、特別なものでなくても、身近なものでもたくさんあります。

 

日常の中で、例えば、ペットボトルに光を照らしてみる姿や転がすのがおもしろいと思っている姿があるのなら、もうすでにそのペットボトルは知育玩具になっているのです。

 

自分の周囲の世界に対する探索行動は、子どもにとってとても大事なことです。しかし、それが親にとって、ちょっと困るなとか、そんな風に遊ぶと危ないなと思うことがあるかもしれません。そのような時は、代わりになるものを出してあげること・考えてあげることで気持ちが切り替わる場合もあると思いますよ。

親は先回りせず、子どもの興味を大事にしよう

保護者が好ましいと思う遊び方についてのアンケートの結果、年齢を問わず多くの保護者が充分に身体を動かしてもらいたいと考えており、低年齢のうちは、色々なことに興味をもつことや、好きなことに集中して取り組むことなども重視していることがわかりました。年齢があがるにつれて、人とうまく関わることや難しいことへのチャレンジなども期待するようになる傾向がみられました。

 

こちらの結果について、マメ先生はどうお考えでしょうか。

 

【マメ先生】
アンケートでも上位にきていますが、乳幼児期に「充分に身体を動かす」ことは大事です。もし外に出向けるのであれば、外に出て、公園などでいっぱい走ったりするのもいいでしょう。すでに述べてきましたが、「色々なことに興味が向いている」、「好きなことに集中している」ことも、皆さんが思っているように大事なことです。

 

さて、親の思いとズレが生じる場合があることにも少し言及していきます。

 

「仲良く遊ぶ」ことについては、乳幼児期は必ずしも相手と仲良く遊ぶとは限りません。他の子のものが欲しくなったり、子どもによっては一人で遊ぶ方がよかったりすることもあります。親としては焦るところもあるかもしれませんが、それぞれタイプがあり、低い年齢でもすごく社交性のある子もいますが、どちらかというと一人を好んだり、今はまず一人でじっくりの方が大事という子もいます。乳幼児期は「仲良く遊べる」というよりは、それぞれ「自分のやりたいことができる」ということを保障してあげることの方が大事かなと思います。

 

「難しいことに挑戦したり、繰り返し練習したりする」ことについては、子どもが主体的に取り組んだ中で結果的に難しいことにチャレンジしていることはよいですが、大事なことは、あまり親が先回りしない方がよいということです。子どもは自分がやりたい遊びをやっていると、夢中になって遊びます。夢中になって遊んでいる中で困難をも乗り越えているのです。例えば、泥だんごがきれいに固まらない時に、何度も何度も試行錯誤する姿が見られます。それが、子どもの「やりぬく力」にもつながるのです。

 

親が「こうあるべき」とあまり先回りしすぎてしまうと、自分からやってみよう!という意欲や、自分は結構いろんなことができるんだ!という有能感、何かに熱中する姿勢などが育たなくなってしまうかもしれません。

遊びって、子どもにとって何か良いことがあるの?

【マメ先生】
さて、遊びの大切さについてお話する時のヒントとなるものの一つに「非認知能力」というものがあります。現在、注目されている能力です。

 

能力というと、何かが目に見える形でできること(例えば文字の読み書きや計算など。これらは「認知能力」と呼ばれます)に意識がいきがちですが、乳幼児期のこの時期は、その子の心や社会性など数値化しにくい「非認知能力」を育てることが大事だといわれています。

 

そこで注目されるのが「遊び」です。泥だんごの例のように、「やりぬく力」は、自分の気持ちをコントロールする力でもあります。ですから、非認知能力を育てる上でも、その子が自分から夢中になってする遊びを大切にしてほしいです。夢中で遊ぶことは、問いを持ったり、探究したり、他者と関わったり、豊かな学びにつながっているのです。そして、知的好奇心が育っていくことで、認知能力にもつながっています。

 

では、なぜ非認知能力が大事か、と考えた時に2つの視点があります。

 

1つは、時代が変わっても大事な普遍的な視点。自分らしくいられる・何かに熱中してわくわくしている・うまくいかなくても「まあいっか」と気持ちを切り替えられる。これっていつの時代であっても、「幸せに生きていくコツ」ですよね。大人にも言えることです。

 

もう1つは、21世紀型スキルとも関連するわけですが、AIが発達する時代において、人が人として何を得意とするか、という視点。例えば、人とうまくコミュニケーションをとる、自分なりの発想で何かを生み出すという力は、小学校以降になっても大事なことです。

 

そのためには、まずは、「自分らしさ」がちゃんと大事にされること、何かに熱中して取り組めることなどが保障されていることが、これからの社会において重要になってくるのだと思います。

子どもも親も「らしさ」を一緒に楽しもう!

【マメ先生】
子育てをしていると、何が正しいのか分からなかったり、他の子と比べたり、親の思いでこう遊んでほしいと思って子どもを誘導したりしてしまいがちですが、まずは自分の子の良さを見つける、そうすると、ちょっと見え方が変わってくると思います。

 

遊びも、「あ、こういう遊びが自分の子にとってはいいんだ」というところを大事にしていってあげることの方が、結果的に子どもにとっても、親にとっても良いでしょう。多くの子どもたちは、すでに何か自分なりに好きな世界が小さくてもあったりします。

 

あれもこれもと、あまり頑張りすぎなくても大丈夫ですよ。子どもは子どもなりにやっていて、親もよく頑張っているから。

 

その子がその子らしく生きていること、私が私らしくやっていること、それぞれの「らしさ」を一緒に楽しんじゃおうくらいの感じのスタンスが子育てにはよいのではないでしょうか。

 

次回は、保護者アンケートをもとに、遊び場面での親が感じる困り事について、捉え方や対応について話をしていく予定です。

フレーベル館より

今回の記事はいかがでしたでしょうか。

私たちフレーベル館は創業以来、「子どもたちの健やかな育ち」を支えるため、様々な事業に取り組んでまいりました。「子どものことを想う」一員として、保護者の皆さんの悩みや不安、知りたいことなどに寄り添い、一緒に考えていきたいと思っています。

次回もぜひご覧いただけたらうれしいです。

監修者プロフィール

大豆生田啓友

玉川大学教育学部教授。専門は、乳幼児教育学・子育て支援。青山学院大学大学院教育学専攻終了後、青山学院大学幼稚園教諭などを経て現職。日本保育学会副会長。こども環境学会理事。NHK「すくすく子育て」をはじめ、テレビ出演や講演活動など幅広く活動中。多数の子育てに関する著書がある。

文/フレーベル館 こども子育て研究室

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