「海遊び後、自宅で子どもが急変…」「静かに溺れる子ども」なぜ?子どもに多発する水難事故の理由と保護者が知っておくべき4つのこと

公開日:2022/08/13

「海遊び後、自宅で子どもが急変…」「静かに溺れる子ども」なぜ?子どもに多発する水難事故の理由と保護者が知っておくべき4つのこと

アクティブに動きやすい夏は、家族でレジャーを楽しむのにぴったり。

子どもを連れて海や川へ遊びに行こう……と計画しているご家庭も多いのではないでしょうか?

 

海や川は最高の避暑&レジャースポットではありますが、常に「水の事故」と隣り合わせです。

夏になると水難事故の悲しいニュースが毎日のように出ています。

それでもどこか他人事な自分はいませんか?

お出掛け前に、本当に身近で怖い「子どもの水難事故」について知識を深めておきましょう。

 

今回は保護者が知っておきたいことを「水難事故の現状」「子どもならではの溺れ方」「溺れてしまったときにすべきこと」「水難事故の防ぎ方」の4つに分けてご紹介します。

子どもの水難事故の現状

子ども(0~14歳)の死亡事故のうち、水に関係する事故は死因の上位を占めます。

消費者庁が発表した資料を基に、子どもの水難事故の現状について見ていきましょう。

 

子どもの不慮の事故の発生傾向~厚生労働省「人口動態調査」より~|消費者庁消費者安全課

「溺水(できすい)」による死亡事故が多発している

平成28年~令和2年(2016~2020年)の5年間で発生した子どもの不慮の死亡事故は、約1,300件に上ります。

 

このうち「溺水」は、1歳・3歳以上の死因で2位。

不慮の事故の中では、交通事故に次ぐ多さです。

 

溺水とは、水中に体が沈み生命が危険にさらされる状態のこと。

低酸素状態となり、臓器に酸素を送るのが困難となります。

 

酸素の供給が滞ってしまうと、特に脳へのダメージが顕著です。

低酸素状態が3~5分続くだけで、子どもの生命はかなり危険な状態にさらされます。

 

子どもが溺れてしまったときは、「5分」程度しか時間の猶予がないと考えましょう。

「海・河川」「浴槽」に注意

平成28年~令和2年(2016~2020年)の5年間で、溺水による子どもの死亡事故は278件発生しました。

 

このうちの131件については、家庭内の浴室が事故現場です。

年齢で見るとまだ自分の意志で動けない0~1歳児がほとんどで、家族の不注意によって不幸な事故が発生しています。

 

これに対し、自然水域での溺水は99件。このうち90件が5~14歳の子どもです。

 

5歳以上になると、ある程度自分の意志で動けます。大人が目を離したわずかなすきに、事故に遭ってしまうケースが少なくありません。

子どもが水に入るときに目を離してはいけない理由

子どもが水に入るときは、たとえ周辺に人がたくさんいたとしても目を離すべきではありません。

「子どもが溺れても気付きにくい」といわれる理由について紹介します。

子どもは静かに溺れてしまう

子どもが溺れるときは、大声を出したりバタバタと水をかいたりしないケースが多いのだとか。

「周りの人が気付いてくれるだろう」「様子が違えば分かるだろう」と安易に考えてはいけません。

 

子どもは大人が気付かないうちに溺れ、水中に沈んでしまいます。

 

水に慣れていない子どもが溺れると、口から呼吸するだけで精一杯です。

小さい子どもなら、自分が溺れていることさえ理解できないでしょう。

 

「子どもが自分で助けを求める」というのはほぼ不可能だからこそ、大人が目を離すべきではないのです。

子どもが溺れているかどうか判断しにくい

また子どもが溺れてもがいたとしても、遊んでいるようにしか見えないケースもあります。

この場合、周囲にどれほどたくさん大人がいても助けを期待するのは困難です。

 

子どもの異変は、「いつも見ている保護者だからこそ分かる」ということもあります。

子どもが水辺で遊ぶときは、他人任せは厳禁です。

「二次溺水」「乾性溺水」にも注意

「二次溺水」の症状

子どもが海やプールで水を飲んでしまったときは、「二次溺水(にじできすい)」に要注意です。二次溺水になると、水から上がって時間がたった後に呼吸困難になったり肺水腫(はいすいしゅ)を発症したりすることがあります。

 

二次溺水の原因は、肺に入った水が排出されずに残ってしまうこと。海やプールで遊んだ夜に子どもの様子が急変した……、などがあれば、すぐに病院へ行きましょう。

  • 二次溺水の主な兆候:
    呼吸困難、咳、眠気や倦怠感、胸の痛み、嘔吐、普段と違うぐずり方

    発生にかかる時間は1~24時間

「乾性溺水」の症状

二次溺水と同様、水中ではないのに溺れたような状態になるものに「乾性溺水(かんせいできすい)」があります。

これは、肺に水が入るなどしていないのに溺れたような症状が出ることです。

 

冷たい水を少し飲み込んだだけでも、喉がびっくりしてけいれんを起こし、声門が閉じてしまうケースがあります。

すると、子どもは窒息に近い状態になり、酸素を取り込むことができず低酸素状態になります。

もし、冷たい水を海や川などで飲んでしまった時は、やがて意識を失って、水中に沈んでしまいます。

 

乾性溺水は浅瀬の海・プールでも十分にあり得ます。

子どもが水に入った瞬間から、保護者は子どもの様子を常に視界に入れておくべきです。

  • 乾性溺水の主な兆候:
    冷たい水を急に飲んだ後などの呼吸困難

    発生にかかる時間はすぐ

1cmの深さでも溺れる

子どもに限ったことではありませんが、鼻と口が水で覆われると人は溺れてしまいます。

特に乳幼児は大人よりも鼻や口が小さいため、場合によっては1cm程度の水深でも溺れてしまうことがあります。

 

自宅でも浴槽などに少し水をはっているだけだからと油断して、子どものみでお風呂に入れるなどは避けるに越したことはありません。

むしろ1cmでも溺れてしまうということを意識して、子どもを見ておきましょう。

子どもが溺れてしまったときにすべきこと

事故は不意にやってくるもの。

子どもが溺れてしまったとき、保護者はどのような対応を取ればよいのでしょうか?

 

子どもが溺れてしまったときの対応を「意識・呼吸がある場合」「ない場合」で見ていきましょう。

意識・呼吸がある場合

子どもに意識があって呼びかけにもきちんと反応するようであれば、ひとまず休息所などに寝かせます。

体が冷えないよう水分を拭き取り、タオルや毛布などで体を包んでください。

 

意識がある場合でも、溺れたのであれば救急車を呼んだ方が安心です。

子どもに声を掛け続けたり、呼吸の様子を注視したりしながら救急車の到着を待ちましょう。

意識・呼吸がない場合

大きな声で呼びかけても反応がない場合は、すぐに救急車を呼びましょう。

子どもを強くゆすったり衝撃を与えたりするのは避け、顎を上に持ち上げて気道を確保してください。

 

子どもが呼吸していない場合は、心肺蘇生(CPR)が必要です。

周囲の人に頼んで、AED(自動体外式除細動器)を持ってきてもらいます。

 

AEDが到着するまでは胸骨圧迫(きょうこつあっぱく:胸の真ん中を強く圧迫すること)と人工呼吸を繰り返しましょう。

胸骨圧迫のポイント

  • 固い床の上で行う

  • 胸の真ん中を手のひらの根本で強く押す

  • 1分間に100回以上押す

胸骨圧迫は「早く」「強く」が鉄則です。

呼吸が戻るまでは絶え間なく胸部を押しましょう。

強さの目安は「胸の1/3以上が沈むくらい」です。

人工呼吸のポイント

  • 気道を確保した状態で行う

  • 子どもの鼻をつまみながら1秒間息を吹き込む

  • 息を吹き込んだら口を離す

  • 子どもの口が全部隠れるくらいすき間なく覆う

息を吹き込んだとき、子どもの胸が上がっていれば正しく息を送れています。

 

胸骨圧迫を30回したら人工呼吸を2回……という流れを繰り返しましょう。

AEDが到着するまで、手を休めてはいけません。

 

参考:一時救命処置の手順|公益社団法人 日本小児科学会

AEDの操作手順

AEDは、心臓に電気ショックを与えて正常な動きを回復させるための医療機器です。

子どもの呼吸が止まっていたら、ためらわずに使用しましょう。

 

操作手順は以下の通りです。

  • 電源を入れる

  • 電極パッドを子どもの胸に貼る

  • AEDが心電図を解析する(子どもから離れる)

  • AEDの音声ガイダンスに従う

電極パッドを貼り付ければ、AEDが自動で子どもの状態を判断してくれます。

電気ショックが必要な場合は音声で指示されるため、そちらに従いましょう。

 

「ショックボタンを押してください」と音声が流れれば、スイッチを押すだけでOKです。

 

電気ショックを与えた後は、胸骨圧迫と人工呼吸を再開しましょう。

AEDは2分ごとに状況を解析します。

再度電気ショックを指示された場合は、スイッチを押してください。

 

救急車が到着するまで、心肺蘇生とAEDを続けます。

 

参考:AEDを使った救命の仕方|公益社団法人 日本心臓財団

水難事故を起こさないために必要なこと

子どもの水難事故は、保護者の注意と対策で防げるケースがほとんどです。

水難事故を防ぐ上で、必要な対策を紹介します。

実際のところ、川の事故のほとんどは「流れが穏やかな場所」で発生しています。

川に入るときは、ライフジャケットを身に着けるようにしましょう。

 

川の流れは緩急の予測が付きにくく、穏やかに見えるからといって油断はできません。

浅瀬からいきなり深くなったり、川底のくぼみに脚を取られたりすることもあります。

子どもを遊ばせるときは流れに注意し、川岸から離れすぎないように注意してください。

 

万が一、帽子やサンダルが流されてしまっても、子どもには「追い掛けないように」と強く伝えておきましょう。

子どもが急流に飲まれれば、大人でも追い掛けるのが難しいかもしれません。

 

特に、雨天後の川は水が多く流れも早いので大変危険です。

流れを見て「早い」「水が多い」と感じたら、川に入るのは控えましょう。

海で遊ぶ場合は、「遊泳エリア内であること」を確認しましょう。

ライフセーバーがいて、きちんと監視してくれている海岸が安心です。

 

また海岸では、「離岸流(りがんりゅう)」に注意しなければなりません

海で遊んでいる時に「いつの間にか砂浜から離れていた」、「元々いた場所からいつの間にか横にズレていた」という経験はありませんか?

 

離岸流とは、沖に向かう強い流れのこと。引き込まれてしまうと、あっという間に岸から離されてしまいます。

 

離岸流は河口付近、堤防沿い等の人工物付近、岩場などで発生しやすい傾向があるため、親子ともども近づかないようにしましょう。

プール

プールは川や海とは異なり、自然の驚異を心配する必要がありません。

「ルールを守って正しく利用する」「子どもから目を離さない」を徹底すれば、楽しく遊べるでしょう。

 

また小さな子どもの場合、注意したいのは体調です。

保護者の目から見て「おかしいな」と少しでも思ったら、その日はプールを切り上げて早めに自宅で休みましょう。

まとめ

水辺で思い切り遊べるのは、気温が高い夏ならでは。
海や川・プールでのレジャーは、家族にとって楽しい思い出となるでしょう。

ただし、水辺での遊びは常に危険と隣り合わせです。
子どもが水に入った瞬間から、保護者は子どもから目を離さないようにしてください。
水遊び中は、「子どもは静かに溺れる」ということを心に留めておくとよいですね。

子どもの様子を常に注視し、水辺での安全確保に努めながら、水遊びを満喫しましょう。


文/カワサキカオリ

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