冬場のお風呂でヒヤリ! お年寄りだけじゃない、子どもだって油断禁物な【ヒートショック】対策と予防

公開日:2023/01/23

冬場のお風呂でヒヤリ! お年寄りだけじゃない、子どもだって油断禁物な【ヒートショック】対策と予防

寒い季節は、温かいお風呂が恋しいですよね。でも、家の中でも冷え込みや温度差が生じやすいこの時期、お風呂場でクラっとめまいがしたり、立ちくらみをした経験はないですか? それは【ヒートショック】という体の反応です。冬場の入浴時などに起こりやすく、一般的に高齢者は要注意といわれていますが、その仕組みを知ると、実は年齢に関わらず注意が必要であることがわかります。自宅の浴槽内での溺水など不慮の事故を避けるためにも、【ヒートショック】の仕組みを理解して、対策をたてて予防することが大切です。

冬場に危険な【ヒートショック】とは?

【ヒートショック】とは、急激な温度変化で血圧が急上昇・急降下し、脳の血管や心臓に負担がかかること。とくに寒い季節の入浴時に多く、「暖かい部屋→寒い脱衣所や浴室→熱い浴槽」と移動する中で血圧の急変動が起こり、失神、心筋梗塞や脳卒中、脳貧血などを引き起こします。入浴時以外でも、冬場のトイレなどでも起こることがあります。

 

暖かい部屋:身体は体温を下げようとして血管を拡張させる

寒い脱衣所や浴室:身体は体温を維持しようとして血管を急激に収縮させる

熱い浴槽:身体は再び血管を拡張させて体温を下げる

 

急激な気温差を行き来することで、体温調節のために血管は忙しなく収縮・拡張を繰り返します。すると身体に大きな負担がかかるため、血管が破れたり、詰まったりしやすくなります。また、浴槽から急に立ち上がると血圧が下がって失神することがあり、溺れたり転倒のリスクが。お風呂場での【ヒートショック】は発見が遅れやすい傾向があり、事故につながるケースが少なくありません。

【ヒートショック】は交通事故の2倍の死亡者数!? 

一歩間違えて【ヒートショック】に陥ると、冬の浴室は極めて危険な空間に。厚生労働省の調査によると、高齢者の入浴中(浴槽内で)の死亡事故は令和元年時点4,900件で、同じ年の交通事故での死亡者数2,508件に対して約2倍も多くなっています。また、それは 1月をピークに11月~4月の冬季に多く発生しています。その大きな要因となるのが【ヒートショック】なのです。

 

参考:消費者庁ニュースリリース (PDF)

入浴時の【ヒートショック】対策と予防

若者や子どもは、高齢者に比べれば心筋梗塞や脳梗塞のリスクは低いですが、【ヒートショック】によって失神するケースは少なくありません。冬場の入浴時の事故を防ぐため、家族で注意することが大切です。家の中での急激な温度変化をなくすことを含めて、気をつけるべきポイントを5つ挙げます。

①入浴前に浴室や脱衣所を暖める

簡単に浴室を暖めるにはフタをせずに湯船にお湯を張ること。あるいは、入る前に浴室内にシャワーを2、3分かけると湯気が立ち上がり、手軽に暖めることができます。

 

脱衣所やトイレなど気温が下がりやすい場所には、小型のヒーターなどを設置するのがおすすめです。お風呂に入る前に、あらかじめヒーターのスイッチを入れておけば、脱衣所とリビング・浴槽との間に生じる寒暖差を緩和することができます。ただし、脱衣所はタオルや衣類などの可燃物が多いので、火災には十分注意してください。

②かけ湯は念入りに。42度以上の熱いお湯での入浴や、長湯はNG

湯船に入る前に、心臓から遠い手足からたっぷりとかけ湯をし、ゆっくりと肩までつかります。お風呂のお湯の温度は41度以下、つかる時間は10分までを目安にし、長時間の入浴は避けましょう。肩が寒いときは、お湯で温めたタオルをかけることをおすすめします。42度以上のお湯に10分入浴すると体温が38度近くに達します。のぼせてボーッとするなどの意識障害が起きてしまうと、浴槽から出られなくなったり、浴槽内にしゃがみ込んだりしてしまう恐れがあって危険です。

③浴槽から急に立ち上がらない

浴槽から出るときは立ちくらみが起きやすいため、ゆっくりと立ち上がりましょう。入浴中のお湯で身体に水圧がかかっている状態から、急に立ち上がると、身体にかかっていた水圧が無くなり、圧迫されていた血管は一気に拡張します。脳に行く血液が減り、脳は貧血状態になります。血圧が一気に下がりやすくなり、浴槽内に倒れて溺れる危険があるので、手すりや浴槽のへりを使ってゆっくり立ち上がるようにしましょう。

④食後すぐの入浴は避ける

食事をすると、消化器官に血液が集中するぶん、体全体の血圧が低下しやすい状態になります。食後に入浴するなら、最低でも30分以上の間を空けるようにしましょう。また、入浴中は思った以上に汗をかくため、入浴前後に水分をとることも大切です

⑤子どもひとりで入浴中の場合はこまめに様子を見る

【ヒートショック】の恐ろしいところは、静かに意識がなくなっていくこと。小学生になると子どもだけで入浴させる家庭も多いのでは? 同居している家族が気づかずに浴室で命を落とす危険性もあるため、入浴が長いと思ったら様子を見るなど、家族の見守りが必要です。

ヒートショック予報もチェックしよう!

10月〜3月の間に天気予報から想定される「ヒートショック予報」は、標準的な住宅内の温度差などに基づき【ヒートショック】のリスクの目安を「警戒」「注意」「油断禁物」の3ランク、5種類のアイコンでお知らせしてくれるもの。お風呂の前にこの予報を確認する習慣をつけておくと、さらに安心です。

 

参考:ヒートショック予報 – 日本気象協会 tenki.jp

もしも、家族が浴室でぐったりしているのを見つけたら?

① まず浴槽の栓を抜く

② 救急車を呼ぶ

③ 入浴者を引き上げられるようであれば、浴槽内から救出

④ 引き上げられない場合は、お風呂のフタにアゴや上半身を乗せるなど、沈まないようにする

⑤ 浴槽から引き上げられた場合は、肩を叩きながら声をかけ、反応があるか確認

⑥ 呼吸を確認できたら、可能であれば体を横向きの状態にして気道を確保

⑦ 呼吸が無い場合には、胸骨圧迫30回、人工呼吸2回の一次救命処置を繰り返す

 

浴槽のお湯を抜いて鼻と口が水に浸からない状態にさえすれば、少なくとも溺死は防げます。

いざというときのためにも一次救命処置の手順を確認しておきましょう。

 

参考:一時救命処置/こどもの救急

いきむと危険!? 【トイレのヒートショック】にも注意

【ヒートショック】は冬場のトイレでも起こりやすい現象です。トイレでは換気のために窓を開けている家庭も多いかと思いますが、冬場は窓を閉め、冷気を入れない対策をするのが安全です。また、便座の冷たさでも血圧が急変動してしまうため、便座の保温機能を使ったり、便座カバーを活用するなどして、お尻のヒヤッと感を防ぎましょう。

 

トイレでいきむ行為も、血圧を急変動させる要因になります。トイレで息を止めていきんだ瞬間に胸がドキドキしたり、 頭に血が上ってしまった経験はありませんか? 寒さで血圧が上がった状態でいきむことで血圧は急上昇し、【ヒートショック】の危険度を高めてしまいます。無理にいきまずスムーズな排泄ができるように、普段の食事に発酵食品を取り入れるなど腸活を心がけたいですね。

まとめ

寒さが厳しさを増すなか、電気やガス代の高騰&節電の意識から暖房の使用を控えることで、懸念されるのが【ヒートショック】の問題。癒しの空間であるはずのお風呂で、命の危険もある事故につながらないよう、気をつけたい予防と対策を紹介しました。

子ども、とくに乳幼児は体温調節機能が未発達なため、自分で体温をうまく調節することができません。【ヒートショック】はお年寄りの問題と過信せずに、家族で気をつけて冬の危険から身を守りましょう。

文/Ai Kano

こちらのサービスをご利用になるには無料会員登録が必要です

すでに会員の方こちら

初めてご利用の方はこちら

閉じる