旅行も解禁ムードになってきて、「この冬は家族でウィンタースポーツを楽しもう」と考えているご家庭も多いのではないでしょうか?
雪山は魅力的ではありますが、1~3月は雪崩の危険が高まっているので要注意です。
この記事では、雪崩の概要や前兆、さらには雪崩に遭遇したときにどうすべきかをご紹介します。
旅行も解禁ムードになってきて、「この冬は家族でウィンタースポーツを楽しもう」と考えているご家庭も多いのではないでしょうか?
雪山は魅力的ではありますが、1~3月は雪崩の危険が高まっているので要注意です。
この記事では、雪崩の概要や前兆、さらには雪崩に遭遇したときにどうすべきかをご紹介します。
日本は温暖な地域というイメージがありますが、世界的に見て降雪量の多い地域です。
国土の半分以上が「豪雪地帯」に分類されており、特に日本海側では毎年たくさんの雪が降ります。
雪の多い場所は、当然ながら雪崩のリスクも高め。
「雪崩の危険がある」とされている場所は、全国で2万カ所以上にも上ります!
ウィンタースポーツで雪山を訪れる場合はもちろん、雪深い温泉地などに行く際も雪崩には注意しなければなりません。
しかしそもそも、雪崩とはどのようなものなのでしょうか?
雪崩のリスクを知る前に、まずは「雪崩って何?」というところからチェックしてみましょう。
雪崩とは、山の斜面などに積もった雪・氷の一部または全部が肉眼で分かる速さで「なだれ(くずれ)落ちる」現象です。
雪崩が発生した場合、その跡は以下の3つに分類されます。
発生区:積雪が崩れ、動き始めたポイント
走路:雪や氷が滑り落ちていくルート
堆積区:滑り落ちてきた雪や氷が溜まったポイント
また堆積区に積み重なった雪や氷は、「デブリ」と呼ばれるのが一般的です。
「政府広報オンライン」によると、1年のうち雪崩による災害が最も多いのは2月です。
1月、3月もそれなりにリスクが高く、4月になると雪崩の発生は少なくなります。
また雪崩の危険が最も多い箇所は、降雪量の多い北海道や東北地方です。
このほか京都、兵庫、鳥取、島根といった西側の地域にも雪崩危険箇所があり、雪が多い地方全般で雪崩のリスクがあるといえるでしょう。
参考:最大で時速200㎞ものスピードに! 雪崩(なだれ)から身を守るために | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン
雪崩は、すべり面の違いにより「表層雪崩」「全層雪崩」に大別されます。
文字通り、積雪の表面部分が崩れるのが表層雪崩、根こそぎ崩れるのが全層雪崩です。
詳しくは後述します。
また雪崩は、崩れ方の形態によっても分類が異なります。
煙り型:雪煙を上げて崩れ落ちる雪崩。速度が速く高さ数十mになることもある
流れ型:水流状に流れていく雪崩。全層雪崩に多く見られる
混合型:煙り型と流れ型の混合タイプ
雪崩というと、雪煙がもうもうと上がって斜面が崩れていく……というイメージがありますが、必ずしもそうとは限りません。
雪崩は種類によってスピードや被害範囲が異なります。
まずは表層雪崩について詳しく見ていきましょう。
表層雪崩とは、根雪(ねゆき:下積みの雪として雪解けまで残る雪)の上に降った新雪が滑り落ちていく現象です。
気温が低い1~2月に発生しやすく、吹雪や強風の日はより雪崩リスクが上昇します。
また短期間で多量の雪が積もった場合なども、上部の雪が滑り落ちやすいので要注意です。
表層雪崩の速度は、時速100~200km。
ほぼ新幹線と同じですから、かなりの速さといえますね。
スピードがある分勢いはなかなか衰えず、被害が広範囲にわたる傾向があります。
特に注意したいのは、乾いた雪が面で崩れる「面発生乾雪表層雪崩(めんはっせいかんせつひょうそうなだれ)」です。
このタイプの雪崩は、雪煙を上げながらの巨大雪崩となります。
雪崩の走路は数kmに渡ることも多く、被害は甚大です。
全層雪崩とは、滑り面が地面に近い雪崩です。
どのようなものなのか、詳しく見ていきましょう。
全層雪崩とは、地面に降り積もった雪が根こそぎ崩れ落ちていく現象です。
春になって雪が溶けると、雪解け水が地面と雪の間にすき間を作ります。
これにより雪が固まって動き出し、雪崩となってしまうのです。
雪が溶けると、湿った雪が面で崩れる「面発生湿雪全層雪崩(めんはっせいしっせつぜんそうなだれ)」が発生しやすくなります。
この雪崩は、斜面に積もった雪が雪煙もなく流れるように落ちていくのが特徴です。
固く重い雪が地面を削りながら滑り落ちてくため、被害規模は大きくなります。
全層雪崩の雪は固さがあって重く、表層雪崩よりもスピードは遅めです。
とはいえ時速40~80kmほどにはなるので、決して安心してよいわけではありません。
万が一巻き込まれると命に関わります。
雪崩には発生しやすい場所・条件があります。
雪山などに行く場合は、周囲の状況や天候、雪のコンディションなどをきちんと確認するのがおすすめです。
雪崩が発生しやすいのは、急斜面。
特に斜面勾配が30度以上の場所に行くときは注意しましょう。
例えばスキー場の上級者向けコース、「落石注意」などの標識が設置されているところなどは、雪崩のリスクが高いと考えてください。
また低木林だったり植生がまばらだったりするところも、雪崩が発生しやすいといわれます。
バックカントリーでスキーを楽しむ上級者は、地形のチェックを忘れないようにしましょう。
雪庇とは、尾根から雪が張り出している状態です。
雪庇ができているところは、雪がそのまま落ちてくる可能性があります。
雪崩予防柵から雪がひさし状に巻きだれている状態です。
こちらも、張り出した雪がそのまま落ちてくるかもしれません。
雪庇や巻きだれが落ちてボール状になった、雪の塊です。
たくさんあるほど、雪崩のリスクが高まっていると考えられます。
斜面に入った雪の裂け目も、雪崩の予兆の一つです。
気温の上昇により、降り積もった雪がゆるんでいるのかもしれません。
ひび割れが大きくなれば、やがて全層雪崩となります。
雪が平らに積もっているときは、表層雪崩が起きやすくなっています。
一見何ともないような斜面でも、元の地形が分からないほど雪が積もっているときは要注意です。
雪がとけて、斜面の雪がシワシワな状態です。
積雪が少なく雪崩のリスクは少なそうですが、雪は少しずつ動いています。
全層雪崩のリスクが高いでしょう。
どんなに気を付けていても、自然災害を完全に予測することは不可能です。
万が一雪崩に遭遇してしまった場合は、どのように振る舞えばよいのでしょうか?
雪崩の発生が見えたら、なるべく雪崩の端に逃げましょう。
叫びながら走り、周囲の人に気付かれやすいようにすることが大切です。
また雪が迫ってくると、つい伏せたくなりますよね。
しかし、決して伏せてはいけません。
雪の下に埋もれると、自力では抜け出せなくなってしまいます。
荷物を持っている場合は荷物を捨て、素早く逃げてください。
雪に流されているときは、水面に上がるときのように体を上に動かしましょう。
雪の下に沈んでしまうと、助かる確率が下がります。
なるべく上へ上へと泳ぎ、埋もれるリスクを下げてください。
雪崩の流れが止まりそうになったら、両手で顔を覆いましょう。
鼻や口に雪が詰まると、呼吸ができなくなります。
両腕で顔周りをカバーして、呼吸できる空間を作ってください。
雪崩で雪に埋もれてしまうと、体周辺の雪はみっしりと固くなります。
身動きが取れなくなれば、窒息してしまうかもしれません。
日本山岳会によると、雪崩による死因の多くは外傷または窒息だそうです。
雪崩で埋まってしまった場合、18分以内に救助されれば、生存率は91%と高めです。
しかし時間がたつにつれて生存率は下がり、35分後では34%となってしまいます。
雪崩で雪に埋もれてしまったら、とにかく雪の上に体を出すこと。
声が出るなら大声を出し、自分の位置を伝えることも大切です。
雪山登山のリスクを軽減するのが「雪崩ビーコン」です。
雪に埋もれてしまっても、このビーコンを持っていれば自分の位置を周囲に伝えられます。
雪山ツアーなどでは、雪崩ビーコンの携行が参加条件になることもあるのだそうです。
「自分で買うのはちょっと……」という場合は、レンタルも検討しましょう。
国が救助隊を派遣した場合は、捜索に使うヘリコプター等の費用はかかりません。
ただしスキー場などで「時間外に遭難した」「コースの外で遭難した」などの場合は、救助にかかった実費や損害賠償をスキー場から求められることがあります。
また公的機関ではなく民間のヘリをチャーターした場合は、救助を要請した人が全額負担するのが基本です。
会社にもよりますが、救助ヘリコプターのチャーター費用はかなり高額。
「1分間で1万円」などというケースも、珍しくはありません。
このほか救助隊が編制された場合は、隊員への日当、危険手当、宿泊費用等も救助を要請した人が支払います。
救助費用がどのくらいかかるかはケース・バイ・ケースですが、数百万円の請求がくることもあるんですよ!