子ども車内置き去り「2人に1人」経験の誰もが陥る意外な理由とは?春の車内温度は致死レベルへ

公開日:2023/05/19

子ども車内置き去り「2人に1人」経験の誰もが陥る意外な理由とは?春の車内温度は致死レベルへ

2022年12月13日から2023年1月12日までにJAFが行った調査によると、短時間でも子どもを車に残して離れたことのある方は、調査対象の54.9%にも上ることが分かりました。

 

気温が上昇するこれからの季節、わずかな時間でも子どもを車内に残すことは大変危険です。

車内の危険度や熱中症のリスクを知り、子どもを車内に残さないよう注意してください。

本記事では、人間なら誰でもやってしまうある行動と置き去りにしてしまう関係、車内に子どもを放置するリスクや子どもが熱中症になりやすい原因、さらには置き去りを防ぐためにできることをご紹介します。

 

参考:約55%が子どもを車内に残してクルマから離れたことがある!?ゴールデンウィーク、クルマでお出かけの際にはご注意を! | JAF

春先でも車内の温度は短時間で上昇する!

春先は肌寒い日もあり、夏ほど車内への置き去りに危機感を覚えていない方も多いのではないでしょうか。

しかし春先でも、車内の温度はあっという間に危険なレベルに上昇します。

春先の車内温度について、JAFのユーザーテスト(2019年5月8日実施)のデータを元にご紹介します。

 

参考:5月ならまだ大丈夫?車内での熱中症の危険(JAFユーザーテスト) | JAF

1時間でSUVの車内温度は45℃以上に

実験では、大型のSUVと軽ワゴンそれぞれの車内温度がどのように上昇するかがチェックされました。

 

外気温:23.3℃〜24.4℃が外湿度:11~19%という条件下において、車内を閉め切った状態で放置した結果、温度の上昇が激しかったのはSUVです。

1時間後の車内温度について、軽ワゴンが37.5℃であったのに対し、SUVは43.5℃まで上昇しました。

 

車内温度はその後も上昇を続け、約2時間の時点でSUVの最高温度は46.5℃、軽ワゴンの最高温度は39.9℃となっています。

 

SUVの方が高温になりやすいのは、窓が広く大きいことが一因のようです。

 

車内温度について、「普通車より狭く小さい軽の方が熱がこもるから温度が高そう」というイメージを持っている方もいるのではないでしょうか?

ところが実際には、イメージとは逆の現象が起きています。

湿度が高い日は特に注意が必要

JAFが行ったテストでは、異なる車内湿度の車を比較し、暑さ指数(WBGT)による熱中症リスクの検証も行われました。

 

暑さ指数とは、人体と外気との熱のやりとりに注目する指標です。

湿度・日射・輻射(ふくしゃ)といった熱環境・気温を総合的に判断し、熱中症リスクを数値(℃)で表示します。

数値が高いほど熱中症リスクが高く、危険な状態にあるといえるでしょう。

 

「湿度約15%」のA車と「湿度約45%」のB車を放置した結果、暑さ指数が早く上昇したのはB車です。

同じ気温でも、A車の暑さ指数が「注意」レベルの22.9℃であったのに対し、B車は「厳重警戒」の30.9℃となりました。

 

湿度が高い日の置き去りは、特に熱中症リスクが高いと考えましょう。

 

参考:環境省|熱中症予防情報サイト 暑さ指数とは?

「車内に子どもを置き去りにするリスク」について大人が理解しておくべきこと

「子どもを起こしたくない」「短時間で戻るのに、チャイルドシートの付け外しは面倒」……、大人はさまざまな理由で、子どもを車内に残して行ってしまうことがあります。

 

しかし特に気候のよい日中に子どもを車内に残すことは大変なリスクが伴うことは先ほどお伝えした通りです。

ここからは車内の置き去りについて、大人が理解しておくべきことをご紹介します。

日除け程度では車内温度の上昇は防げない

フロントガラスにサンシェードを置いたり窓を開けたりしていれば、車内温度の上昇を緩やかにできると思っていませんか?

 

JAFが2012年8月に行ったテストによると、これらはほぼ効果がないことが分かっています。

何もせずに放置した場合の最高車内温度は黒い車で57℃、白い車で52℃でした。

 

一方サンシェードを置いた場合でも車内の最高温度は50℃、窓を空けていた場合でも45℃です。

少しばかり対策をしたからといって、車内放置が危険であることに代わりはありません。

 

参考:車内温度/夏(JAFユーザーテスト) | JAF

そもそも子どもは熱中症になりやすい

子どもは大人と比較して、体温調節機能が未発達です。

温度の影響を受けやすい特徴もあり、大人よりも熱中症リスクが高いといわれます。

 

また子どもは体の約70%が水分で構成されており、大人よりも水分量が多めです。

体温よりも気温が高くなると熱を吸収しやすく、体内に熱がこもってしまいます。

 

大人よりも脱水症状の危険が高く、熱中症になるとあっという間に重症化してしまうケースが少なくありません。

 

子どもの体を考えれば、わずかな時間でも暑い車内に放置することは非常にリスクが大きいことなのです。

 

参考:こんな人は特に注意!「子ども」 | 熱中症ゼロへ|一般社団法人 日本気象協会推進

春は特に熱中症リスクが高い

春の熱中症リスクが高いといわれるのは、「暑熱順化(しょねつじゅんか)」ができていないためです。

 

暑熱順化とは、体が少しずつ暑さに慣れることをいいます。

暑熱順化ができていれば発汗量や皮ふの血流量が増加し、体内に熱をこもらせにくくなるのだそうです。

 

春から初夏は気温の高い日もありますが、そうでない日もあります。

体は暑さに慣れにくく、準備ができていません。

5月の暑い日や梅雨の晴れ間などは、熱中症リスクが高いといえるでしょう。

 

特に未成熟な子どもの体は、ただでさえ暑さへの耐性が低めです。

「まだ暑くないし」などと油断せず、車内に子どもを放置しないようにしてくださいね。

 

参考:暑熱順化 | 熱中症ゼロへ|一般社団法人 日本気象協会推進

置き去りは親の不注意とは言い切れない誰もがやってしまうある行動

車内への子どもの置き去り事故をニュースで見ていると、「保育園に預けたと思っていた」、「乗せているのを忘れていた」などの理由を述べていることが多く見られます。

 

これだけを見れば親の不注意だと思いますが、どうやらそれだけではないようです。

誰にでも起こる記憶障害

南フロリダ大学で認知科学と神経科学を専門とするデビッド・ダイアモンド氏によると、誰もが子どもを車内に置き忘れる可能性があるとのことです。

 

ルーティンと違う行動を取ることは日常的にあり得ます。

例えば、家の鍵をいつもと違うところに置いたことによりどこに置いたか分からなくなったという経験をお持ちではないですか?

 

同じように子どもが保育園に行くようになり、いつもの運転ルートと違うルートを使ったり、2人目の子どもが生まれて一緒に連れて行くことになったりなど、通常と異なる行動が加わると新しく加わった記憶が欠如してしまうことが発生するのです。

 

上記の例でいうと、2人目を連れて行くことになったが、1人目をいつも通り送り届けた後、いつも通りそのまま会社に向かってしまうというようなことです。

 

さらに、会社に着くといつも通り仕事を始めてしまい、2人目を乗せていたことはなかなか思い出すことができません。

 

このことは、特に「ストレスが多い」「睡眠不足」という2つの要素が重なった時に多く発生するそうです。

この2つの要素によって人は習慣的な行動をする可能性が高くなり、意識的な記憶システムの低下を引き起こす、つまり、ルーティン以外の記憶を忘れてしまいやすくなるとのことです。

 

事実、冒頭でお伝えしたJAFの調査でも2人に1人が「子どもを置き去りにしたことがある」ということが、誰にでも起こり得ることを物語っています。

 

これを単に親の不注意と言ってしまうのは簡単ですが、明日は我が身と思って行動しなければいけません。

 

また、この後紹介する予防策もしっかり行い、意識的な記憶システムを無理やり呼び起こしましょう。

 

参考:Cognitive and Neurobiological Perspectives on Why Parents Lose Awareness of Children in Cars

置き去りによる事故を防ぐためにできること

「ついうっかり」が重大な事故につながることがあります。

子どもを車内に放置しないよう、日頃から置き去り対策を徹底しておきましょう。

 

大人がすべき対策・子どもに教えておきたい対策をご紹介します。

子どものそばに貴重品を置く

大人の「ついうっかり」をなくす上でおすすめなのが、子どものそばに荷物や貴重品を置くこと。

車を降りる際に必ず後ろを向くことになるため、置き去りのリスクを減らせます。

 

子どもと一緒にいるときでも、大人が課題やトラブルを抱えていると子どもから気が逸れてしまうことがあるかもしれません。

置き去り事故をなくすには、大人がどのような状況にあっても、必ず子どもに意識が向くようにすることが必要です。

家族に連絡する決まりを作る

「子どもを幼稚園や保育園に預けたとき・自宅に連れて帰ったときは、パートナーに連絡を入れる」という決まりを作りましょう。

子どもの状況を夫婦間で共有しておけば、異変があれば気付けます。

大事になる前に手を打ちやすくなるはずです。

 

送迎のたびにメッセージをやりとりするのは面倒くさい……という方は、スタンプを送るなどで構いません。

ただし「予定時刻の○分以内に連絡がない場合は、相手に確認する」などと決めておくことは必須です。

子どもにクラクションの鳴らし方を教えておく

クラクションは、子どもが適当に押しても鳴りません。

園バスを利用するご家庭は、子どもにクラクションの鳴らし方を教えておきましょう。

 

クラクションを上手に鳴らすポイントは、「強い力で」「正しい位置を」押すことです。力が弱く音を出せない子どもには、水筒を使って押すことなどを教えてください。

またこのとき、「人が来るまで、ずっと押すこと」も忘れずに伝えましょう。

2023年4月からは送迎バスにおける安全装置の設置が義務化!

痛ましい置き去りの事故を受け、2023年4月からは幼稚園や保育園の送迎バスについて、安全対策を徹底することが義務付けられました。

 

政府からは安全対策マニュアルが示されたほか、送迎バスに安全装置を設置することも義務化されています。

 

政府が認定している安全装置の種類は、「自動検知式」「降車時確認式」の2つです。

 

自動検知式は、確認のヒューマンエラーをなくすためのシステム。

送迎バスがエンジンを停止した後、センサーが車内の状態をチェックします。

万が一園児が残っていた場合はセンサーが反応し、大音量で外に知らせる仕組みです。

 

一方降車時確認式は、運転手などに確認作業を促すためのシステム。

エンジンが止まるとバス後方にあるブザーが鳴り、手動で押すまで止まりません。

運転手は必然的にバス全体をチェックすることになり、置き去りを防止できるというわけです。

 

安全装置の義務化により、保護者も安心して園バスを利用しやすくなるのではないでしょうか。

 

参考:こどものバス送迎・安全徹底マニュアル|内閣府

 

■幼稚園・保育園の送迎バスへの安全装置設置をお考えの方は、株式会社フレーベル館貴園営業担当者までご連絡ください。

営業担当者がご不明な場合は、下記までお問い合わせください。

【株式会社フレーベル館営業推進チーム】

TEL:03-5395-6608

 

まとめ

春でも気温の高い日は車内が高温になります。
「少しくらいいいだろう」と油断せず、子どもを車内に残さないよう注意しましょう。

20℃前後の爽やかな気候でも、日射しが強ければ車内が40℃近くになることもあります。
「子どもは体温調節機能が未発達」ということを常に頭に置き、熱中症リスクが高いことを忘れないようにしてください。

これからますます気候がよくなって、お出掛けも増えていくかもしれません。
家族みんなが不安なく、楽しく過ごせるよう、ご家庭で「置き去りリスク」を共有しておくのがおすすめです。


文/カワサキカオリ

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