【妖怪と幽霊】の違いって? 怖いけど惹かれる“おばけ”の世界

公開日:2023/08/25

【妖怪と幽霊】の違いって? 怖いけど惹かれる“おばけ”の世界

昔から絵本やアニメによく登場する、“おばけ”や“妖怪”。妖怪のアニメといえば、『ゲゲゲの鬼太郎』や『妖怪ウォッチ』が有名ですよね。我が家の子どもたちが今、夢中で読んでいる本は『おばけずかん』シリーズです。子どもにとっておばけや妖怪は、意外にも親しみやすい存在なのかもしれません。そこで今回は夏らしく、おばけや妖怪について、それぞれの違いや歴史、代表的な妖怪などを詳しく掘り下げてみたいと思います。

おばけと妖怪の違いって? 幽霊とは違うの?

夏の風物詩といえば、怪談。背筋も凍る怖~い話で暑さを忘れるのも一興ですが、怪談によく登場する“おばけ”や“妖怪”、はたまた”幽霊”って、いったいどう違うのでしょうか?

おばけとは

まず言ってしまうと、“おばけ”とは、幽霊や妖怪などの得体の知れない怪しげなものの総称です。「おばけカボチャ」や「おばけキュウリ」というように、通常より大きく変化した実在するものに対しても使われます。“妖怪”と”幽霊”は明確に違うので、詳しく解説します。

妖怪とは

妖怪とは、人間の理解を超えた奇怪な現象や、それらを起こす不思議な力を持つ非日常的・非科学的な存在のこと。「妖(あやかし)」「物の怪(もののけ)」などとも呼ばれています。主に人間以外の動物や物から変化したもので、特定の場所に現れて、誰でも見境なく脅かすとされています。

 

古くから日本では、自然物にはすべて精霊が宿っていると信じられてきました。人の力の及ばない自然災害などは、畏怖の念が具現化された“人間を超越した存在”として、説明されてきたと考えられています。民間伝承や文学作品などでも昔から描かれていて、なかでも鬼、河童、天狗は「日本三大妖怪」と呼ばれています。

 

妖怪は時をあまり選ばず出現するようですが、多いのは黄昏時だといわれています。「黄昏」を古くは「誰そ彼」といい、誰かいそうだけれど薄暗くてわからないので、「あれは誰だ」と問う様子からきています。妖怪(魔物)に逢いそうな時間ということで、「逢う魔が時」とも呼ばれています。

 

【遭遇するとされる場所】山、川、海、道、古い屋敷など

【遭遇するとされる時間】黄昏時に多い(薄暗くなった夕方、午後5時から午後7時頃)

幽霊とは

幽霊とは、死んだ人の霊が現れたもので、この世に未練があるため成仏できず、あの世に行けずにさまよう霊(魂)が、生前の人の姿になって現れたものとされています。四谷怪談のお岩さんなどはイメージ通り。額に白い三角の布をつけ死装束をまとった、足のない女性が描かれることが多く、そのほかにも戦地だった場所に兵隊さんの姿が現れたり、亡くなった親族が枕元に現れたりなんていう話も聞きます。この世に残した思いを聞いてあげて、安心させることで姿を消すとも言われています。

 

また、昔から、幽霊が出やすい時間は、「草木も眠る丑三つ時」と言われています。「丑三つ時」というのは、真夜中の午前2時から2時半頃をさします。丑三つ時を方位にあてはめると、鬼門である丑寅の方角になるため、霊界の門が開くと考えられ、幽霊は丑三つ時に出ると信じられるようになりました。

 

【遭遇するとされる場所】因縁のある人物の前や、因縁のある場所

【遭遇するとされる時間】丑三つ時(真夜中の午前2時から2時半頃)

日本の妖怪の歴史

『百鬼夜行』(鳥山石燕 画)より
獺(かわうそ)/河童(かっぱ)
出典 : 国立国会図書館ウェブサイト

 

妖怪が登場したのは、奈良時代の歴史書『古事記』や『日本書紀』が初めと言われています。ヤマタノオロチ(大蛇の妖怪)や鬼などが登場し、当時の妖怪は神が堕落して恐ろしい姿に変化したものとして描かれました。逆に、妖怪を神として祀る神社もあり、神と妖怪は表裏一体の存在とされてきたと言えます。また、平安時代に編纂された『今昔物語集』には怪異にまつわる説話も多く収録されています。

 

中世(鎌倉時代〜室町時代)には妖怪の絵巻物が刊行され、それまで文章でしか表現されなかった妖怪の姿が、絵で表現されるようになりました。中でも妖怪たちが行列をなす様子を描いた「百鬼夜行図」は当時の代表的な作品です。

 

江戸時代に入ると、多数の妖怪画絵巻や、妖怪をモチーフとした浮世絵が描かれます。親しみのある「キャラクター」として描かれることも多くなり、現在のような妖怪のイメージが形成されていきました。

日本の伝統的な妖怪

頭には角、口には牙を生やした恐ろしい姿で、赤や青の体に金棒を持っているイメージ。古代から物語や伝統芸能の題材にも頻繁に登場し、仏教との関連から、地獄の番人として描かれることも多い。

河童

水辺に棲むとされる妖怪。子どものような姿をしていて、全身が緑色で水かきを持ち、頭の上には水の入った皿が乗っている。皿が乾いたり、割れてしまうと死んでしまうと言われている。いたずら好きで、水辺にいる人を水中に引き込んだり、相撲をして負けると尻子玉(しりこだま)と呼ばれる肝(魂)を抜かれたりするという言い伝えがある。

天狗

山奥に棲む妖怪で、山伏のような姿に真っ赤な顔と長い鼻が特徴。羽うちわを持って空を飛ぶ様子がよくイメージされます。中国の古い伝説が、日本の信仰と合わさって生まれたと言われ、平安時代末期に活躍した武士・源義経は、鞍馬山の天狗に武術を教わったという逸話が有名です。

座敷わらし

古い日本家屋などに現れる子どもの姿をした妖怪。座敷わらしが現れた家は繁栄すると言われていていて、東北地方には座敷わらしが現れるという有名な宿があるそうです。

ろくろ首

古典の怪談や妖怪画の題材としてよく取り上げられる妖怪。普通の人間の姿をしていますが、首が異様に長く伸びて、見る人を驚かせます。

アマビエ

ほかにも、一つ目小僧や子泣き爺、海坊主など、おなじみの妖怪はいますが、最近ではコロナ禍においてSNSなどで注目を集めた妖怪「アマビエ」がいます。江戸時代、熊本の海に現れ、向こう6年の豊作と疫病の流行を予言し、「疫病が流行ったらわたしの写し絵を早々に人々に見せよ」と言って海中に姿を消した、鳥のようなクチバシを持つ半人半魚の妖怪と言われています。

妖怪データベースを使ってみよう!

国際日本文化研究センターが所蔵する絵巻物などに描かれた“妖怪”の画像を検索できるサービス「怪異・妖怪画像データベース」では、江戸時代〜明治時代に描かれたものを中心に、約4,300件もの画像データを見ることができます。妖怪の名前から画像を調べられるほか、「すがた」や「いろ」などといった特徴からも検索することができます。眺めているだけでなかなか面白いので、ぜひチェックしてみてください。

 

怪異・妖怪画像データベース(国際日本文化研究センター)

日本の幽霊の歴史

幽霊の歴史の始まりも、妖怪と同じく、日本最古の歴史書と言われる奈良時代の『古事記』からと言われていて、死者が行く黄泉の国の存在が描かれています。平安時代初期には、幽霊が悪霊として描かれるようになり、室町時代以降になると、能や歌舞伎のテーマとしても扱われるようになりました。

 

江戸時代に入ると、幽霊の存在は一気にポピュラーなものに変わっていきます。江戸時代以前から存在していた怪談は、「怪談噺」として落語の演目となり、庶民の間で大流行。『雨月物語』や「四谷怪談」といった名作と言われる怪談は、この頃に確立されたと言えます。

 

さらに、幽霊は当時流行した浮世絵や水墨画でもその姿が描かれるようになります。なかでも江戸時代初期の画家・円山応挙の描いた、髪を乱して青ざめた顔に白装束の幽霊画は、現在の「幽霊のイメージ」の典型となっています。日本の幽霊は「足がない」イメージがありますが、これも円山応挙の幽霊画に足が描かれていなかったためと言われています。


まとめ

“おばけ”や“妖怪”について、知っているようで意外と知らなかったことも多いのではないでしょうか。昔の書物や伝承から、現代の絵本やアニメに至るまで、形を変えながらも人々を怖がらせたり、楽しませてきたその存在は、まさに日本の伝統文化! 

お盆を過ぎてもまだまだ暑い日々が続くので、親子で“おばけ”や“妖怪”の不思議な世界に触れてみてはいかがでしょうか。

文/Ai Kano

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