近年は地球温暖化の影響からか、強い勢力の台風が日本列島を直撃しています。
8~10月まではいわゆる「台風シーズン」に該当するため、今後も台風の発生には要注意です。
この記事では、台風が発生するメカニズムや大きさ・強さの基準をご紹介。
台風の進路予測が難しい理由や名前の由来もお伝えするので、併せてチェックしてみてくださいね。
近年は地球温暖化の影響からか、強い勢力の台風が日本列島を直撃しています。
8~10月まではいわゆる「台風シーズン」に該当するため、今後も台風の発生には要注意です。
この記事では、台風が発生するメカニズムや大きさ・強さの基準をご紹介。
台風の進路予測が難しい理由や名前の由来もお伝えするので、併せてチェックしてみてくださいね。
ニュースなどで「台風が発生しました」「台風に変わりました」などのアナウンスを聴くことがあります。
そもそも台風とはどのようなものなのでしょうか?
気象庁によると、台風の定義は以下のとおりです。
“熱帯の海上で発生する「熱帯低気圧」のうち、北西太平洋または南シナ海に存在し、なおかつ低気圧域内の最大風速(10分間平均)がおよそ17m/s(34ノット、風力8)以上のもの” |
すなわち北西太平洋または南シナ海上で発生した熱帯低気圧のうち、規模が大きくなったものが「台風」と呼ばれます。
参考:気象庁|台風とは
台風・ハリケーン・サイクロンは、基本的には同じものです。
名前の違いは、地域の呼び方の違いに過ぎません。
日本を含む北西太平洋・アジア(北半球の東経100度から180度):台風、タイフーン
アメリカ(東経180度から東):ハリケーン
その他の地域(インドやオセアニアなど):サイクロン
また、日本では17m/s以上を台風と呼びますが、国際分類では33m/s以上となります。
※厳密には小数点以下まで風速が定められています
なお台風・ハリケーン・サイクロンの回転方向は、北半球と南半球で異なります。
日本を含む北半球の台風やハリケーンは「反時計回り」に回っていますが、南半球のサイクロンは「時計回り」です。
これは「コリオリの力」が働くためです。
ここでは詳しく述べませんが、気になる方は調べてみてくださいね。
台風はどのような状況で発生し、消えてしまうのでしょうか?
台風発生や消滅の原因さらには、台風の予測が困難と言われる理由をご紹介します。
台風が発生するためには「海水温が高いこと」「気流が発生していること」が必要です。
台風は、海面からの水蒸気をエネルギーとして発達します。
台風になるまでには非常に多くの水蒸気を必要とするため、水が水蒸気に変わりにくい冷たい海では発生しません。
台風が発生するのに必要な海面の水温は、27℃以上といわれています。
海面から湧き上がった水蒸気が雲状になったものが、強い上昇気流を持つ「積乱雲」です。
積乱雲がいくつも発生して合体すると、中心部に気圧の低い「ウォームコア(暖気核)」と呼ばれる核が発生します。
暖かい空気は中心部にどんどん流れ込んでいき、強い渦巻状の風を発生させるのです。
中心部の気圧が低いほど、暖かい空気が集まりやすくなります。
そのため中心気圧が低い台風は、より勢力が強い傾向にあります。
台風情報で「中心気圧は950ヘクトパスカルです」などと言われるのを聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?
このヘクトパスカルが、気圧を表わす単位です。
数値が低いほど、強い台風であることを意味します。
一般的な台風の気圧は、950ヘクトパスカル前後。
特に強いといわれる台風の場合は、930ヘクトパスカルくらいになります。
900ヘクトパスカルを下回る台風は、かなり猛烈な台風です。
日本に近づくと台風が弱まったり消えたりするのは、台風の動力源である水蒸気が供給されなくなるためです。
赤道から離れるほど海面の水温は低くなり、水蒸気の発生が少なくなります。
加えて台風が日本列島に上陸すれば、海からのエネルギー供給は受けられません。
そのため、台風は形を維持できず、弱体化します。
また、海上の波・風も、台風の成長を妨げる原因の一つです。
熱帯低気圧が発生しても、海上の波・風が勢いを削ぐケースが少なくありません。
台風になるまでには至らず、弱い勢力のまま消滅することもあります。
台風の進路に影響するものはさまざまありますが、特に大きいといわれるのが「偏西風」と「高気圧」です。
偏西風とは、地球の周りを西から東に向かって吹く風です。
日本付近の上空にも吹いていて、低気圧や高気圧を移動させます。
台風も偏西風の影響を受けやすく、偏西風の吹き方によって進路が複雑に変化します。
また上空に高気圧があると、台風はまっすぐ進むことができません。
高気圧の張り出し方によっては、台風の動きが読みにくくなります。
2023年の夏は、不思議な進み方をする台風が多かった印象です。
これは偏西風がいつもより北寄りに吹いていた上、蛇行した吹き方になっていたことが一因となったといわれています。
台風が発生すると、「強い台風」「非常に強い台風」「猛烈な台風」または「大型の台風」「超大型の台風」などといわれます。
台風の強さや大きさの基準となるのは、「風速」「風の強い範囲」です。
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
台風の強さを示す階級は、台風の中心付近の最大風速(m/s)を基準に定められています。
強い | 33m/s以上~44m/s未満 |
非常に強い | 44m/s以上~54m/s未満 |
猛烈な | 54m/s以上 |
とはいえ、数字だけではピンとこないかもしれませんね。それぞれの数値について、以下を参考にしてみてください。
30m/s | 風に向かって歩けない。看板が落下したり、細い木の枝が折れたりすることがある |
40m/s | 電柱や電灯が倒れる恐れがある。屋根瓦が飛ぶことがある |
50m/s | 屋外で行動できない。走行中の車が横転する |
風速10m/sでも傘がさせないレベルですので、30m/sましてや50m/sともなるととても危険なことがお分かりいただけるかと思います。
ちなみに観測史上最大の風速は1966年9月5日に宮古島を襲った台風18号でその最大瞬間風速はなんと85.3m/sだそうです。
↓は30、50、80m/sでの実験映像です。
台風の大きさは、「風速15m/s以上の半径がどのくらいあるか」で判断されます。
大きい(大型) | 500km以上~800km未満 |
非常に大きい(超大型) | 800km以上 |
こちらも数字だけではピンときませんが、「大きい(大型)」台風は、強風域の円が本州の大半を覆うくらいの大きさです。
さらに「非常に大きい(超大型)」台風になると、強風域の円が北海道から九州にまで広がります。
ニュースなどを見ていると、台風の大きさが円で記されていることに気付きます。
これは「予報円」といわれるもので、台風の大きさや強さを示すものではありません。
予報円は、台風の進路の可能性を示しています。
円が大きいということは「どこに行くか予測しにくい」ということ。
反対に円が小さい場合は、予測の信頼性が高いということです。
発生した台風には、それぞれ番号・名前が付けられています。
台風の番号や名前の付け方について見ていきましょう。
台風の番号は、その年の1月1日を起点として、発生順に付けられます。
一つの台風につき与えられる番号は一つのみです。「一度消滅したけれど、また復活して台風になった」などの場合でも、新しい番号は振られません。
台風委員会とは、アジア太平洋経済社会委員会とWMO(世界気象機関)によって設立された国際組織です。
日本を含む14の国や地域が加盟しており、北西太平洋または南シナ海で発生する台風の観測と災害防止を主旨としています。
台風委員会では、2000年以降、地域内で発生した台風について加盟国が提案する名前を付けることを定めました。
2023年時点で、名前のリストは140あります。
日本が提案しているのは、以下の10個です。
「特定の名称や商標を侵害しない」「天空に関係する」などの理由から、星座をベースにした名前が選ばれています。(2023年時点)
コイヌ
ヤギ
ウサギ
カジキ
コト
クジラ
コグマ
コンパス
トカゲ
ヤマネコ
大きな災害をもたらした台風に付けられた名前は、以後使用しない決まりです。
使用禁止となった名前に代わり、新しい名前が追加されます。
ちなみに2023年1~9月までに発生した台風は、13個。
それぞれの名前は、以下のとおりです。
このうち台風8号は、180度経線を越えてやってきたアメリカの台風です。
台風委員会の定める名称ではなく、アメリカで付けられた名前が適用されています。
なお名前リストの5番目は、日本が提案した「コイヌ」。
14号が発生した場合は、日本の名称が使われることとなるでしょう。
夏や秋は多くの台風が日本にやってきます。
南の海上から発生した台風はなぜかカーブを描いて日本に向かってきますよね。
その理由を簡単に説明します。
夏や秋は太平洋高気圧が発達し、そこには時計回りの風が発生します。
加えて偏西風の逆バージョンの貿易風(偏東風)が存在します。
これにより台風は北西へと進んでいきます。
すると今度は偏西風が存在しますので、それにより東へと台風が移動させられるため、カーブを描いて日本を通過していくことになるのです。
春や冬は太平洋高気圧が後退していますので、高気圧にブロックされながら進んだ台風は日本の東海上や中国大陸へと移動するため、日本に上陸することはあまりないのです。