昨今、子どもの誤飲による痛ましい事故が多発しています。
子どもの誤飲は、思いがけないときに発生するもの。
小さな子どもがいるご家庭は、誤飲のリスクや対策について再確認しておくと安心です。
この記事では、子どもの誤飲事故の現状や事例・必要な応急処置についてまとめました。
子どもの誤飲事故を防ぐための対策もご紹介しているので、ぜひ詳細をチェックしてみてくださいね。
昨今、子どもの誤飲による痛ましい事故が多発しています。
子どもの誤飲は、思いがけないときに発生するもの。
小さな子どもがいるご家庭は、誤飲のリスクや対策について再確認しておくと安心です。
この記事では、子どもの誤飲事故の現状や事例・必要な応急処置についてまとめました。
子どもの誤飲事故を防ぐための対策もご紹介しているので、ぜひ詳細をチェックしてみてくださいね。
まずは、実際にどのような窒息事故が発生しているのかを見ていきます。
2023年、保育園でのおやつに出たすりおろしリンゴを食べた生後6ヵ月の子どもが死亡した事故です。
服や口の周りが汚れたため、着替えさせようと仰向けに寝かせた数秒後に顔色が悪化、意識を失い、そのまま死亡しました。
同じように生後8ヵ月の子どもがサイコロ状(1辺が数mm)にカットされたリンゴを食べている時に顔が青ざめて意識を失い、重体となっているそうです。
2021年、小学5年生の子どもが給食で提供された米粉パンを喉に詰まらせたとして死亡した事故です。
どのように食べていたかが分からないという事例ですが、パンの大きさとしては、長さ約12㎝、厚さ約4㎝というもので、その半分ぐらいを食していたようです。
その他、生後10ヵ月の子どもが縦約2.5cm×横約3.5cm×厚さ約2.0cmのカットパンを丸々飲み込もうとして窒息し死亡する事故も発生しています。
2013年、2歳6ヵ月の子どもが直径約3cmのブドウを詰まらせる事故が発生しました。
子どもは泡を吹いて意識消失したものの、通行人の応急処置によりブドウの摘出に成功。
一命は取り留めたものの、病院に救急搬送されたそうです。
小学1年生の子どもが給食で提供されたおでんに入っていたうずらの卵を喉に詰まらせて死亡した事故です。
こちらは2024年2月下旬に起こった最近の事故で、これだけ様々な窒息事故があっても未だに発生し続けていることが分かります。
2016年、9ヵ月の赤ちゃんが加熱式タバコを誤飲した事例が報告されています。
赤ちゃんは誤飲後1時間で顔色不良となったものの、胃洗浄によって回復したそうです。
2013年、1歳8ヵ月の女児が保護者の抗不安薬を誤飲して救急搬送されました。
症状は軽症でしたが、胃洗浄などを受けた後、経過観察のための入院措置が取られたそうです。
2019年のボタン電池誤飲事故では、ボタン電池を飲み込んだ1歳児が集中治療室へ入院する事態となりました。
子どもは内視鏡的摘除術を受け、ボタン電池を取り出すことができたそうです。
2018年、3歳児が複数のボール状のマグネットを飲み込んでしまった結果、胃と小腸を穿通してしまったという事故です。
その他にも11歳の子どもが同じようにマグネットを飲み込み小腸と大腸で磁石同士がくっつき腸に穴が開いてしまう事故も起きています。
2014年、1歳児がミニカップゼリーを自分で食べたがったため、兄と一緒に自分で食べさせていたそうです。
その間、母がキッチンで家事をしていたところ、子どもが咳をし、顔色が悪く、横になっているのを発見。
その後すぐに誤嚥を疑い、吐き出させたところミニカップゼリーの容器が出てきたそうです。
容器は2.5㎝×4.8㎝ほどの大きさだったとのことです。
続いて、子どもの誤飲事故の現状について見ていきましょう。
2022年に消費者庁消費者安全課が発表した「子どもの不慮の事故の発生傾向」によると、「不慮の事故」で亡くなった子どもの多くが誤嚥や誤飲を原因としていることが分かりました。
特にこの傾向は、3歳までの乳幼児で顕著です。
乳幼児は食べもの・そうでないものの区別が付きません。
子どもの様子をしっかりと注視し、誤嚥・誤飲のリスクを低減することが大切です。
厚生労働省が発表した「2018年度 家庭用品等に係る健康被害 病院モニター報告」によると、子どもの誤飲事故で多かったのは「タバコ」「医薬品」「食品」などでした。
子どもの誤飲事故の原因を見ていきましょう。
参考:2018年度 家庭用品等に係る健康被害 病院モニター報告((別添)家庭用品等に係る健康被害 病院モニター報告の概要)|厚生労働省
2018年度の調査では、子どもの誤飲事故のうち20.8%がタバコを原因とするものでした。
この数字には、タバコそのものを口にしてしまったケースはもちろん、吸いがらを誤飲したケース、吸いがらを浸した水を誤飲したケースも含まれます。
タバコに含まれるニコチンは毒性が強く、子どもなら紙タバコ約1本分、加熱式タバコ約4.5cm分のニコチン(10~20mg)で死に至る可能性があるのだそうです。
特に危険なのはタバコを浸した水や濡れたタバコを誤飲したケースで、高濃度のニコチンがそのまま子どもの体内に吸収されるリスクがあります。
医薬品・医薬部外品の誤飲は、1~2歳の子どもに多く見られます。
事例としては、以下のものがあります。
口にした薬の成分によっては、深刻な健康被害を受ける恐れがあります。
ボタン電池はおもちゃなどに使用されているため、ボタン電池の誤飲事例も多く見られます。
消費者庁が2020年に実施した調査では、2015年から2019年までに「ボタン電池を誤飲した」「誤飲の疑いがある・鼻に詰めた」などの事例が248件報告されました。
誤飲した子どもは、大半が3歳以下。
中でも1歳児が最も多く、ボタン電池の誤飲事故は116件に上っています。
ボタン電池の誤飲が恐ろしいのは、窒息だけではなく「化学やけど(化学熱傷)」の危険があることです。
誤飲に気付かずに放置すると、子どもの食道や胃が損傷し穴が開くリスクがあります。
食品による誤飲は、「子どもの食べる力不足」「食品の特性」によって引き起こされます。
子どもが前歯で食品を噛み切ったり歯ぐきでつぶしたりできるようになるのは、離乳完了期(生後12~18ヵ月頃)になってからです。
与える食品は、子どもの発育に合わせて慎重に選ぶ必要があります。
子どもは3〜4歳頃になると乳歯列が完成するといわれますが、まだ大人ほど強く噛むことはできません。
噛みにくいものは丸飲みしてしまう傾向があり、歯が生えそろったからといって油断は禁物です。
子どもは咳をする力も弱いため、気道に入った食品を押し出せずそのまま窒息してしまう可能性があります。
子どもが誤飲しやすい食品には、以下のものがあります。
参考:食品による窒息 子どもを守るためにできること|公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY
子どもは思いもよらないものを口にすることがあり、誤飲事故の事例は枚挙に暇がありません。
これまで挙げたタバコや医薬品・ボタン電池・食品のほか、以下のものの誤飲事故も報告されています。
このほか食品では、豆・ナッツ類は「気管支に入りやすい危険な食材」とされています。
5歳を過ぎるまでは、子どもに与えるのは控えましょう。
子どもが誤飲してしまったら、状況に合わせた対応が必要です。
必要な応急処置について、状況別に見ていきましょう。
子どもが窒息状態になると5分以内に呼吸が止まり、15分で脳死状態となることがあるそうです。
異物が喉に詰まったときはすぐに救急車を呼び、原因となったものを吐き出させましょう。
応急処置には、以下の方法があります。
背部叩打法:手のひらで子どものあごを抑え、背中を強くたたく(5~6回が1セット)
胸部突き上げ法:片手で子どもの体を支え、心肺蘇生法と同じやり方で胸部を圧迫する(5~6回が1セット)
腹部突き上げ法:子ども背後から両腕を回し、片方の手を握りこぶしにして子どものみぞおちに当てる。両手で腹部を上に圧迫する(1歳以上)
消防署や日本赤十字社では、もしものときのための講習会を行っています。
窒息の対処法について詳しく知りたい方は、参加してみるのもおすすめです。
参考:「えっ?そんな小さいもので?」子供の窒息事故を防ぐ! | 政府広報オンライン
また、東京消防庁では窒息時の応急処置方法を動画で公開していますので、合わせてチェックしてみてください。
上記の他、以下から小児や成人に有効な方法も動画で見れますのでこちらもチェックしてみてください。
タバコを誤飲してしまった場合は、すぐに口の中からタバコをぬぐい取ってください。
このとき注意したいのは、水を飲ませないこと。
タバコのニコチンが溶け出し、被害が深刻化する恐れがあります。
誤飲が少量であれば、慌てる必要はありません。
1日経っても顔色や呼吸に変化がなければ、大丈夫だと判断できます。
どうしても不安でモヤモヤしてしまう場合は、病院に相談しましょう。
一方タバコを1/4以上食べた・タバコを浸した水を飲んだなどのケースでは、早急な胃洗浄が必要となります。
ためらわず、早急に医療機関に足を運んで下さいね。
医薬品を誤飲した場合、「何を飲み込んだか」の特定が重要になります。
医療機関を受診する際は、同じものを持参してください。
誤飲した医薬品によっては受診が不要なものもありますが、素人による判断は危険です。
医薬品を手元に準備したうえで、医療機関や子ども医療電話の判断を仰いでください。
ボタン電池が長時間体内に残った場合、食道や胃に穴が開く恐れがあります。
電池の種類を確認し、急いで医療機関を受診しましょう。
大切なのは「飲んだかどうか分からない」場合でも放置しないことです。
誤飲したかどうかは、レントゲンを撮ればすぐに分かります。
少しでも誤飲の可能性があると思われるときは、迷わず病院に向かいましょう。
子どもの誤飲・窒息のリスクを低減するには、正しい食べ方を実践すること・危険の少ない環境を作ることが必要です。
家庭でできる誤飲事故対策をご紹介します。
子どもが食べ物を喉に詰まらせるときは、食べ方や食べ物の処理方法に問題があることが少なくありません。
正しい食べ方を意識するだけで、誤飲・窒息のリスクは減らせます。
子どもの食べ方には個性があり、早食いだったり食べ物を口に詰め込んだりする子どももいます。
落ち着いて食べられるよう保護者がペースを調整してあげることが大切です。
食べてよいもの・悪いものの区別が付かない小さな子どもがいるご家庭は、子どもの周囲にものを置かないことが大切です。
子供の手が届く範囲は、「手の届く範囲と台の高さを足した長さ」といわれています。
年齢別では、以下が「子どもの手が届く範囲」の目安です。
例えば1歳児の場合は、90cm四方にものを置かないことが必要となります。
子どもの口の大きさは、3歳児で直径約4cm(トイレットペーパーの芯の直径ぐらい)といわれています。
すなわち直径約4cmよりも小さなものは、子どもが口に入れてしまう可能性があるということ。
どのようなものであれ、子どもの周囲に置くのは好ましくありません。
誤飲リスクがあるものについて判断に迷うご家庭は、「誤飲チェッカー」を使ってみましょう。
誤飲チェッカーとは、誤飲や窒息を予防するために作られた道具です。サイズは乳幼児の口腔を計測して作られており、誤飲しそうなものを簡単にチェックできます。
誤飲リスクを測りたいときは、チェッカーの中に対象物を入れるだけ。
円筒のチェッカーに収まるものは、子どもの誤飲リスクがあると判断できます。
もちろん、誤飲チェッカーは目安ですので、日ごろから誤飲防止の対策は行っていきましょう。