子どもの本来の力を引き出すアドラー心理学の子育て。「勇気づけ」の方法 by KIDSNA STYLE

公開日:2024/09/19

子どもの本来の力を引き出すアドラー心理学の子育て。「勇気づけ」の方法 by KIDSNA STYLE

やみくもに褒めるのでも叱るでもなく、子どもが本来持つ力を引き出す子育てがあります。

ドイツの心理学者・アドラーが考案した「アドラー心理学」をベースにしたもので、家庭でも取り入れてみると子育てがよりスムーズになることもあるかもしれません。

今回は、アドラー心理学を子育てに取り入れるメリット、アドラー式「勇気づけ」の具体的なポイントや実践方法などについてご紹介します。

 

※記事転載元:KIDSNA STYLE(株式会社ネクストビート)

アドラー心理学とは?

アドラー心理学とは、フロイト、ユングに並ぶ心理学の3大巨匠であるアルフレッド・アドラー(Alfred Adler、1870-1937)が創始した心理学のことです。

 

「人間は皆平等で上下関係がない」という考え方を基礎としており、日本で2013年に出版された書籍『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)では、アドラー心理学の第一人者・岸見一郎氏とライターの古賀史健氏がアドラーの思想について対話しています。

 

二人の対話はわかりやすくアドラーの考えを解き明かし、子育てや仕事、人間関係などの悩みにこたえる指南書としてもふさわしく、20万部を超えるベストセラーとなっています。

アドラー式子育て法では「勇気づけ」をする

アドラー心理学式子育て法では、子どもを褒めたり叱ったりするのは、親が子どもを思い通りにコントロールしている状態で自立を妨げてしまうと言われており、子どもをひとりの人間として認め、尊重することが大切と考えられています。

 

子どもを褒めることがいけないわけではありませんが、些細なことでも褒めてばかりいるとその状況が当たり前になってしまうことも。

 

また、子どもを感情的に叱ったり嫌味を言うことも、子どものやる気を失わせ学ぶ機会を奪ってしまうかもしれません。

 

そのため、アドラー式子育て法で推奨されているのが、子どもが何かしてくれた時に褒める代わりに「ありがとう」 「助かった」など感謝の言葉で「勇気づけ」をするというやり方です。

 

勇気づけでは、子どものあるがままを受け入れ、長所やできたことについて親が心から喜んで感謝を伝えます。

 

出典:アドラー心理学に基づく勇気づけの子育て入門(学校編、家庭編)~ほめない、叱らない、勇気づける

「勇気づけ」を子育てに取り入れるメリット

アドラー心理学の勇気づけを子育てに取り入れると、以下のようなメリットがあると言われています。

 

・子どもが何でも自分で決められるようになる

 

・子どもが自分自身の価値を決められる

 

・自己中心的ではなくなる

 

・自分の意思で相手を喜ばせる行動をとるようになる

 

・チャレンジ精神が生まれ困難にも立ち向かえるようになる

 

・人と助け合うことができ、親が手を出さなくても自分で育つようになる

 

どれも大人になってから、社会で強く生きていくために大切なことかもしれません。

 

また、親子関係や周囲との人間関係に悩んでいた場合は、アドラー心理学を取り入れることで人に対しての見方や接し方が変わり、信頼し尊敬し合えるような良い関係性になるケースも。

 

親が自分自身や子どもを信じることで、他の子と比較せず子どもの成長をマイペースに見守れるようになります。

子どもの行動をポジティブにうれしく感じられるのでストレスなく子育てできるようになるかもしれません。

 

出典:アドラー心理学に基づく勇気づけの子育て入門(学校編、家庭編)~ほめない、叱らない、勇気づける

アドラー心理学式「勇気づけ」のポイント

勇気づけを実践する際のポイントについてご紹介します。

子どもの存在そのものに価値があると認識する

まずは、子どもが生まれてきてくれたこと、健康に生きていてくれることに感謝しましょう。

 

そうすることで子どもも、自分はママやパパから与えてもらっているだけではなく、家族へ貢献し役に立っている価値ある存在だと思うことができ、自分自身を好きになれるため、勇気づけにつながるでしょう。

子どもを信頼し、大人と対等に扱う

「どうせできないから、守ってあげなければ」といった子ども扱いはせずに、子どもを信頼し大人と対等に扱いましょう。

 

そうすることで、「命令、強制→お願い、依頼」「威圧→励まし」「ほめて評価する→感動を共有する」といったように、親子の関わり方が全体的に変わってくるかもしれません。

 

また、子どもから頼まれていないことを親が積極的にしてあげて甘やかすことは、自分でできるはずの機会を逃すことになるかもしれません。

 

子どもからのお願いがない限りは、甘やかさずに必要な援助だけするようにしましょう。

 

子どもに自由な判断や決定をしてもらい、どのような結果になるか一度体験させてあげることで、自信が生まれて責任感が養われることもあるようです。

完璧を目指さずに、短所は長所として捉える

アドラー式子育てでは「完璧を目指さないこと」が大切とされています。

 

完全な人はおらず、みんな何らかの欠点や弱点をもっていると思えば、謙虚になり相手のことも受け入れやすくなるでしょう。

 

そうすると、ありのままの子どもを認め、子どもの短所も長所として捉えることができるかもしれません。

 

家族など周囲の人から受けた影響で、「子どもの短所はこれだ」と思い、直すべきだと信じてしまっていることもあるでしょう。

しかし、アドラー心理学では、短所を指摘してもやる気をなくすだけで、子どもが自分から良い行動をするようにはならないと言われています。

 

例えば、「優柔不断→ゆっくりと思考する力がある」「飽きっぽい→いろんなことに好奇心を持てる」「忘れっぽい→執着しない」など、気になる所はポジティブに捉えるようにしてみましょう。

他の子どもと比較しない

他の子どもとつい比べて優劣をつけてしまうことがありますが、比較することは勇気づけの観点からみると決してよいことではありません。

 

比較する対象は他の子ではなく、過去のその子ども自身にするのがよいでしょう。

「昔はできなかったのに、今はできるようになったね」と子どもの成長に目を向け、自分だけでは気づきにくい点を伝えてあげましょう。

結果でなく過程に注目する

子どもが良い結果を出した時はつい褒めたくなりますが、「一位をとってすごい!」ではなく、「〇〇を毎日がんばったからだね」と努力の過程の方を認める声かけにしましょう。

 

つまり、結果そのものよりも、どのように努力しどの程度進歩したのかに着目して認めることが大切です。

 

悪い結果の場合も、同じように努力の過程を認め、何がだめだったのかを一緒に考えて手助けをしてあげるとよいかもしれません。

失敗したときこそ子どもに寄り添った勇気づけが必要でしょう。

作為や思惑を込めない

子どもが何かしてくれた際、「ありがとう」と感謝を伝える時に「次もまた期待している」という作為的な思惑は込めないようにします。

 

そのような気持ちが子どもに伝われば、せっかくの子どもの良い行いも、一時的な気まぐれで終わるか、お礼を言われることを期待して行動したり、お礼を言われなければ良い行動を取ろうとしなくなるかもしれません。

10歳前後の関わり方が特に重要

アドラー式子育てでは、子どもの人格や性格は10歳頃までに形成されると考えられており、10歳前後の関わり方が特に重要視されているようです。

 

これまで意識してこなかった方も、少しずつでも勇気づけを心がけてみるとよいかもしれません。

 

出典:アドラー心理学に基づく勇気づけの子育て入門(学校編、家庭編)~ほめない、叱らない、勇気づける

アドラー心理学式「勇気づけ」の具体的な実践方法

勇気づけの具体的な実践方法についてご紹介します。

褒めたい場合の勇気づけ

アドラー心理学では、褒めることは基本的に上から目線の行為であり、立場が上の人が下の人を評価していると考えられています。

 

今まで褒めていたシーンで勇気づけをするときは、子どもと同じ立場になり親の気持ちを伝えることがポイントになります。

 

<例>

・子どもが家事を手伝ってくれた時

褒める「えらいね! 上手だね!」

勇気づけ「手伝ってくれて助かった! きれいになって気持ちいい! ありがとう!」

 

・学校で子どもの成績がよかった時

褒める「すごい! さすが!」

勇気づけ「○○ちゃん嬉しそうだね! ママも嬉しい」

叱りたい場合の勇気づけ

アドラー心理学では、子どもを叱って親の思い通りに行動させるのは、子どもを支配している上下関係の状態にあると言われています。

 

子どもに何かしてほしい時は、命令口調ではなく親の気持ちを伝えてお願いしたり、子ども自身にどうしたらできるようになるか考えてもらうことがポイントになります。

 

<例>

・子どもがちゃんと片づけない時

叱る「ちゃんと片づけてよ!」

勇気づけ「部屋が散らかって困るの。少しでも片づけてくれると助かるな」

 

・子どもが遊びたがって家に帰らない時

叱る「○時になったら帰るって言ったでしょ! なんで守れないの!」

勇気づけ「帰るのが遅いとママもパパも心配するよ。どうしたら帰れると思う?」

注意が必要な子どもへの言葉の投げ方

親が下記のような言葉を使っていると、勇気づけとしては好ましくないとアドラー式子育てでは考えられています。

一度自身の言動をふり返ってみて、できるだけ使わないように注意してみるとよいかもしれません。

 

・過保護

「あなたにはまだ無理よ」「わたしがやるから、しなくていいよ」

 

・過度の放任

「好きにしなさい」「勝手にしなさい」

 

・拒否、批判的

 「なんて意地悪な子なの」「うちの子じゃない」「こんな子に育てたつもりはない」

 

・憐れむ

 「可哀想な子だね」

 

・一貫しない

昨日と今日で逆のことを言うなど、気分で態度が変わる

 

・軽蔑

「何をしても、だめな子だね」「こんなこともできないの」

 

・権威的

「親の言う事が聞けないの」「子どものくせに生意気」「だめなものはだめ」

 

・おどす

「これをしなかったら、○○をあげません」「これをしなかったら、どうなるかわかる?」

 

・高望み、競争過剰

「これくらいできて当たり前」「あの子はできるのに、何でできないの」

 

出典:アドラー心理学に基づく勇気づけの子育て入門(学校編、家庭編)~ほめない、叱らない、勇気づける

アドラー心理学を参考にしよう

子育てをしていると、どうしても必要以上に子どもを褒めたり、言うことをきかせようと叱ったりしてしまうこともあるでしょう。

 

その親子にとって効果があるかどうかは個人差がありますが、子どもとの関係性に悩んでいる場合は、アドラー心理学の「勇気づけ」を取り入れることで、少しずつでも関係性がよくなり子どもの自立心が育まれることもあるかもしれません。

 

子どもの貢献には感謝を示し、頑張った過程を評価する、子ども自身の成長に注目するという点がポイントになるでしょう。

 

アドラー式子育てを参考に、子どもが自信をもち社会で強く生きていくために大切な勇気を身につけられるとよいですね。

 

※記事転載元:KIDSNA STYLE(株式会社ネクストビート)

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