現役調理師が教える! 今すぐできる家庭での食中毒予防ポイント

公開日:2025/06/03

現役調理師が教える! 今すぐできる家庭での食中毒予防ポイント

「だんだん暖かくなってきて、食中毒が心配……」「どうやって気をつけたらいいんだろう」
そんなママ・パパのために、今回はふだん病院で入院患者さんのためにご飯を作っている調理師さんに、食中毒予防について伺いました!
家庭で実践できる食中毒予防のポイントを教えてもらったので、ぜひ参考にしてくださいね。

食中毒の症状とは?

---まず、食中毒とはどんな症状ですか?

 

食中毒というのは、細菌やウイルスが付いた食べ物が原因で、お腹が痛くなったり、気持ち悪くなったりすることです。

具体的な症状はこんな感じです。

  • なんだかムカムカする、吐き気がする
  • お腹がキューッと痛む
  • お腹がゆるくなる
  • 熱っぽい感じがする
  • 体がだるい、しんどい

症状は原因になる細菌・ウイルスや、その人の体調によってさまざま。

軽く済むこともあれば、すごくつらい時もあります。

特に小さなお子さんや、おじいちゃんおばあちゃんは注意が必要。

もし症状が重そうだったら、迷わず病院を受診してください!

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---調理師として毎日の仕事の中で、どんなことに気をつけていますか?

 

仕事で食べ物を扱う現場の人たちにとって、食中毒は「絶対に起こしちゃいけない」と、毎日すごく多くのことに気をつけています。

細菌やウイルスを「つけない・増やさない・やっつける」のは基本中の基本!

具体的な対策方法は、以下のとおりです。

1.「つけない」ー 細菌やウイルスを食材や手指に付着させない

作業の前後はもちろん、生の食材を触った後やトイレの後など、作業が変わるタイミングで石鹸を使って丁寧に手を洗い、さらにアルコール消毒液で手指を消毒します。

 

野菜や果物など、生で食べるものや加熱前に使用するものは、流水で十分に洗います。

特に土や汚れが付着しやすい根菜類は念入りに洗っています。

生の肉や魚介類は、他の食材と接触しないよう専用の容器に入れたり、冷蔵庫内でも区画を分けたりして保存します。

2.「増やさない」ー 食品に付着した細菌やウイルスの増殖を抑える

食材は適切な温度(冷蔵は3℃以下、冷凍は-20℃以下)で保存しています。

また、加熱調理して提供するまでに時間が空く場合は、粗熱が取れたらすぐに冷蔵庫に入れるか急速冷却機で冷却して、室温で長時間放置することがないよう徹底しています。

3.「やっつける」ー 食品や調理器具に付着した細菌やウイルスを死滅させる

肉・魚などの食材は、中心部まで十分に加熱することが重要です。(目安:中心温度75℃で1分間以上。ノロウイルス対策では85~90℃で90秒以上)

現場では温度計を使って確認しています。

まな板や包丁などの調理器具も食材ごとに使い分けたり、使うたびに洗浄したりして熱湯や台所用漂白剤などでしっかり消毒します。


ふきんやダスターも、こまめに取り替えて消毒したり、作業台やシンク周りも一日の終わりだけでなく作業の合間にも清掃と消毒を行ったり、調理場を常に清潔に保つように注意しています。

どうして起きるの? 食中毒を引き起こす「見えない敵」って?

---そもそも、食中毒はどうして起こるのでしょうか?

 

主な原因は、目に見えない小さな細菌やウイルスです。

細菌やウイルスが食べ物に付いて、ちょうどいい温度になると、どんどん増えていくんです。

それを食べてしまうことで、吐き気やお腹の痛みなどの症状が出ることが多いです。

代表的な食中毒の原因菌・ウイルス

  • サルモネラ菌:お肉(特に鶏肉)や卵に付いていることがあります。熱に弱いので、しっかり火を通すことが大事です。
  • カンピロバクター:生の鶏肉は特に注意が必要! 少しの量でも食中毒を起こすことがある菌です。使った包丁やまな板から他の食材に菌がうつらないように気をつけましょう。
  • O-157(腸管出血性大腸菌):生のお肉やしっかり洗えてない野菜からうつることもあります。これも熱には弱いので、しっかり加熱することが大切です。
  • ノロウイルス:カキみたいな二枚貝を生で食べたり、感染した人の手からうつったりします。まずは石鹸で丁寧に手を洗う・アルコール消毒をすること。調理器具は塩素系の漂白剤で消毒しましょう。

「加熱したから安心」じゃない? 気をつけたい“しぶとい菌”

---熱に強い菌もいると聞いたのですが、本当ですか!?

そうなんです。

実は、しっかり加熱したからといって、完全に安心できるわけではないんです。

熱に強い、しぶとい菌もいるんですよ。

特に家庭で気をつけたい、熱に強い菌はこちらです。

 

  • ウェルシュ菌: カレーやシチューなどの煮込み料理で注意が必要です。熱に強い芽胞(がほう)を作るので、加熱後も油断禁物。料理が冷める時に菌が増えやすいので、作り置きは素早く冷やして保存しましょう。
  • セレウス菌: チャーハンや焼きそば、スパゲッティなど、作り置きしたごはんや麺類で増えることがあります。これも熱に強い芽胞を作り、熱で壊れにくい毒素(吐き気の原因)を出すことも。作ったら早く冷まして保存することが大切です。

 

参考:煮込み料理を楽しむために~ウェルシュ菌による食中毒にご注意を!!~:農林水産省

食中毒の原因となる微生物|足立区

【調理師さん直伝】今日からできる食中毒予防のポイント6つ

---では毎日の料理で、どんなことに気をつければいいのでしょうか?

これだけは意識してほしい、家庭でできる食中毒予防のポイントを6つご紹介します! 

1.【洗う!】菌をつけないための第一歩

まずは基本の手洗い。

料理の前、生の肉や魚、卵を触った後、トイレの後、そして食事の前には石鹸でしっかり手を洗いましょう。

指の間、爪の周り、手首まで忘れずに。

泡で優しく洗って、流水でしっかり流すのがポイント。

野菜も流水で丁寧に洗ってくださいね。

2.【分ける!】つけない工夫

生の肉・魚を切った包丁やまな板を、そのまま野菜を切るのに使っていませんか? 

できれば、肉・魚用と、野菜・調理済み用で道具を分けるのがベスト。

難しければ、使うたびに洗剤でよく洗って、熱いお湯をかけるだけでも効果があります。

冷蔵庫で保存する時も、生ものと他のものが触れないように容器を分けたり、置き場所を工夫したりしてみてください。

3.【加熱!】しっかりやっつける

ほとんどの菌は熱に弱いので、しっかり火を通すことが大事です。(目安:75℃で1分以上)

特にお肉料理は、中心の色がちゃんと変わっているか、よく見てあげてください。

心配なら、料理用の温度計を使ってみるのもいいですよ。

4.【冷やす!】菌を増やさない

作った料理を、いつまでもキッチンのテーブルに置きっぱなしにしてないですか? 

菌は、暖かい場所が大好きです。

料理の温度が中途半端なままだと、どんどん増えてしまうんです。

粗熱が取れたら、なるべく早く(だいたい2時間以内が目安)、小分けにして冷蔵庫へ入れてください。

5.【清潔!】菌が住みにくいキッチンに

ふきんやスポンジも、毎日使っていると菌の温床になることも。

こまめに洗って、しっかり乾かしたり、定期的に消毒したりするのがおすすめです。

シンク周りや調理台も、使った後はサッと拭く習慣をつけるだけで、ずいぶん違いますよ。

6.【チェック!】基本だけど大事なこと

スーパーで買ってきた食材を冷蔵庫に入れる前に、消費期限や賞味期限を確認する習慣がついていますか? 

期限が近いものから使うようにしたり、期限が切れたものは思い切って使わないようにしたりしてください。

見た目やにおいが「あれ?」と思うものも、無理して使わないのが安心です。

 

参考:食中毒予防の原則と6つのポイント | 政府広報オンライン

まとめ

ーーーインタビューの最後に、調理師さんからママ・パパへのメッセージをいただきました。

毎日のごはん作り、本当に大変ですよね。
食中毒予防って聞くと、なんだか難しくてプレッシャーに感じてしまうかもしれませんが、そんなに構えなくて大丈夫です。
まずは「これならできそうだな」って思うことから、ひとつずつ試してみてください。
ちょっとした心がけが、家族みんなの健康とニコニコ笑顔を守ることにつながりますよ。


文/なついろ

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