かかとのガサガサ……それ水虫かも!?|感染リスクやトリビア・予防法を詳しく紹介

公開日:2025/06/19

かかとのガサガサ……それ水虫かも!?|感染リスクやトリビア・予防法を詳しく紹介

湿度が高くなる梅雨時期から夏は、水虫を発症しやすい時期です。

水虫は、子どもから大人まであらゆる人に感染リスクがあります。

細菌を繁殖させないよう、足を清潔にして乾燥を保つことが大切です。

 

この記事では、水虫のリスクやちょっとしたトリビア、さらには水虫を発症させないために気を付けたい暮らしのポイントをご紹介します。

水虫のリスクを知ろう

水虫に罹患する日本人は多く、夏になると4人に1人が水虫を発症するといわれています。

日本では非常にありふれた病気ですが、「たいしたことはない」と軽く見ないことが大切です。

 

水虫の概要と、水虫を放置するリスクをご紹介します。

 

参考:白癬(水虫・たむしなど) – 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)

水虫とはどんな病気?

水虫とは、白癬菌(はくせんきん)というカビの一種が引き起こす皮膚病です。

白癬菌は、「ケラチン」という成分をエサに繁殖します。

 

水虫というと「足の裏の皮膚の表面に発症する」というイメージですが、ケラチンが豊富にある、爪や手、体、頭部も感染することがあります。

 

一方口内などの粘膜部分は、ケラチンがあまり多くありません。

口の中が水虫になるかも……などの心配はほぼ無用です。

 

白癬菌は、高温多湿な環境を好みます。

すなわち蒸れた靴の中は、白癬菌にとって最高の環境ということ。

水虫に罹患している人は、湿度が高くなる梅雨から夏にかけて症状が悪化しやすくなります。

水虫の種類と症状

足の水虫の種類は主に3つあり、それぞれ症状が異なります。

 

  • 趾間型(しかんがた):主に足の指の間に発症。皮膚が白くふやけ、赤くなったり、皮がむけたりする
  • 小水疱型(しょうすいほうがた):足の裏や土踏まず、足の側面に発症。水ぶくれ(小水疱)ができ、強いかゆみがある
  • 角質増殖型(かくしつぞうしょくがた):主にかかとや足の裏全体に発症。角質が厚くなり、表面が乾燥してひび割れする

 

このほか足以外では、以下の水虫があります。

 

  • 爪白癬(つめはくせん):爪に発症。爪が変色・変形したり、ボロボロになったりする
  • 頭部白癬(「とうぶはくせん」または「しらくも」):頭部に発症。毛が抜けたり、うろこ状の発疹ができたりする
  • 股部白癬(「こぶはくせん」または「いんきんたむし」):太ももの内側や性器周辺、下腹部に発症。円形の発疹や水疱ができ、強いかゆみや痛みが出る
  • 体部白癬(「たいぶはくせん」または「ぜにたむし」):上記以外の体の皮膚に発症。症状は他の部位と同じ

 

白癬菌は皮膚の表面に留まることが多く、深層部分に侵入することは極めてまれです。

 

ただし「絶対にない」というわけではなく、万が一侵入した場合は「深在性白癬(せんざいせいはくせん)」と呼ばれ、内臓にまで感染が及び、頭痛や発熱、意識障害を引き起こす可能性があります。

水虫を放置するリスク

基本的に白癬菌は、皮膚表面の角質層に留まります。

内臓などにダメージが及ぶ心配はなく、水虫そのものが原因で死に至るなどの心配は不要です。

 

ただし水虫の症状が進行すると、皮膚がただれたり、ひび割れを発症したりすることが少なくありません。

足の亀裂やひび割れから細菌が侵入すると蜂窩織炎(ほうかしきえん)などの深刻な感染症を引き起こすリスクがあります。

 

蜂窩織炎とは、皮膚の下の組織に細菌が感染し、炎症が起こる病気です。

重症化すると敗血症などの合併症を引き起こす可能性があり、早めに治療することが必要となります。

 

特に高齢者や糖尿病患者、免疫力が低下している人は、水虫が重篤な感染症に繋がるリスクが高めです。

 

「たかが水虫」と考えず、予防と治療を徹底しましょう。

水虫にまつわるトリビア

水虫は古くからある身近な皮膚疾患です。

とはいえ興味を持って調べようとしない限り、水虫について詳しく知る機会はあまりありません。

 

ここからは、水虫にまつわるトリビアをご紹介します。

水虫の名前は江戸時代から

白癬菌による皮膚病は、江戸時代に「水虫」「田虫(タムシ)」などと呼ばれていました。

 

江戸時代、田んぼで仕事をする多くの農民が、田んぼの水に入った後に足のかゆみや発疹などを訴えました。

彼らはこの症状を田んぼに住む虫が原因だと考え、「水虫」「田虫」と呼んだそうです。

 

このほかには、水虫が悪化すると水ぶくれができるため、「水虫」と呼ぶようになったとする説もあります。

 

ただし当時の日本人はわらじを履いていたため、水虫の被害はさほど深刻ではありませんでした。

 

日本人の間に爆発的に水虫が広がったのは、靴を履く習慣が一般的となった、昭和に入ってからです。

 

参考:水虫と人との歴史|NPO法人日本健康住宅協会

参考:メディカルα|BS-TBS

昔の水虫の民間療法

水虫は非常に身近な皮膚病であったことから、さまざまな民間療法が考案されました。具体的には、以下のものがあります。

 

  • 酢や薄めた酢に足を浸す、または生の酢を塗る
  • ニンニクやトウガラシをすりおろして患部に貼る
  • アロエやビワの葉を煎じて患部に塗る
  • 杉の葉で燻す
  • ストーブや火気に患部を近づける、お湯をかける(熱療法)
  • 天花粉(テンカフン、澱華粉)を塗る
  • 海辺の焼けた砂の上を素足で歩く

 

このほかアイルランドでは、「金貨や銀貨で患部をこする」「黒猫の血で患部をこする」なども行われていたそうです。

 

これらの民間療法に、医学的な根拠はありません。

中には皮膚の清潔を保つ上で有益なものもありますが、白癬菌を壊滅させるほどの効果は期待できないのが実情です。

 

参考:水虫と人との歴史|NPO法人日本健康住宅協会

現代では水虫の女性が増えている

「水虫=男性の方が発症しやすい」というイメージがありますが、近年は女性の水虫患者も増えています。

 

近年は女性の社会進出が進み、男性と同じように働く人が増えてきました。

1日中ストッキングを着用し、パンプスで過ごす……という人も珍しくありません。

足の中が蒸れた状態で長時間過ごせば、女性でも水虫になるリスクは高くなります。

 

またトレンドに敏感な女性の中には、冬にブーツを履く人も多いのではないでしょうか?

通気性の悪いブーツも、水虫のリスクを高める要因の一つです。

▼「かゆみがない=水虫ではない」は間違い

足白癬の人でも、かゆみを感じる人は10%程度だそうです。

かゆみがないからといって、「水虫に罹患していない」ということではありません。

 

特に女性が注意したいのは、乾燥肌との見分けが付きにくい、角質増殖型です。

 

「きちんと保湿しても、かかとのガサガサが治らない」などの人は、乾燥ではなく水虫の可能性があります。

 

あまりにも回復しない場合は、皮膚科で白癬菌の検査を受けることをおすすめします。

 

参考:白癬(水虫・たむしなど) – 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)

参考:水虫と人との歴史|NPO法人日本健康住宅協会

子どもは水虫になりにくい

子どもに水虫が少ないのは、大人よりも皮膚の新陳代謝が活発であることが主な理由です。

 

特に幼児は、脳や五感の発達を促すため、裸足での保育が推奨されています。

保育園や自宅では裸足になるケースが多く、白癬菌が付着しても動き回っているうちに落ちてしまうケースが多いようです。

 

ただし成長して靴を履くようになれば、子どもでも水虫に罹患するリスクが高くなります。

家庭では足の指までしっかりと洗い、清潔を保つことが大切です。

 

参考:白癬(水虫・たむしなど) – 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)

水虫を防ぐためにできること

水虫を防ぐためには、足を清潔に保つことが大切です。

 

日常生活で気を付けたいポイントや、万が一水虫になってしまったときにすべきことをご紹介します。

日常生活での予防策

日常生活では、白癬菌が好む「高温多湿」な環境を作らないことが、最も基本的な予防策です。

 

  • 足を清潔に保つ:毎日お風呂で石鹸を使って、足の指の間や足の裏まで丁寧に洗いましょう。特に指の間は垢や汚れが溜まりやすく、白癬菌の温床になりやすいので念入りに。ただし、ゴシゴシ洗いすぎると皮膚を傷つけ、かえって菌が侵入しやすくなるので優しく洗ってください。

 

  • 足をしっかり乾燥させる:洗った後は、タオルで指の間まで一本ずつ丁寧に拭き取り、完全に乾燥させることが重要です。湿った足は菌が繁殖しやすい環境となります。ドライヤーの冷風を使うのも効果的です。

 

  • 通気性の良い靴・靴下を選ぶ:革靴やブーツなど、通気性の悪い靴は避け、メッシュ素材や天然素材(綿など)の吸湿性の高い靴を選びましょう。靴下も綿や麻などの吸湿性の良い素材を選び、毎日履き替えるようにしてください。

 

  • 同じ靴を毎日履かない:履いた靴は湿気がこもっているため、数日休ませてしっかり乾燥させることが大切です。できれば、2~3足の靴をローテーションして履くのが理想的です。靴の乾燥剤や除湿剤を活用するのも良いでしょう。

 

  • 公共の場所に注意する:銭湯、プール、スポーツジムの更衣室など、不特定多数の人が素足で歩く場所では、バスマットや床からの感染リスクがあります。なるべく裸足で歩かない、共用のスリッパは使わないなどの工夫をしましょう。自分のサンダルやスリッパを持参するのも有効です。

 

  • 家族とも足に関わるものは共有しない:バスマットやスリッパ、タオルなどを共有しないように徹底しましょう。お風呂の床も毎日清潔に保ち、換気をしっかり行ってください。

 

なお水虫の症状が現れるのは、白癬菌が角質層に侵入して増殖を始めてからです。

 

白癬菌が角質層に侵入するまでの時間は長く、24時間以上といわれています。

すなわち白癬菌が皮膚に付いてしまった場合でも、すぐに洗い流してしまえば水虫になる可能性は大幅に減少します。

早期発見と治療が重要

かゆみや皮むけ、水ぶくれ、かかとのガサガサなどの症状がある場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。

皮膚科では、皮膚の角膜を検査することで白癬菌の有無を正確に診断してもらえます。

 

万が一白癬菌がいた場合は早急に治療を開始し、症状の悪化や二次感染・爪水虫への進行を防ぐことが大切です。

 

注意したいのは、自己判断で適当な市販薬を塗らないこと。

実際のところ、水虫を疑って皮膚科を受診した人の約30%は、白癬菌が見つからなかったそうです。

 

足のかゆみや湿疹があるからといって、必ずしも水虫とは限りません。

安易に市販薬を使うと、症状が悪化する可能性があります。

 

参考:白癬(水虫・たむしなど) – 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)

まとめ

水虫は、誰にでも感染する可能性がある身近な病気です。
原因は白癬菌というカビであり、一度感染すると自然に治ることはありません。
日常的な予防策を徹底し、感染リスクを減らしましょう。

特に症状がひどくなくても、「夏ごろになると足の裏がかゆい」「皮がむける」などの人は、水虫にかかっているのかもしれません。
白癬菌をばらまかないよう、早急に皮膚科を受診して治療を始めることが大切です。


文/カワサキカオリ

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