梅雨を含む5月末から7月にかけては、日本に住む多くのカエルが繁殖期に入ります。
田んぼの近くに足を運ぶと、カエルの大合唱が聞こえてくるかもしれません。
この記事では、梅雨時期に活動が活発化する「カエル」についてご紹介。
意外と知らないカエルの生態や種類について、詳しくチェックしてみましょう。
梅雨を含む5月末から7月にかけては、日本に住む多くのカエルが繁殖期に入ります。
田んぼの近くに足を運ぶと、カエルの大合唱が聞こえてくるかもしれません。
この記事では、梅雨時期に活動が活発化する「カエル」についてご紹介。
意外と知らないカエルの生態や種類について、詳しくチェックしてみましょう。
カエルは、湿った大地や水辺に暮らす両生類の一種です。
卵からオタマジャクシ、そして成体へと姿を大きく変えるのが特徴で、南極大陸を除く全ての大陸に分布しています。
種類は非常に多く、これまでに約7,000種が発見されているそうです。
私たちにもおなじみの、カエルの生態や活動についてご紹介します。
カエルの多くは水辺や湿地、森林、田んぼなどに生息します。
水がないと生きていけない種類がほとんどですが、ニホンアカガエル・ヤマアカガエル・ツチガエル・ヌマガエルなどは、普段の生活をほぼ陸上で過ごす陸上性です。
カエルの食べ物は、主に昆虫や小型の無脊椎動物(クモ・ミミズなど)です。
田んぼではガガンボやアブラムシ、ウンカといった害虫を食べてくれるので、非常に有益な存在と認識されています。
カエルは皮膚でも呼吸しているため、乾燥には強くありません。
体表は常に粘液で覆われており、指で触れるとしっとりしているのが特徴です。
またカエルは「変温動物」であるため、周囲の気温によって体温が変化します。
気温が下がると体温も下がってしまうため、気温が低い時期に姿を見ることはありません。
冬のカエルは、地中や落ち葉の下で冬眠しています。
カエルのライフサイクルは、成長段階によって大きく姿を変えるのが特徴です。
カエルは一生の中で、水中と陸上という異なる環境を行き来しながら、劇的な変化を遂げます。
それぞれの段階において、生活様式や体の構造が大きく変化するのが特徴です。
カエルは個体数が多く適度な大きさである上、敵を倒すための強みを持ちません。
食物連鎖の上位にいる動物たちにとっては、まさに「食べやすい重要なエサ」なのです。
そのためカエルが減少すると、そのエリアの環境や生態系は大きなダメージを受けます。
例えば田んぼでカエルがいなくなってしまうと、害虫による農作物への被害や虫が媒介する感染症が増えるかもしれません。
またカエルをエサとしている鳥類、ヘビ、哺乳類などの捕食者は食糧がなくなり、個体数が減少する恐れがあります。
カエルは、良好な水辺環境や生態系・生物の多様性を維持する上で、非常に重要な生物なのです。
カエルは一見無害でかわいい生き物ですが、皮膚の表面に弱い毒を分泌しています。
日本ではおなじみのアマガエルやヒキガエルも、例外ではありません。
カエルの皮膚に毒があるのは、「雑菌除け」のためといわれています。
カエルは高温多湿な場所に生息するため、カビなどの菌類や細菌に触れる機会が多くなります。
皮膚から毒を分泌することで、雑菌から身を守っているというわけです。
日本に生息するカエルには猛毒を持つものはいませんが、カエルを触った後は必ず手を洗ってください。
カエルに触れた手で顔や目をこすったり、手を洗わずに物を食べたりするのは厳禁です。
カエルは柔らかく高機能な舌と、種ごとに異なる鳴き声という2つの大きな特徴を持っています。
カエルの体の特徴についてみていきましょう。
カエルの舌は非常に柔らかく、脳の組織に匹敵するほどの柔軟性を持っているのが特徴です。
舌には粘着性があり、一度獲物をくっつけると離しません。
またカエルは、獲物を口に入れたとき目玉が沈み込むのも大きな特徴です。
カエルには歯がなく、獲物をかみ砕くことができません。
目玉を沈み込ませることで、獲物を喉の奥に押し込んでいます。
なおカエルの舌の長さや伸び方は、種類によって異なります。
例えばヒキガエルの仲間は長く舌を伸ばせるものがいますが、アマガエルはあまり舌が伸びません。
参考:なぜ?なに?自然の大図鑑!|HondaWoods 元気な森を次世代のために、地域のために。
参考:続々・新たな視点で見てみると[23]カエルの食事はパクッとひと飲み:トウキョウダルマガエル幼体の食事 | 東京ズーネット
カエルの鳴き声の高さやリズム・鳴き方のパターンは、体の大きさや鳴のう(鳴嚢)の形・数などによって異なります。
例えば、アマガエルの鳴のうはのどの下に一つしかありませんが、トノサマガエルは両ほほに一つず鳴のうを持っています。鳴のうの形や大きさによって、声の大きさや響き方も変わってくるというわけです。
また繁殖期にカエルの大合唱が起こるのは、オスがメスを呼ぶために必死でアピールするためといわれています。
繁殖場所にはオスのカエルがひしめきあっていて、控え目なアピールではメスに選んでもらえません。どのオスも競い合うように大きな声でアピールするため、大合唱が起こるのです。
日本には約43~48種類のカエルが生息しています。
その多様性は世界的にも注目されており、各地の気候や環境に適応した固有種も多いのが特徴です。
ここからは、日本に生息するカエルについてご紹介します。
■分類:アマガエル科
■生息地:北海道、本州、四国、九州、佐渡島、対馬
■生息場所:平地や低山地の林、草原などの低い木や草の上
■サイズ:オス:30mm程度、メス:35mm程度
■色:緑色から灰白色(周囲の環境により変化)
■鳴き声:ゲロゲロ、グワッグワッ
カエルと聞いて多くの人がイメージする、緑色の小さなカエルです。
乾燥にも比較的強く、繁殖期以外では水辺を必要としません。
都市部でも多く見られますが、東京都内では地域によって絶滅危惧IB類などに指定されています。
■分類:アカガエル科
■生息地:本州、四国、九州、大隅諸島、隠岐、八丈島(移入)、中国大陸
■生息場所:平地や丘陵地の水田、森林の周囲、草地
■サイズ:オス:34~63mm、メス:43~67mm
■色:赤褐色から茶色。鼻先からまぶたまで背側線と呼ばれる明色の線模様がある
■鳴き声:キュキュキュ
ニホンアカガエルも、繁殖期以外は陸上で生活しています。
日中もよく動いているので、田んぼの側などに行くとよく見るかもしれません。
ただし個体数は全国的に減少傾向にあり、保全とモニタリングが急務とされています。
■分類:ヒキガエル科
■生息地:本州の近畿以北(アズマヒキガエル)、本州の近畿以西、四国、九州、周辺の島々(ニホンヒキガエル)
■生息場所:草原、自然林、都市公園など
■サイズ:オス:62-91mm、メス:70-130mm程度
■色:赤褐色から茶色。鼻先からまぶたまで背側線と呼ばれる明色の線模様がある
■鳴き声:クックックッ
近畿以北に生息するのがアズマヒキガエル、以西に生息するのがニホンヒキガエルです。
両者は亜種の関係にあり、見た目にも大きな違いはありません。
繁殖期は地域によって差が大きく、亜種全体で見ると10~5月と長いのが特徴。
主に夜行性ですが、雨の日は日中でも見られることがあります。
■分類:アオガエル科
■生息地:茨城県を除く本州全域、佐渡島
■生息場所:森林から近い水田や湿地
■サイズ:オス:42~60mm、メス:59~82mm
■色:緑色が基本だが、地域によっては模様がある
■鳴き声:キュキュキュ
主に日本海側で多く見られる、緑色のカエルです。
多くのカエルが水中に産卵するのに対し、モリアオガエルは水面上にせり出した木の枝や草の上に、泡状の卵塊を産み付ける習性があります。
卵は1週間程度で孵化し、泡ごと水中に落下。
オタマジャクシはそのままそこで水中生活を始めます。
福島県の「平伏沼モリアオガエル繁殖地」と岩手県の「大揚沼モリアオガエルおよびその繁殖地」は、モリアオガエルの繁殖地として国の天然記念物の指定を受けています。
■分類:ヒメアマガエル科
■生息地:奄美大島以南の奄美、沖縄諸島、台湾や東南アジア
■生息場所:海岸近くの低地から山地
■サイズ:オス:25~30mm、メス:27~37mm
■色:茶色から黄土色。不規則な暗色の帯状の模様がある
■鳴き声:ガァァァ
日本最小のカエルといわれていますが、見られるのは奄美大島以南の奄美・沖縄諸島のみです。
頑丈な後ろ足を持ち、ジャンプ力が高いのが特徴。
ただし水かきはさほど発達しておらず、泳ぎはあまり得意ではありません。
2020年には八重山諸島の集団が「ヤエヤマヒメアマガエル」として新種記載されました。
■分類:アカガエル科
■生息地:北海道、本州、四国、九州、朝鮮半島、中国大陸
■生息場所:平地から低山地にかけての水田、小川、池など
■サイズ:オス:55~80mm、メス:60~90mm
■色:オス:黄緑色、メス:白色または灰色
■鳴き声:グググッ
日本のカエルの中では比較的大きく、立派な体格をしています。
敵を威嚇するときに体を大きく見せて踏ん反り返ることもあり、その威風堂々とした様子から「トノサマ」の名前が付けられたといわれています。
トノサマガエルの指先には、吸盤がありません。
コンクリートの水路に落ちると壁をよじ登れず、下流に流されたり餓死してしまったりするケースがあるそうです。
個体数は全国的に減少しており、環境省のレッドリストでは「準絶滅危惧種(NT)」に指定されています。
■分類:アカガエル科
■生息地:北海道東部と琉球列島の一部以外全域
■生息場所:平地や山地の池や沼
■サイズ:111~200mm
■色:緑色から褐色。背中には赤茶色やコゲ茶色のまだら模様がある
■鳴き声:モー、グォー
北アメリカ中東部に生息する、大型のカエルです。
大きな個体は20cmにもなるといわれており、当初は食用として持ち込まれました。
現在では野生化したものが広く分布しており、至るところで見られます。
外来生物法の特定外来生物に指定されており、無許可の飼育や譲渡、運搬、放流などは認められていません。
ちなみに「ウシガエル」という名前は、オスの鳴き声がウシに似ているからだそうです。
日本には生息していませんが、鮮やかな色を持つカエルは猛毒を持っていることがあります。
インパクトのある見た目が美しい、強い毒を持つ毒ガエルをご紹介します。
■分類:ヤドクガエル科
■生息地:南米コロンビアの太平洋側熱帯雨林
■サイズ:50mm程度
■色:鮮やかな黄色、オレンジ、ミントグリーンなど
自然界で最強の毒素といわれる「バトラコトキシン」を分泌している、猛毒のカエルです。
バトラコトキシンの人間に対する致死量は、わずか0.1~0.3mg ほど。
成体のモウドクフキヤガエル1匹が持つ毒で、大人10人以上が死に至るとされます。
コロンビアの先住民はこのカエルの毒で毒矢を作っていたことから、「モウドクフキヤガエル」という名前が付けられました。
非常に危険なカエルですが、森林開発により個体数が減少しています。
国連のレッドリストでは絶滅危惧種に指定されているほか、ワシントン条約でも保護の対象とされています。
■分類:ヤドクガエル科
■生息地:南アメリカのスリナム南部およびブラジル国境付近
■サイズ:約30~45mm
■色:鮮やかなブルー
「熱帯雨林の宝石」とも呼ばれる、美しい青色のカエルです。
黒や薄い紫のまだら模様は毒々しい印象ですが、敵から身を守るための警告色・保護色という役割があります。
なお日本でもコバルトヤドクガエルを展示している施設がありますが、日本のコバルトヤドクガエルの多くは無毒です。
ヤドクガエル科のカエルは、エサとして食べた毒のあるシロアリやダニの毒を皮膚から分泌しています。
無毒の状態で飼育すると、毒性は失われてしまうそうです。