健康のために体を動かすことは良いことだとは分かっていても、何をすれば良いかわからないという人はいませんか。そんな人は、誰でも好きなときに気軽にはじめられるウォーキングがおすすめ! ウォーキングをすることでどのような健康効果が期待できるのか。また、その効果を最大限引き出すためにはどのような歩き方をすれば良いのか。そんな気になるウォーキングのあれこれを深掘りします。
ウォーキングは気軽にはじめられる有酸素運動
ウォーキングは、年齢や運動の得意、不得意など関係なく、誰でも気軽にはじめられる有酸素運動です。
有酸素運動とは、酸素を取り込みながら長時間継続しておこなう運動のこと。代表的なものだとヨガや水泳、ジョギング、サイクリングなどが挙げられます。
有酸素運動は、体を動かす際に酸素を使って「糖質」や「脂肪」がエネルギーとして消費されます。
「脂肪燃焼」はなんとなく分かるけれど、糖質も? と思った人もいるかもしれませんが、エネルギーとして消費されなかった糖質は、中性脂肪として蓄積されていきます。そのため、糖質や脂肪をエネルギーとして消費することは、肥満や生活習慣病の予防・改善のカギになります。しかしながら、ウォーキングから得られる健康効果はそれだけではありません!
ウォーキングで得られる健康効果は?
前述の通り、ウォーキングはさまざまな健康効果が期待できるといわれています。ただし、厚生労働省によると、健康効果を期待するなら有酸素運動を適切な時間・強度・頻度・期間でおこなうことが大切だといい、それは1回30~60分、息が弾むくらいの「中強度」の有酸素運動を週に2~5回おこなうことなのだそう。
ここでいう強度とは、「運動強度」のこと。運動時に体に掛かる負荷の度合いを示したもので、「低強度」、「中強度」、「高強度」に分類されます。
ウォーキングは、速度や歩幅、コースの傾斜などによって強度が変わってくるので、のんびりと景色を楽しみ、友人や家族と会話を楽しみながら散歩をするのと、時速6km/hほどの速さで力強くウォーキンするのとでは、もちろん消費カロリーや見込まれる運動効果は違います。
ウォーキングにおける中強度は、大股で、いつものペースよりもはや足で、歩いていると汗ばんでくる程度。目安としては、なんとか会話ができるくらいの速さです。この強度を意識しつつ定期的にウォーキングを続けることで、以下のような健康効果が期待できるといいます。
- 肥満の予防・改善
- 血糖値の上昇を抑える
- 血液中のコレステロールや中性脂肪の数値が高いなど、いわゆる脂質異常症の予防・改善
- 全身の血圧が正常に維持され、高血圧予防・改善
- 冠動脈性心疾患や脳卒中などの発症リスクが低下
- 腰痛や関節痛の予防・改善
- 骨粗鬆症やサルコペニアの予防・改善
そのほかにも、精神・神経疾患の症状の改善にも効果的で、神経の成長因子や伝達物質の増加や、海馬の萎縮が抑制されることも報告されているようです。また、免疫機能の改善を含むいくつかのメカニズムを介して、大腸がん、子宮体がん、乳がんなどの一部がんの腫瘍の成長を低下させる可能性も推察されているといいます。
加えて、別名「幸せホルモン」とも呼ばれる神経伝達物質「セロトニン」が分泌されるため、ストレス解消になったり、睡眠の質が向上するといった効果もあります。
自分のできる範囲内でOK!
ウォーキングがいろいろな健康効果を期待できるものであるということが分かっても、中強度だとか、30分だとか、週に2回以上だとか……、そのような具体的な条件を聞くと、たちまちハードルが高くなる、続けられる気がしないと感じてしまう人はいるかもしれません。また、やる気はあっても時間を作れないという人もいるでしょう。
しかし、だからといって諦める必要はありません。ゆっくり歩いたから、10分だけだから意味がないということはありません。同じく厚生労働省によると、強度を問わず、少しでも身体を動かすことでも健康に良い影響を及ぼすといい、たとえ週に1回でも健康増進効果があることも報告されています。自分のできる範囲、無理のない範囲で続けることが大切です。
参照:
厚生労働省 成人を対象にした運動プログラム」[PDF] / 骨粗鬆症予防のための運動 -骨に刺激が加わる運動を / 健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023[PDF]
正しいウォーキングのフォームをおさらい
ウォーキングは正しいフォームでおこなうことで、より健康効果を高めることができます。腰や関節を傷めたり、ケガをするなどの予防にもなるため、しっかりと正しい姿勢をマスターしましょう。
頭は下げずに視線は前方へ
視線は足元ではなく、やや遠くを見るのが正解。そうすることで、良い姿勢を保ちやすくなります。
肩の力を抜いて背筋を伸ばす
胸を張って、腰は反らずに背筋を伸ばして歩きましょう。肩の力を抜くと腕の振りがスムーズになります。
ヒジは軽く曲げた方がベター
ヒジを軽く曲げて大きく振りながら歩くことで、スピードも上がり歩幅も広くなります。また、肩甲骨を動かすことで、背中や肩回りの筋肉にも効くので上半身のシェイプアップにも!
腰の高さは一定に
疲れてくると腰の位置が下がってくるので、腰の高さは一定に保つようにしましょう。また、歩幅を広くするためには、足を前に出すというより、腰の回転を意識すると◎。
歩幅はなるべく広く!
歩幅は普段よりも10〜20%広げて歩くことを意識しましょう。スピードは、普段10分で歩いているところを8〜9分で歩くイメージで。
かかとから着地してつま先で蹴りだす
重心の移動は、「かかと→足のやや中央外側→小指の付け根→親指の付け根→親指」を意識して。足を蹴りだすときは、ヒザを伸ばすと蹴りが強くなります。
参照:
地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター「習慣化したい人のためのウォーキングプログラム テキスト 改訂版 テキスト」[PDF]
ダイエット効果を上げるために押さえておきたいポイント
ちょっとした工夫で、ウォーキングによるダイエット効果をさらに高めることができます。
筋トレをプラス!
ダイエットを目的としてウォーキングをする場合は、筋トレをプラスですることで、脂肪燃焼の効果を高めることができます。これは、「基礎代謝」が深く関係しています。
基礎代謝とは?
基礎代謝は、仰向けになって、食事はせずに、適温でリラックスした状態で消費されるエネルギーのこと。運動など関係なく生きているだけで消費するエネルギーです。年齢や、性別、体格、体温、食事や運動などの日常行動によっても基礎代謝量はそれぞれ違いますが、筋肉量も関係していて、その量が多いほど基礎代謝は上がるといわれています。
基礎代謝が上がると、消費エネルギー量が増えます。つまり、基礎代謝が高い人と低い人が同じ100mの距離を歩いたとすると、基礎代謝が高い人の方が消費されるエネルギー量は多くなるということです。
昔に比べて、同じ量を食べても太りやすくなった、ダイエットをしても痩せにくくなったと感じる人は、筋肉量を増やすことで、体質が改善されるかもしれません。
参照:
何分歩けば痩せるの?
ウォーキングは20分以上歩かなければ痩せないという説を聞いたことはありませんか?
最優先に使われるエネルギー源は糖質です。一方、脂肪がエネルギー源として使われるのは運動をはじめて20分後、そのため20分以上歩くことが脂肪燃焼には効果的だというものです。
ところが、実際は20分に満たなくても、運動をはじめてすぐから脂肪燃焼はおこなわれていて、5分、10分でも効果はあるという研究結果も報告されています。
あまり時間のノルマを作らず、まずは継続すること、習慣づけることを目標にしましょう。そうすることで、自然と時間や距離は伸びてくるのではないかと思います。
参照:
独立行政法人 農畜産業振興機構「スポーツと糖質 ~アスリートの基本の食事~ 」[PDF]
参照:大塚製薬 酸素研究所「脂肪燃焼と酸素」(リンク切れ)
ウォーキング前にはカフェインを摂取
コーヒーには「カフェイン」が多く含まれていることは知っている人がほとんどだと思いますが、カフェインには、体脂肪を分解し燃焼させる効果が認められています。そして、その効果は運動と組み合わせることで、より高まることが研究により示されています。
一般的にカフェインは、摂取してからおよそ30分後にその効果を発揮しはじめるといわれているため、ウォーキング開始の30分〜1時間ほど前に摂取するのがおすすめ。できれば砂糖やミルクの入っていないブラックコーヒーを選びましょう。コーヒー好きにとっては無理なく取り入れられそうな習慣なので、やってみる価値はありそうですね!
まとめ
文/渡邊倫子