公開日:2022/02/17

1,お弁当にまつわる話(後編)

1,お弁当にまつわる話(後編)

著者:サト母

 

 

前編はこちら

 

ボロボロと泣いている母親と対峙しても娘は冷静だった。

遠くで弟と父の声がするからかもしれない、あるいは終わっていない宿題が気になったのかもしれない。

 

娘は先に話した私の工夫のことや早起きのことや、その他のこと全てを聞いて頷いて、親がぐちゃぐちゃに泣いている状態を目の当たりにして、それでもなお普通の表情でこう言った。

 

「うん、母ちゃんの言ってることはわかる。それでも嫌なの。美味しくないんだよ、冷たいお弁当は」

 

 

冷静に話す娘の主張がすうっと耳に入ってきた。

ふと、ここで私も泣いてる場合じゃないと我に返った。

 

娘は私のお弁当に対する工夫を否定したのではなく、温度についてとにかく文句があるだけなのだ。

 

冷めたポテト、冷めたカレー、確かにイマイチ美味しくはない。

舌の温度感覚が人より少し敏感であろう娘は、お弁当にぬくもりがあったら食べられる。

そう言っているのでは?と脳裏をよぎった。

 

そして目下、明日からのお弁当も作らなければならない。

これは泣いていても解決しないな、と涙を拭って娘に意思を確認する。

 

「お弁当あったかくできたら食べる?」

 

すると、

 

「うん、食べたい」

 

と娘。

 

あったかいものをあったかいまま食べるにはどうしたらいいか。

学童に電子レンジはあるが、使わせてはもらえない…。

 

ここで真っ先に思い立ったのは、石灰をつかったカイロの原理を利用した仙台名物牛タン弁当だったが(紐を引くとアツアツになるあれ)、

娘にそんなヤバそうな発熱装置を持たせるわけにはいかない。

そもそもあの装置だけ手に入るのかもわからない。

 

と、ここで現代の知恵が集結されているであろうお店で買い物をすることにした。

その名は誰もが知っている「Amazon」である。

“保温” “お弁当箱” “小学生女子” と、思い立つキーワードを入れて検索すると、まあたくさん便利そうなグッズが出てくること。

 

保温力の高いケース、包み、真空断熱を利用したスープジャー。

たくさんの商品があるものの、レビューでその保温性を疑っていたり、あるいは重さについて苦言を呈しているものもあった。

 

しかしこのどれかを買わねば、娘はこの先お弁当を食べてくれない日が続く。

藁にもすがる思いで、丼の形をした保温のお弁当箱をポチっとした。

 

翌日にはそのお弁当箱は手元に届き、思ったより重いなとか、洗うの大丈夫かなとか、色々と思いながら眺めてみた。

 

少し大きいサイズしかなく、デカ弁と言われたりしないかと不安にもなったが、それより何よりあったかいお弁当が食べられるかもしれないという期待が高く、重さも気にもせず娘は持参し学童へ行った。

その夜、帰ってきての一言目は、

 

「母ちゃん、お弁当ちょっと多いけど美味しかったよ」

 

と完食してきてくれた。

 

VIVA文明、現代に生まれてよかった。

高度な技術を駆使したお弁当箱があってよかった。

それがすぐ買える世の中に生きていてよかったー!!!!!

 

…そして、最初から頼れるグッズは駆使すべきだと痛感した。

 

自分が保温環境のないお弁当暮らしをしていたからと、娘にそれを強いることはない。

 

もちろん、災害や環境の変化によっては思い通りにいかないこともあるかもしれないが、小学校に通い、長期休暇を学童で過ごす娘にとっては、あったかいお弁当はそう苦労しなくても持ち運んでいけるものなのだ。

 

とかくオトナになってしまうと、昔はこうだったとか、自分のスタンダードを押し付けがちになる。

 

最初から論点は一つだったのに、自分のスタンダードのお弁当が残されるからと自分が否定されたような気になり、ボロボロと泣くまでに心を痛めたが、

 

「シンプルに考えて、便利グッズを使えば解決~!」

 

という、とても簡単なことに踊らされていた。

 

40代、そろそろ頑固になる時期であるが、たまには娘と一緒にぷにるんずに指を差し入れぷにぷにしつつ、今の遊びや流行りをちゃんと理解し、子どものスタンダードも知っておく必要があるな、と感じた出来事であった。

 

…と、あれから数か月。

 

今朝また学童用のお弁当を詰めていたら娘が一言、

 

「えー、お弁当少なめにして、野菜特に少なめ」

 

いつもはお寿司や唐揚げをおかわりするのに、

結局好き嫌いしてるじゃないか!とお説教タイム。

 

お弁当温度問題が解決してもなお、お弁当に振り回され、朝から大騒ぎの我が家なのである。

まとめ

ワーキングマザー「サト母」がおくる、等身大のエッセイを不定期で連載。

日常の中にある出来事を、母の目線から切り取っています。

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