「子どもに嘘をつかれて驚き、思わずきつく叱ってしまった……」なんてことは誰しもがあると思います。我が家の場合は、小学生になった娘が急に嘘をつくようになり、かなりショックを受けました。いろいろと調べたところ、どうやら“子どもが嘘をつくことは成長過程の1つ”のようです。子どもの嘘は、親の対応次第で改善されることもあれば、こじれて繰り返し嘘をつくようになることもあるそう。では、なぜ子どもが嘘をつくのか、その理由や原因を理解した上で、どのように対処すべきかをまとめました。
子どもが嘘をつくのは何歳から?
子どもは早いと2歳半頃から嘘をつくようになりますが、おおまかに未就学児の嘘と、小学生の嘘は内容が大きく異なります。ここでは、思春期より前の子どもの嘘の特徴や内容を、幼児期・学童期の2パターンにわけて解説します。
幼児期:3歳~6歳ごろ
子どもは2歳半頃から嘘をつくようになります。この頃につく嘘は、ほとんどが空想や願望。例えば、「今日の給食はなんだった?」と聞くと「アイスクリームだった!」なんて言ったり。これは、大好きなアイスクリームをたくさん食べたい、という気持ちから話しているだけで、現実と空想の区別がつきにくい幼児期にありがちな、かわいらしい嘘です。ただ、本人にとっては嘘をついているという意識はないため、まわりから嘘と指摘されるとムキになって否定したり、悲しがったりします。成長して現実と空想の境界がはっきりしてくれば、自然とつかなくなります。
一方、3歳くらいになると、自分の言ったことが事実と異なっていることを理解しながら、意図的に嘘をつくようになります。例えば、戸棚に置いてあるお菓子を「これは明日の分のおやつだから、食べないでね」と言われたにもかかわらず、我慢できずに食べてしまった場合、子どもは怒られるのをなんとか回避しようと「食べてないよ」と嘘をつきます。ただ、この嘘は非常に単純で、かつ、つじつまを合わせることができないので、「お菓子おいしかった?」と尋ねられると、つい「うん」と答えてしまったりします。「叱られたくない」という心理が働き、親に一方的に怒られるだけではなく、どうすれば自己防衛できるかを考えられるようになったことは、成長の証とも言えます。
学童期:小学校低学年〜中学年
小学生になってからつく嘘は、意識的なことがほとんどです。例えば、テストで悪い点数を取ってしまったとき、親に見つかる前に部屋のどこかに隠し、「テストを見せて」と言われても「今週テストはやってないよ」と答えるなどです。その場でとっさにつく幼児の嘘とは異なり、「テストを前もって隠しておく」という工夫を取り入れるようになるため、嘘が発覚するまでに時間がかかるようになります。このように「怒られたくない」といった保身のためだけでなく、嘘をつく理由も複雑になり、 その内容も巧妙になってきます。
子どもが嘘をつくのはどんなとき?
学童期に関しては、まず、大きく2つの状況のどちらかに子どもが置かれているのではないかと考えてみます。1つは、今自分に起こっていることが理解できずに上手く説明できないとき。たとえば、学校でちょっとした仲間はずれやいじめられたりしたときなど、あるいは先生に理由が分らずに叱られたり誤解されたりしたとき。小学校の低学年程度だとまだ抽象的な思考ができず、事実は話せてもそれを説明するのは難しいのです。上手く説明できない自分を知っているので、つい嘘をついて逃れようとします。または、親に心配かけたくないと思ったり、プライドがあって嘘をつくこともあります。
もう1つは、見捨てられ感を抱えているときです。例えば、弟や妹の方に手がかかり、つい我慢をさせてしまっているとき。嘘は「私のこと見て」、「僕のことわかって」というサインだったりします。このような場合は、お話タイムを作ったり、何をするにもまず先にお兄ちゃんやお姉ちゃんを優先することにより、「自分は忘れられていないんだ」と確認できるようにしてあげるのが先決です。
参考:大阪市「親力アップサイト」【第9号】「子どもの嘘~どう対応する?」
子どもが嘘をついたとき、まずすべき接し方
「自分の育て方が間違っていたのかな……」と悩んでしまうかもしれませんが、親が冷静になって対処することが大切。嘘をつくことは成長の一部と考えて、“子どもが抱える問題や悩みを解決するきっかけ”と思えば、受け止め方も変わってくるはず。子どもが嘘をついたとき、まずすべきことをまとめました。
①子どもの話をよく聞く
まずは落ち着いて、「なぜ嘘をついたのか」その理由を聞いてみる。宿題をやっていないのに「終わった」と嘘をついたのは、ゲームがやりたかったのか、そもそも勉強についていけていないのか、何かほかに悩みがあるのか……。その理由によって、今後どのように対処すべきかが変わってきます。
幼児期の嘘には、「テストで100点を取った」「新しいゲームソフトを買ってもらった」など、こうだったらいいのにという子どもの願望が見え隠れすることがあります。この程度の嘘は、それほど気にしなくていいことが多いそう。
嘘の内容によっては、いじめやトラブルに巻き込まれているのかもしれません。ただし、親が思い込みでその理由を決めつけないように注意が必要です。
②どんな内容でも、正直に話したことを褒める
子どもが正直に話してくれたら、「よく話してくれたね」とまず褒めてあげること。寄り添い、真摯に耳を傾けることで、子どもは「親は自分の味方」と思ってくれるはず。そして最も大切なのは、嘘で隠されていた子どもの姿を認めてあげること。「勉強がんばっていたのに残念だったね、次はもうひとつマルが増やせるようにまたがんばろ!」というように、子どもが納得できなかった結果に対しての過程を褒めたり、クリアしやすい目標を設定してあげたりするのも◎。ありのままの自分が認められたという体験は、高い自己肯定感の獲得にも繋がり、傷ついた心のケアにもなりえます。
子どもが嘘をついたとき、とってはいけない接し方
効果的な接し方の一方で、NGな接し方もあります。対処を間違えると事態がこじれて、子どもはさらに嘘を重ねるといった結果になりかねないので注意が必要です。
①頭ごなしに叱る
話も聞かず一方的に叱りつけてしまうと、子どもの自尊心を傷つけ、怒られる恐怖から逃れるためさらに嘘を重ねることにもなりかねません。「嘘つき!」などと、おとしめる言い方もNGです。
②話を聞かずに謝らせる
なぜ嘘をついたのか、その理由を聞かないまま、謝らせることは逆効果。嘘をついても「謝ればすむ」という、間違った解釈をしてしまうかもしれません。
③嘘をついた理由をしつこく問いただす
嘘をついた理由を聞くのは大切ですが、聞き方には注意を払うべき。厳しく問いただすと委縮して本当のことが話せなくなり、結局は根本的解決にはいたらないことが往々にしてあります。親の気持ちを話しつつ、やさしく寄り添うことを心がけるのがベスト。
子どもが嘘をついたとき、効果的なアフターケア
子どもの気持ちに余裕があるようであれば、折をみて少し踏み込んで嘘について話してみましょう。
①嘘をついてどんな気持ちになったか聞いてみる
本当のことを話すことができて、自分自身の気持ちが認められた今、嘘をついていたときと比べてどのように気持ちが変化したかを聞いてみる。「スッキリした」、「ラクになった」などの答えが聞けたなら、正直であるほうが嘘をつくよりも気持ちがいいことを学べたことになります。
②親自身がついた嘘について話してみる
嘘をついたことがない人はいないと思います。親自身がついたことのある嘘や経験を子どもに話し、お互いに正直でいたいと思っていることを伝える。支え合うことができる関係性の構築につながります。
③どのようなときに嘘をつきやすいか話し合ってみる
嘘をつきやすい状況や、嘘をつきそうになったときにどうすればいいのか、親子で意見を出し合うのも◎。例えば、失敗してしまったときなどは嘘をつきやすいけれど、嘘をついてしまうことで、逆に問題解決までに時間がかかってしまい、その間苦しい気持ちを味わうことになることなど考えてみましょう。
④友だちがついた嘘について話してみる
子どもが友だちに嘘をつかれた経験がある場合、どうしてそのようなことを言われたのか、一緒に考えてみる。子どもが友だちの気持ちを理解できるよう手助けすることで、友だちにやさしくできるようになり、心の強化にもつながります。
親が自身の行動を見直すことも大事
子どもの嘘の背景には、親の接し方に問題がある場合も。子どもだけが原因と思いこまず、自分自身のことを振り返り、普段から厳しすぎないかなど考察してみる。また、しつけの中で親もつい嘘をついてしまうことはよくあります。例えば、片付けをしない子どもに、「片付けないならおもちゃ捨てちゃうよ!」と言ったりするように、しつけの一環でも嘘を重ねていると、そのうち子どもだって気づきます。なるべく嘘をつかないしつけを心がけ、もし子どもに嘘を指摘されたら素直に謝りたいですね。
まとめ
娘の場合はどうやら、「それで? それで?」と聞く母を喜ばせるために、ストーリーを着色していってしまったようです(汗)。手がかかる弟がいるので、寂しかったせいもあるかもしれません。ただ、今回の件で、嘘をつくことも大切な成長のプロセスのひとつであることを実感しました。
まずは何かあったのだな……と考えて、少しずつ話を聞き、耳を傾けることが大切ですね。雑談のなかにヒントが隠されていることもあるようなので、普段の会話を増やすことから始めようと思います。
文/Ai Kano