公開日:2022/12/07

子どもの脳と心を育てる【旅育】とは? 9歳までが効果的なそのメリットと実践方法

子どもの脳と心を育てる【旅育】とは? 9歳までが効果的なそのメリットと実践方法

昔から「かわいい子には旅をさせよ」と言いますが、近年、「旅育(たびいく)」という言葉が注目を集めているのを知っていますか?

 

「旅」という特別な体験は、子どもたちの好奇心を目覚めさせ、経験から学ぶ楽しさを育みます。普段の暮らしとは違った視点を養うことができ、子どもたちはもちろん、そばで見守る大人も親として一緒に成長していくことができます。

 

この記事では、旅育によって得られる効果や、旅育を意識した旅行計画のポイントなどをご紹介。新型コロナウイルスの感染状況を見つつ、この冬休みは子どもの成長につながるような旅に出かけてみませんか。

旅育とは?

「旅育(たびいく)」とは、旅先で得られる経験を通じて多くのことを学び、子どもの心や人間性の成長を促すこと。とくに、言葉を理解し会話をするようになる3歳頃から、脳の成長が著しい9歳頃までにかけての幼少期は、最も旅育に適しているとされています。

 

観光マーケティングを専門とする森下晶美教授(東洋大学・国際観光学部)は、「旅育」を「旅は人間性の成長を促すとする考え方で、旅によって得られる知識や興味・価値観の広がり、共感力を人の成長に役立てようとするもの」だと定義しています。そして、「旅育」には以下の3要素があり、効果的な「旅育」にするためには、これら3つの要素を全て満たす必要があると謳っています。

 

  1. 旅の体験(異文化・非日常体験、旅先での交流など)
  2. 人との時間共有(家族・友人との共通体験、想い出づくり、日常と比較した共有時間の長さなど)
  3. 旅を素材とした教育(職業教育、郷土教育、地理・歴史教育、国際化教育など)

(引用:日本国際観光学会|“旅育”の現状と定義を考える)

旅育のメリット

筆者もつい先日、全国旅行支援を利用して、3歳の息子と6歳の娘と旅行に出かけました。
単純に楽しい思い出が増えること以外に、「旅育」を意識することで、多くのメリットがあると実感。そこで「旅育」によって得られる効果を具体的に紹介します。

世界観が広がる

生活範囲が限られている子どもは、身近な世界の常識だけが正しいと思い込んでしまいがちですが、場所が変われば常識や文化も変わるもの。コロナ禍もあり、どうしても行動範囲や人間関係が限られてしまう日常から飛び出して、旅先でさまざまな価値観に触れることで、世界観が大きく広がります。

コミュニケーション力が高まる

飛行機や電車、バスなど公共交通機関を使う旅の場合は、社会のルールに従って行動しなくてはなりません。機内・車内での過ごし方などの社会性も、旅を通して育むことができます。

また、旅先では普段接する機会があまりない、いろんな人と関わることができます。必ずしも子ども本人が関わらずとも、旅先で出会う人と会話を交わす親の様子を見ることで、子ども自身のコミュニケーション能力の発達に、自然とつながります。

好奇心、学習意欲の向上

もともと子どもは好奇心の塊。新鮮なことだらけな旅先では、知りたいという気持ちが高まり、興味から探究心につながります。自分の目で見て自分の手で触れる直接的な体験は、脳の発達や発育に、大きな影響があるとされています。

親子の絆が深まる

普段は仕事や家事、育児に忙しく、子どもとコミュニケーションをとる時間がなかなかとれないという人も少なくないでしょう。旅を通して得る新鮮な体験の共有により、コミュニケーションをとる機会が増え、親子の絆も自然と深まります。​​​​

旅育に効果的な6つのメソッド

「旅育」のカギは、「どこに行くか」よりも「何をするか」。いつもの家族旅行を、学びの機会をもたらす「旅育」にアレンジする、6つのポイントを挙げます。「旅育」は、旅行中だけでなく準備の段階から始まります。ぜひ子どもと一緒に旅のプランを話し合うところから始めてみてください。

旅の計画は子どもと立てる

旅の計画段階から子どもを積極的に参加させる。とはいえ、予算や日にちの制約があると思うので、あらかじめ親が複数の案を用意しておき、子どもに選んでもらうとスムーズ。自分の希望を受け入れてもらったという経験は、自己肯定感につながり、旅へ向ける関心が高まります。

地図などで行き先を確認する

旅は子どもたちの地理的な感覚を養うのに最適。旅先の情報はもちろん、自宅からのアクセス方法や道のりなどを一緒に確認してみる。

地図を見ながら調べることで、毎日のニュースや天気予報で流れる地域名に敏感に反応するようになったり、日本国内でも地域によって気温や気候に差があることに気付けたりします。現地では景色や植物の様子、空の変化など、自分を取り巻く環境にも目を向けるように促すことをおすすめします。

役割や目標を決める

地図の管理や、電車などの時刻表チェック、入場券の購入といった作業を子どもに任せてみる。あえて子どもにお願いすることで責任感や積極性を培います。また目標については、「公共の場所では小さな声で話す」など些細なことでもOK。勇気を出してトライできたら、しっかり褒めてあげましょう。子どもの大きな自信につながります。

本物に触れる、体験をする

旅先では、自然・芸術・歴史など、子どもがさまざまな「本物」に触れる機会をつくることを意識。文化財を見学したり、ホテルのアクティビティに参加してみたり。ガイドブックやインターネットではわからなかった大きさや空気感、その迫力は、五感に働きかけ、創造力や感受性をダイレクトに刺激します。

ポイントとしては、その場で子どもに「どんな風に感じたか」を聞くようにすると、感覚がより鮮明に心に刻まれます。

また、貴重な文化財などを見学するときには、その場にふさわしい態度を大人が示すことで、これからも大切にしていかなければならないものに接する態度が養われます。

身の回りのことを自分でする

普段は、つい時間がないからと親が着替えなどを用意してしまったり、先回りして手助けをしてしまうところを、旅先では子どもに身のまわりのことを任せてみる。「荷物が整っていないと、自分が使いづらい」など、本人が実感することが大切です。

思い出を形に残す

旅行から帰ってきたら、写真や集めてきたパンフレットなどを使って思い出のコラージュをつくる。思い出す機会を設けることで、旅育の効果が高まります。旅の様子を思い出して絵を描いたり、感想を添えたり、子どもとの視点の違いに気付かされ、大人もきっと面白いはず。旅先から自宅に絵葉書を出すことも学びとなり、良い思い出になります。

まとめ

旅にまつわる多くの経験を通じて子どもの成長を促す「旅育」は、子どもの世界観を広げ、心を育みます。

旅先で初めてトライしたことは、成功、失敗にかかわらず、すべての経験が糧となり、同じ時間、体験を家族で共有した思い出は、きっと子どもの心を豊かにしてくれるはず。

コロナ禍によって狭くなってしまった子どもの視野、世界を広げるためにも、タイミングを見て「旅育」にチャレンジしてみませんか?

文/Ai Kano

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