せっかく食べるなら知っておきたい、年越しに「そば」を食べるワケ。年越し「うどん」もアリ!?

公開日:2023/12/29

せっかく食べるなら知っておきたい、年越しに「そば」を食べるワケ。年越し「うどん」もアリ!?

すっかり年の瀬ですが、大晦日の食といえば「年越しそば」ですよね。一年を締めくくるには欠かせない存在ですが、そもそも、なぜ大晦日にそばを食べる風習ができたのかご存知ですか? はたまた、同じ麺類の「年越しうどん」もあり? など、「年越しそば」にまつわるトリビアを深掘りしてご紹介します。

「年越しそば」の由来と歴史

大晦日に食べるそばは、いわば年越しの風物詩のようなイメージですが、この風習はいつ頃から始まったのでしょうか。古くは1756年刊行の書物『眉斧日録(びふにちろく)』に、「闇をこねるか大年の蕎麦」という記述があります。また、1814年に刊行された『大坂繁花風土記』に年越しそばが登場します。このことから、すでに江戸時代には年越しそばがひとつの行事ごととして定着していたことがわかります。

 

江戸時代中期の商家では、主人が忙しい晦日(月末)に働いてくれた奉公人をねぎらい、そばを食べる習慣がありました。これを「晦日(みそか/つごもり)そば」、「三十日(みそか)そば」といいます。細くて長いそばは、家や財産が長く続くよう願う縁起物でした。

 

また、店や屋台でさっと食べられるファストフードであるそばは、忙しい月末にはうってつけでした。やがて、毎月末に「晦日蕎麦」を食べる習慣は廃れましたが、年末の大晦日だけは残り、「年越しそば」と呼ばれるようになりました。

年越しにそばを食べる意味って?

諸説ありますが、有力とされているものは次の5つです。おせち料理にも一品一品意味があるように、昔の人は一杯のそばを食べるのにも、願いを込めていたのですね。

1. 厄払い

そばはほかの麺類に比べて切れやすいことから、「一年の厄災や苦労を切り捨てて、翌年に持ち越さない」という願いを込めて年越しそばを食べる、というのがもっとも有名な説です。そこから悪いものと縁を切り、新年を気持ちよく迎えたいという意味が込められた「縁切りそば」という別名が付いたともいわれています。江戸時代はつなぎのない「十割そば」が主流だったため、現代の一般的なそばよりも切れやすく、「災いを断ち切る」という意味合いによりマッチしていました。

2. 長寿祈願

そばは細く長い麺であることから、延命や長寿を祈願して食べることが年越しそばを食べる意味ともいわれています。引っ越しの際に贈る「引っ越しそば」にも、この意味が込められています。また、江戸時代には脚気が流行しており、「そばを食べると脚気にならない」といわれたため、健康食としても好まれていました。

3. 健康祈願

そばの原料であるそばの実は、激しい雨風を受けてもその後の晴天ですぐに元気になることから、健康への縁起を担ぐものとして食べられるようになったといういわれがあります。

4. 金運上昇

昔、金細工職人は作業中に飛び散った金粉を集める際に、そば粉で作った団子を使っていたため、そばは金を集める縁起物とされ、そばを食べて金運上昇を願いました。また、金箔師が金箔を作る際に、金を延ばす台をそば粉で拭うとよく延びたことから、そばは“金を延ばす(蓄財する)”ために縁起のいい食べ物とされたとの説も。

5. 運気上昇

鎌倉時代、博多の商人・謝国明(しゃこくめい)が承天寺で、貧しさのために年の瀬をしのげない人々に「世直しそば」としてそばの餅を振舞ったところ、その「世直しそば」を食べた人は翌年から運が向いてきたそうです。そのことからそばを縁起物と考えるようになり、大晦日にそばを食べる風習が生まれたという説も伝わっています。

ちなみに、薬味のネギにも意味があります

  • 疲れをねぎらう意味の「労ぐ(ねぐ)」
  • 祈るという意味の「祈ぐ(ねぐ)」
  • 神職の「禰宜(ねぎ)」

これらの言葉にかけて、一年間の頑張りをねぎらい、新年の幸せを祈ります。

年越しそばを食べるタイミングはいつ?

年越しそばは、12月31日中であればいつ食べてもOKです。「午前中はダメ」、「何時に食べる」などのしきたりはなく、タイミングによる縁起の良し悪しもありません。一般的には、新年の準備が一段落して落ち着ける夕食時に、家族揃っていただく場合が多いようです。ただし、年をまたがないのがベター。年越しそばには「旧年の災厄を断ち切る」、「新年の運気をあげる」などの意味があるため、新年になる前に食べ終えたほうが良いとされています。除夜の鐘が鳴り終わる前に、残さず食べて気持ちよく新年を迎えましょう。

年越し「うどん」もあり?

年越しに食べるのは「そば」が一般的ですが、地域や家庭によっては「うどん」を食べる人も少なくないのだとか。うどんはその名の通り「運を呼ぶ」、また「太く長い」ことから、古来より長寿を祈る縁起物として食べられてきました。

 

ちなみに、うどんの場合は年明けにも食べる習慣もあります。さぬきうどんで有名な香川県が発祥の「年明けうどん」は、幸せな一年であるようにという願いを込めて、白いうどんに赤い食材を使ったトッピングを添えた紅白に彩られたうどんを1月15日までに食べるそう。梅干しやにんじんやイクラなど、具材は自由。紅いあんこ餅が入ったうどんなどもあるそうです。

 

出典: 年明けうどん 香川県 | うちの郷土料理:農林水産省

バリエーション豊かな各地の年越しそば

年越しそばの具や食べ方に決まりはありません。冷たいそばでも、温かいそばでも、天ぷらなどの具を添えても構わないのです。地方によっては、その土地ならではの年越しそばが今も食べられています。

にしんそば(北海道・京都)

かけそばにニシンの甘露煮を乗せたもので、京都ではその歴史は古く、明治時代から名物として食べられていたそうです。ニシンの名産地である北海道でも、このにしんそばは広く一般的に食べられています。京都が淡い色の薄口ダシなのに対し、北海道は濃口醤油を使った関東風が主流です。

わんこそば(岩手)

お椀に一口大のそばを次々入れて食べる「わんこそば」。お殿様をもてなす料理だったという説もありますが、「年越しそば」としても食べられています。かつては、年齢の数と同じ杯数のわんこそばを食べる「年越しわんこ」の習慣もあったとか。

へぎそば(新潟)

布海苔をつなぎに使い、“へぎ”と呼ばれる木の器に盛りつけたそば。布海苔が使われていることで、普通のそばとは違うツルツルとした喉越しを楽しめます。

越前おろしそば(福井)

そば粉に蕎麦殻まで挽き込んでいるため一般的なそばよりも麺が固く、辛味大根の大根おろしを乗せるのが特徴。大根おろしは、そばつゆも醤油もない時代に大根汁でそばを食べていたことに由来しているそうです。

くるみそば(長野)

そば自体にくるみを使ったものではなく、潰したくるみを味噌や砂糖とともにそばつゆで溶いた「くるみだれ」で食べるそばです。

釜揚げそば(島根)

島根のそばといえば、3段重ねの「割子(わりご)そば」ですが、地元の人の年越しそばの食べ方としては「釜揚げ」が多いのだそう。釜揚げそばは、釜や鍋でゆでたそばを茹で汁ごとお椀によそい、そこにカツオ節、ネギ、特産の十六島(うっぷるい)ノリをのせ、独特の甘辛いつゆを回しがけして熱々をいただきます。

沖縄そば(沖縄)

独特の食文化が息づく沖縄県では、一般的にそばといえば沖縄そばを指します。年越しにも沖縄そばを食べる家庭がほとんどだそう。スープは豚骨とカツオの合わせだしを主体として、豚の三枚肉や紅生姜がのっているのが基本です。ちなみにそば粉は入っていません。

まとめ

年越しそばは、元気で健やかに新年を迎えたいという、庶民のささやかな願いが込められた縁起物。江戸時代から続く風習とは、やはり日本は歴史のある国ですね(しみじみ)。

そばは炭水化物ですが、ほかの麺類などに比べて血糖値が上がりにくい低GI食品​​。万年ダイエッターとしても、夜遅くに食べても安心かな(笑)。今年も一年の締めくくりとして、除夜の鐘が鳴り終わるまでには年越しそばをいただいて、これから迎える新年の幸せを願いたいと思います。

文/Ai Kano

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