意外と身近にいるのかも!【野生動物・キツネ】の不思議な生態&人との関わり

公開日:2024/09/17

意外と身近にいるのかも!【野生動物・キツネ】の不思議な生態&人との関わり

ピンととがった耳とフサフサのしっぽのキツネは、昔話や絵本にもよく登場するおなじみの動物です。日本にいるキツネといえば、北海道のキタキツネを思い浮かべますが、実はキタキツネ以外にもホンドギツネという種類のキツネがいて、野生のキツネは全国的に生息しています。今回は、キツネがどのように暮らしているのか、意外と知らない生態や人間との関わりなどを掘り下げて紹介します。

キツネってどんな動物?

キツネは食肉目イヌ科の仲間。世界の生息状況を見ると、とても広範囲に分布しています。なかでもアカギツネは世界中の草原や森林、山地に生息し、ヨーロッパやアメリカでも身近なキツネです。寒冷地にはアカギツネが黒色化したギンギツネが住んでいます。また北極にはホッキョクギツネ、砂漠にはフェネックなど、それぞれの環境に適応したキツネの仲間がいます。

 

イヌ科の中では小柄な方で、すらりとした体に長いしっぽを持っています。しっぽはバランスをとることや、寝るときに体に巻き付けて毛布のように使うことで役立っており、仲間とのコミュニ―ケーションに使うこともあります。鼻先の尖った顔やつり目も特徴です。耳が大きいイメージもありますが、これは種類によって異なります。

日本にいるのはどんなキツネ?

日本にはアカギツネの仲間であるキタキツネとホンドギツネがいます。北海道に住んでいるキツネがキタキツネ、本州、四国、九州に住んでいるキツネがホンドギツネと呼ばれています。

 

北海道ではキタキツネは身近な野生動物で、民家の庭や畑、観光地に姿を現すこともあります。一方、ホンドギツネは都市部で暮らすことはないため、姿を見かける機会は少ないかもしれません。しかし生息場所は海岸から山までと幅広く、農地や原野、森林などでも暮らしており、春の繁殖期になると川の土手や山の斜面などに長い巣穴を掘り、子育てをします。

東京の多摩川にキツネが!?『ザ!鉄腕!DASH!!』で撮影に成功した「ヨーコちゃん」とは?

環境省の調査によると、ホンドギツネは平成の初めごろには都市部から絶滅してしまったとされていました。しかしつい先日、日本テレビの番組『ザ!鉄腕!DASH!!』で、東京と神奈川という大都会の境を流れる多摩川下流の河川敷でホンドギツネ発見の様子が放送されました。

 

発見されたキツネは、日本や中国に伝わるキツネの妖怪「妖狐(ようこ)」にちなんで、ヨーコちゃんと名付けられ、多摩川河川敷での生活の様子が記録されました。しかも子育て中の家族の撮影にも成功しており、私事ですが筆者はこれを見て大興奮してしまいました。キツネって意外と近くに生息しているのかもしれませんね。

 

新宿DASH ~“ヨーコちゃん”完結編

キツネの不思議な生態

ミステリアスな雰囲気もあるキツネ。実際にその生態には不思議なところもあります。

イヌ科なのに群れを作らない

キツネはイヌ科の中では珍しく、群れを作りません。家族単位で小さな群れになることはありますが、基本的に単独行動で、仲間と一緒に遠吠えをすることもありません。

ネコと共通点が多い

分類上はイヌの仲間ですが、ネコとの共通点がたくさんあります。狩りの方法はイヌやオオカミのように仲間と協力して獲物を追うのではなく、ネコ科の仲間のように忍び寄って飛びかかるスタイルです。

 

また、イヌの瞳孔が丸いのに対して、キツネはネコと同じ縦長。薄暗いところでも目が利くようになっています。舌の表面がザラザラしていること、ヒゲで平衡感覚を保つ点もネコと共通しています。

地球の磁場を利用して狩りをするらしい

キツネは雪の下や高い草むらなど、見えない場所にいる獲物の位置を捉えて、一気に飛びかかり、狩りに成功することがあります。こんなことができるのは、地球の磁場を利用して獲物の位置を把握することができるからと考えられています。

 

磁場を利用して行動する動物は、渡りをする鳥のほか、イヌ、サメなども知られていますが、狩りに利用することが確認されているのはキツネだけです。昔話に出てくるずる賢いキツネのイメージは、こんなところから来ているのかもしれません。

キツネって何を食べるの? 油揚げが好きってホント?

キツネといえば油揚げが好物というイメージがありますが、これはあくまで「イメージ」というのが正解です。実際のキツネは肉食よりの雑食で、ネズミやウサギなどの小動物や鳥のほか、卵や果物、さらには虫やヘビ、カエルを食べることもあります。

 

しかし油揚げがのったうどんは“キツネうどん”といいますし、いなり寿司のことを“キツネずし”と呼ぶ地域もあります。なぜ「油揚げはキツネの好物」といわれるようになったのでしょうか?

 

それは、キツネが農作物の天敵のネズミを食べてくれるということで、古来より神の使いとしてあがめられてきたことに理由があります。当時、人々はキツネの好物であるネズミを揚げた「ネズミの油揚げ」を、キツネの巣穴にお供えしたと伝えられています。しかし、日本に仏教が伝来し、「どんな生き物であろうと殺生は良くない」と教えられたことで「ネズミをお供え物のために殺生するのは良くない」という思想が広まり、お豆腐を使った油揚げをお供えするようになったのだそう。こうして、現在の「油揚げはキツネの好物」というイメージが定着したようです。

お稲荷さんって、キツネの神様なの?

「お稲荷さん」として親しまれている稲荷神社には、たいていキツネの像などが鎮座しており、キツネの神様が祀られている神社といったイメージがあります。しかし実は、キツネ=稲荷神社の神様ではありません。ではあのキツネの正体は何なのでしょうか?

 

お稲荷さんは、稲作・農業の神様として信仰されている神社です。稲作の豊凶は、昔から日本人にとって生活に直結する大きな関心事だったので、その信仰は全国へ広まっていき、現在は全国に8万社程ある神社のうち、3万社以上が稲荷神社というデータもあります。

 

主に稲荷神社に祀られているのは「宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)」という、食べ物を意味する名前を持つ神様です。キツネはこの神様の眷属(けんぞく=神様の使者)なのです。

 

キツネは農事の始まる春先から収穫の終わる秋まで人里に姿を見せ、田の神が山へ帰られる頃に山へと戻っていく。神と同じ時期にキツネが行動することから、いつの間にかキツネが神の使いとされるようになったとされています。また、キツネは農作物の天敵だったネズミを食べてくれるということで、神の使いとしてあがめられるようになったそう。これが稲荷神社にキツネが鎮座するようになった由縁のようです。

 

参考:

まとめ

キツネは日本に生息する野生動物で、昔話によく登場したり、お稲荷さんで神様の使いになっていたりすることから、昔は人のそばで暮らしていたことが伺えます。とても臆病で頭の良い動物なので、人の前に姿を見せないだけで、実は今も近くに生息しているのかもしれませんね。もしキツネを見つけたとしても、むやみに近寄らず、遠くからそっと見守るようにしましょう。

文/Ai Kano

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