PTA（Parent-Teacher Association）は、保護者と教員の協力の下、子どもの良質な教育環境を維持するために設立された組織です。
子どもを学校に通わせる家庭は「当然加入するもの」と考えられてきましたが、近年はPTAに加入しない家庭も増えています。
この記事では、PTAの歴史や趣旨について詳しくまとめました。
加入のメリット・デメリットも考察しているので、「PTAって必要……？」と悩んでいる方はぜひチェックしてみてください。
PTAの歴史と趣旨
PTAは、会長、副会長、会計などの役員で構成される組織です。
役員は保護者から選出されますが、なぜこのような組織が設立されたのでしょうか。
PTAの歴史や趣旨を見ていきましょう。
PTAの歴史
日本のPTAの始まりは1946年です。
文部省内に「父母と先生の会委員会」が設置され、PTAの設立を奨励するための具体的な手引き書が作成されました。
日本におけるPTAの設立は、GHQ（連合国軍総司令部）の主導によるものです。
日本のPTAはアメリカのPTAをモデルとしており、1948年4月までには、全国約7割の小・中学校にPTAが設置されました。
PTAの設置によってGHQが目指したのは、日本の教育制度の民主化です。
当時の日本の教育は、軍国主義的な思想が色濃く残っていました。
保護者と教師が協働する開けた教育支援組織を設置することで、日本に民主主義的な価値観を根付かせようとしたといわれています。
PTAの趣旨と活動内容
PTAの目的は、保護者と教職員が協力し、子どもたちの健全な成長を図ることです。
活動内容は地域や学校によって異なりますが、以下のようなものがあります。
【教育課題の共有】
- 授業参観への参加
- 保護者懇談会などへの参加
- 保護者・教職員アンケートの実施
【教育課題の解決】
- 学校行事の人的支援
- 保護者が学校の授業をサポートする学校支援ボランティア
- 校外活動の付き添い
- 花壇や図書館の整備
- 通学路や地域の安全対策
【学びと交流】
- PTAセミナーの企画・開催
- 文化・スポーツサークル活動
- 子ども向けのイベントの開催
【地域との関係】
- 地域行事への参加
- 子どもの安全確保、見守り
- 防災面などでの連携
このほか広報誌を発行したり役員・委員など運営スタッフの選出をしたりするのも、PTA活動に含まれます。
PTA加入の必要性
PTAは、任意の社会教育関係団体です。
加入を義務付ける法律などは存在しておらず、「絶対に加入しなければならない」という法的な根拠はありません。
保護者がPTAの趣旨に賛同できない・絶対に無理という場合は、「加入しない」という選択肢があります。
ただしPTAは非常に古い組織であり、学校運営と深く関わっているのが実情です。
「保護者と教員が協力しあって子どもの成長を見守っていくこと」は現代でも非常に重要であり、PTAが存在するからこそ享受できるメリットもあります。
PTA加入の妥当性・必要性については、子どもへの影響なども勘案して判断することが重要です。
PTAに加入するメリット
PTAへの加入は任意ですが、PTAに加入するからこそのメリットがあります。
辞める・加入しないという選択をする前に、PTAに加入するメリットを見ていきましょう。
学校に意見を言いやすくなる
PTAは、保護者の意見を学校の運営や教育方針に反映させる役割があります。
保護者はPTAを通じて意見を述べることで、自分たちの声をスムーズに学校側に届けることが可能です。
保護者が個人で学校に意見を伝えようとしても、「個人の意見」では説得力がありません。
「PTA」という組織から意見を述べてもらうことで、学校に要望や意見を届けやすくなるのです。
子どもによりよい環境を提供できる
PTAの活動は、「登下校の見守り、旗振り」「窓ふき・大掃除手伝い」「イベントの支援」などとさまざまです。
保護者が積極的に学校活動に参加することで、子どもの安全を向上させたり快適な環境を維持したりしやすくなります。
PTAがなくなってしまうと、先生の負担が増えてしまうかもしれません。
先生の仕事である「子どもへの学習指導」がおろそかになる恐れがあり、教育の質の低下が懸念されます。
保護者と交流できる
PTA活動を通して、保護者同士が親しくなるケースは少なくありません。
同じ学校に知り合いができることで、情報の共有や交換がスムーズになります。
保護者同士のコミュニケーションが密になれば、学校コミュニティの連帯感が高まります。
保護者が子どもたちの教育に積極的に関与しやすくなり、子どもにとってより良い教育環境を構築することが可能です。
PTAに加入するデメリット
PTAに加入するメリットがある一方で、デメリットも存在します。
PTAを辞めたい人が感じているデメリットを見ていきましょう。
保護者の負担が大きすぎる
PTAに参加すると、会議やイベントに参加しなければなりません。
共働きが増えている現代、時間をやりくりするのが難しいと感じている保護者が増えています。
特に多くの人が避けたいと感じているのは、役員になってしまうことです。
PTA役員になると、会議をしたりイベントを主催したりと大きな負担を強いられます。
共働き家庭では有給休暇がPTAの仕事で消費されるケースも多く、「なぜここまでしなければならないのか」と感じる保護者も多いようです。
アップデートされていない活動がストレスになる
PTAが設立された戦後と現代とでは、社会情勢が大きく変化しています。
旧態依然の運営形態を維持しているPTAも多く、「ムダな活動に時間を奪われている」と感じるシーンは少なくありません。
- 役員に当たると、簡単に辞退できない
- 定期的に役員が顔を合わせて会議しなければならない
- 前例にない改革は認められにくい
PTA活動が不公平だったり非効率的だったりすると、保護者の参加意欲は低下します。
PTAに加入すべきか？判断のポイント
NHKの調査によると、2024年のPTA加入者数は5年前と比較して、約91万人減少していることが分かりました。
都道府県単位でPTAを解散する自治体も増えており、PTAの解体は着実に進んでいるのが実情です。
「PTAを辞めるべきか……」と悩んだ場合は、どのように辞める・辞めないを考えればよいのでしょうか？
PTAへの加入・継続を迷ったとき、チェックしたいポイントをご紹介します。
PTAの活動内容を確認する
PTAの活動内容や保護者への負担の大きさは、地域によって異なります。
まずは子どもの学校のPTAについて、どのような活動をしているのか確認しましょう。
近年は、保護者への負担を減らすための工夫をしたり、無駄な活動や行事を無くしたりするPTAが増えています。
「PTA＝大変」というイメージだけで判断せず、実際の状況を知ることは重要です。
自分の状況を考えてみる
PTA役員に選ばれてしまうと、一定時間拘束されることとなります。
PTA活動に割ける時間を確保できるのかどうか、じっくり考えてみましょう。
近年はフルタイムの共働き家庭が増えており、育児と仕事で手一杯……というケースは珍しくありません。
また人によっては、家族の介護やサポートで手が離せないこともあります。
時間がたっても解決しない仕事や家庭の事情、健康上の問題・経済的な問題を抱えているご家庭は、無理をする必要はありません。
辞めた後の状況を考える
PTAを辞めることで、「子どもが登校班に入れなくなった」「卒業記念品をもらえなくなった」などのケースがあります。
特にPTA加入率の高い地域では、PTAを辞めることによって子どもや保護者が不利益を被ることがあるかもしれません。
「PTAを続けるよりも辞めるデメリットが大きい」という場合は、継続の方向で検討してもよいでしょう。
とはいえPTAは任意団体であり、加入する・しないは自由です。子どもへの影響が心配でPTAを辞められない場合は、代替手段を提案する方法があります。
例えば「旗振り当番や地域パトロールには参加する」「記念品代は別途払う」などをすれば、PTAに加入しなくても保護者として最低限の義務を果たせるはずです。
まとめ
PTAは、保護者と教員が協働して子どもによりよい環境を提供するために設立された組織です。不要論も多く聞かれますが、子どもにとってはプラスになる活動もさまざまあります。「辞める」「入らない」という選択をする前に、PTAのスリム化・デジタル化を提案してみるのも1つの方法です。
少子化や人間関係の希薄化が進む現代、学校コミュニティの強化はより重要になります。PTAに参加しない場合でも、他の保護者や学校とつながったり、サポートしたりできる方法を探しましょう。
文／カワサキカオリ
少子化や人間関係の希薄化が進む現代、学校コミュニティの強化はより重要になります。PTAに参加しない場合でも、他の保護者や学校とつながったり、サポートしたりできる方法を探しましょう。
文／カワサキカオリ
