暑い夏は、栄養のあるものを食べて元気を出したい! そんなとき「うなぎ」が食べたくなる人も多いのでは? うなぎといえば、土用の丑の日です。2022年の土用の丑の日はいつ? どうして年によって日にちが変わるの? 今回は、土用の丑の日についてや、土用の丑の日にうなぎを食べるようになった由来、自宅でうなぎの蒲焼きをおいしく食べるコツなどを紹介します。
土用の丑の日ってどういう意味?
そもそも「土用の丑の日」って何なのでしょうか。おいしいうなぎのお話の前に、ちょっとだけ豆知識のコーナーです。普段あまり使わない用語がいろいろと出てきますが、わかりやすいように説明していきたいと思います!
土用ってなあに?
まずは「土用」についてです。暦を表す用語で「節分」や「お彼岸」という言葉は聞いたことがあると思いますが、「土用」もこれらと同じで暦を表す用語のひとつです。
「土用」は、ある特定の日ではなく、季節の変わり目である立夏、立秋、立冬、立春、それぞれの直前約18日間のことを指し、それぞれ「春の土用」「夏の土用」「秋の土用」「冬の土用」と呼ばれることもあります。
立夏、立秋、立冬、立春はそれぞれ年によって変わるため、土用の期間も年によって異なります。今年、2022年の立秋は8月7日なので、この直前の18日間、つまり7月20日~8月6日が2022年の夏の土用ということになります。
1年に4回ある土用ですが、近年では「土用」といえば立秋前の土用、つまり「夏の土用」を指すことがほとんどです。
丑の日ってなに?
古くから年月日や時間、方角などを表すために「干支(かんし、えと)」と呼ばれるものが使われてきました。これは、上の図にある十干と十二支を「甲子」「乙丑」「丙寅」のように組み合わせたもので、組み合わせは、10と12の最小公倍数の60個になります。
★60個の組み合わせを全部知りたい方はこちら!
干支といえば「子年生まれ」とか「今年は丑年」などと使われているのでおなじみですよね。しかし実は、同じ子年でも正確には甲子、丙子、戊子、庚子、壬子の5種類の子年があり、これらをまとめて「子年」と呼んでいるのです。
同じように、干支は日にも割り当てられており、「丑」が入っている乙丑、丁丑、己丑、辛丑、癸丑の日を「丑の日」と呼びます。これが土用の丑の日の「丑の日」の部分の意味になります。
日の干支は、昔ながらの日めくりカレンダーなどをよく見ると書いてあることが多いので、興味のある方は見てみてくださいね。
ちなみに、干支は60番目が終わると一番初めに戻ります。この、干支が一巡することを、暦が還(かえ)るという意味で「還暦」といいます。満60歳をお祝いする「還暦のお祝い」はここからきています。
土用の丑の日って?
さて「土用の丑の日」についてですが、もうおわかりですよね。
「土用の丑の日」は、“土用の期間中にある、干支の丑がつく日” という意味なのです。
今年は立秋が8月7日なので、夏の土用は7月20日~8月6日です。そして、この間にある丑が付く日は、7月23日(丁丑)と8月4日(己丑)の2日。このことから、2022年の土用の丑の日は、7/23と8/4ということになるのです。ちなみに立秋も干支も年によって変わるので、土用の丑の日が1日だけの年もありますよ。
さて、土用の説明のところでも触れたように、土用は1年に4回あります。つまり、春、秋、冬にもそれぞれ「土用の丑の日」はあるということです。しかし、なぜ夏の土用だけがピックアップされるのでしょう。これについては次の章で説明したいと思います。
土用の丑の日にうなぎを食べるワケ
古来より、季節の変わり目である土用には、栄養のある旬のものを食べ、養生しましょうという習慣がありました。何を食べたらよいかについては下記のように「春の土用だったら、戌の日に『い』がつく物や白い物を食べると縁起が良い」とされているのです。
春:土用の戌の日 → 「い」がつく食べ物・白い食べ物
夏:土用の丑の日 → 「う」がつく食べ物・黒い食べ物
秋:土用の辰の日 → 「た」がつく食べ物・青い食べ物
冬:土用の未の日 → 「ひ」がつく食べ物・赤い食べ物
しかしこの土用の食習慣、現在でも見聞きするのは、かろうじて夏の土用のみ。しかも「う」のつく食べ物というよりは「うなぎ」限定のお話になってしまっています。どうして「夏の土用」だけが現在まで残っていて、しかも、うなぎだけなのでしょうか。
これについては、江戸時代の学者、平賀源内がうなぎ屋の店先に「本日、土用の丑の日」と掲げたところ、これがとても評判になり大繁盛、他のうなぎ屋も次々と真似するようになり、ついには「土用の丑の日=うなぎ」となってしまったという説があります。
この話はあくまで一説にすぎないらしいのですが、暑い夏を栄養価の高いうなぎで乗り切ろうという考えが、人々の気持ちにうまくマッチしているからこそ、現在までこの習慣が残っているのでしょう。
土用に行う風習はうなぎ以外にもある!?
夏の土用は約18日間あり、その間に行われることはうなぎを食べることだけではありません。
土用干し
夏の土用の年中行事です。ちょうど梅雨明けの時期にあたる夏の土用、晴れた日には湿気を取り、カビや虫を防ぐために衣類や本を干す「虫干し」が行われます。
また、この時期、梅雨前に収穫して塩漬けにした梅干しを3日ほど天日干しする作業が行われます。この土用干しをすることで長期保存が効くようになるため、欠かせない作業なのだとか。
現代ではエアコンなどもあり、いつでも除湿ができる便利な世の中です。しかし、年に一度、クローゼットや引き出しを開けて風を通す作業をしてみてもよいのではないでしょうか。防虫剤を換える機会にもよさそうですね。
土用三郎
土用三郎は、土用入りから3日目の天気でその年の豊作を占うというものです。晴れていればいるほど豊作が期待できるため、梅雨明けのこの時期ならではの占いともいえるでしょう。今年は土用三郎を占ってみるのも面白いですね。
土用の期間にはやってはいけないことがある!?
土用の期間にはやらない方がよいとされていることがあります。
- 土動かし
- 転職や転居、結婚、開業
- 旅行
土用の期間には、土の神様である土公神(どくしん・どこうしん)が土の中にいらっしゃるとされ、土を動かす作業はタブーとされているのだそう。草むしりや基礎工事、土いじりなどが該当します。なお、季節の変化から体調を崩しやすい時期でもあるため、転職や転居などの新しいことは避けられてきたようです。旅行も同様の理由とみられています。
年に4回、それぞれ18日間も土用期間があるため、最近では気にしないことも増えてきたようですよ。
実はうなぎの旬は冬だった!?
本来、うなぎの旬は身に脂がのっている冬になります。うなぎは冬眠する習性があり、水温が下がる季節になると体に脂を蓄えるため、この時期のうなぎがおいしいといわれています。そのため、天然うなぎは冬に食べるのが最もおいしいでしょう。
しかし、天然うなぎの漁獲量は低下の一途を辿っており、一般的に流通しているうなぎの多くは養殖です。養殖では水温の調整ができることから、土用の丑の日に合わせて育てられています。養殖のうなぎは旬に関係なく、一年中おいしく食べられますよ。
おうちでうなぎの蒲焼きをおいしく食べるコツ
やはりうなぎは専門店でプロの味を堪能したいところですが、小さい子どもがいるとなかなか難しいことも多いですよね。そうなると、スーパーなどでうなぎの蒲焼きを買い、自宅で楽しむことになるわけですが、せっかくうなぎを食べるなら、なるべくおいしく食べたい! そこで最後に、自宅でうなぎの蒲焼きを食べるとき、おいしく仕上げられるコツを紹介したいと思います。
蒲焼きを水で洗う
スーパーなどで買うパック詰めのうなぎの蒲焼きは、水でタレを洗い流してから温めましょう。パックに入っている蒲焼きにかかっているタレは、ツヤツヤとした見た目を重視しており、味はおいしくないことが多いのだそう。そのため、一回洗い流して温めたあとに付属のタレをかけるのがおすすめです。
そんなことして本当に大丈夫なの? と思うかもしれませんが、パックで売られている蒲焼きには、食べ方の説明書きに「水で洗い流す」工程が記載されているものもあるようです。簡単にできるひと手間なので、今すぐ実践できそうなのもうれしいですね。
お酒をかけてからフライパンで蒸し焼き
うなぎの蒲焼きは、関東では白焼きをいったん蒸してから焼く方法が一般的です。蒸すことで、身がふわっとするそうです。そこで市販の蒲焼きを再加熱する際にも、蒸して温める人も少なくありません。ふわふわの身を楽しみたい人には、蒸す方法がおすすめです。
適度な大きさに切った蒲焼きに水をかけ、キッチンペーパーで水気を取ります。蒲焼きをフライパンに並べ、全体にお酒をかけてから火にかけます。ふつふつしてきたらふたをして蒸しあげれば完成!
安いうなぎや、硬くなったうなぎもふわふわになるのだとか。試してみてくださいね。
油を塗ったアルミホイルに包み、グリルで焼く
皮目がパリッとしたうなぎが好みな方は、グリルやトースターを使うのがおすすめですよ。蒲焼きはあらかじめ水で洗い流し、キッチンペーパーで水気を拭き取っておきます。油を塗ったアルミホイルに蒲焼きを並べ、少量のお酒をかけてから包みます。
あとは、グリルやトースターで火を通していきましょう。最初は包んで蒸し焼きにしていきますが、途中で包んでいる口を開けると、身もカリっと仕上がります。
焼きあがったらタレをかけて完成です! 少々手間はかかりますが、自宅でもプロの味を再現できるため、ぜひ試してみてくださいね。
まとめ
うなぎは栄養価が高く、夏バテ予防によい食材としても有名です。せっかくなら自宅で食べるときもおいしく調理したいと思うことも多いでしょう。温め方や火の通し方ひとつで仕上がりが変わってきますよ。
ぜひ参考に、今年の土用丑の日はうなぎの蒲焼きを用意し、家族で楽しい食卓を囲んでくださいね。
文・丸山希